ホツマツタヱ原文

【注記】

  • 読みやすさを重視して漢字かなまじり文で記す(原文は表音文字「ヲシテ文字」)。
  • 格助詞「お、え」は「を、へ」、接続助詞「と、は」は「ど、ば」に変換している。
  • その他、一般的な歴史的仮名遣いにあたるものはそのまま記す。
  • 人名はカタカナで記す(表記のゆれは検索の効率を考えて一部修正・統一している)。
  • 地名やその他の語については、現行表記や資料における一般的な漢字表記に従う(地名についてはふりがなをカタカナ表記にしている)。
  • 漢字表記が定まっていないものについては、あえてカタカナで記す場合がある。
  • 濁音にゆれがあるものについては、写本の数が多いほうをとる(同数の場合は濁音をとる)。
  • その他、特定の語の漢字表記については「漢字表記について」を参照

 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19-1 19-2 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 
ミカサフミ ≫フトマニ

序 ホツマツタヱを述ぶ

天地の 拓けし時に 二神の ト矛に治む 民増して アマテル神の 御鏡を 足して三種の 御宝を 授く御孫の 臣民も 身安ければや 臣が祖 しいる諫めの 畏れ身に 隠れ住みゆく スヱツミを 今召さるれば その恵み 天に帰りの 詣で物 ホツマツタヱの 四十文を 編み奉り 君が代の 末のためしと ならんかと 畏れ身ながら つぼめ置く これ見ん人は シワカミの 心ホツマと なる時は 花咲く御代の 春や来ぬらん 磯の端の 真砂はよみて 尽くるとも ホツマの道は 幾代尽きせじ

三輪の臣 オオタタネコが 捧げんと 二百三十四年 慎みて押す

織りつけの 上の印と 花押を 添えて捧ぐる 言述べの歌

久方の 天が下知る 我が君の 代々に伝わる 冠は アマテル神の 作らせて 小男鹿さをしか八の 御耳に 聞こし召さるる 朝政 あまねく通り 天照らす 大御宝の 気も安く 安国宮と 称えます 八万年経て 肥内コヱウチ伊雑宮イサワノミヤに おわします 御子オシホミは 日高見の 多賀国府タガノコウにて 国治む 孫ホノアカリ 香具山の 飛鳥宮アスカノミヤに おわします 弟ニニキネは 新田成す 新治宮ニハリノミヤの 十八万に 新民増えて 名も高き 原見宮ハラミノミヤに 民をし ついにシワカミ ホツマ成る 六十万年の 代を知りて イカツチ分くる 伊豆の神

時に御神 宣ふは 今ニニキネの 先御霊 クニトコタチの 業御霊 現る稜威いつと 考えて ワケイカツチの 天君と 名づけ賜る 世の初め 今皇の 天君は みなニニキネの 稜威いつによる 御子孫曾孫の 末までも 天照らします 大御神 百七十万の 年を経て 元の日輪に 帰まして 青人草を 照らします この故君も 臣民も 気を安くぬる 御恵みを 世に著せる そのふみは ホツマツタヱに 優る無し 今世に残る 家々の ふみもそれぞれ 変わりある たれまことと なしがたし かれに一つを 挙げ記す 二十六ふそむあやに 鴨割れて トヨタマ姫も 渚にて 猛き心に 泳がせば 竜やみつちの 力得て つつがも波の 磯に着く これを他所よそにて 船割れて 竜とみつちの 力得て これ誤れる テニオハぞ すべて七家ななやの 記しふみ 異なりがちは これに知れ 我が神の押す ミカサフミ ホツマツタヱと 割り瓜 合わす如くの 心なり 代々の掟と なる書は ホツマツタヱと 思ふ故 深き心を 添え入れて 上げ奉る 末にをして

カカン成す 春の等しく 巡り来て 磯の真砂は 岩となる 代々ノンテンの ホツマ書かな

纏向の 日代の御代に 御笠臣 伊勢の上臣 オオカシマ 二百四十七年 捧ぐ花押

01 東西きつの名と 穂虫去るあや

子の成長を祝う儀式
それワカは ワカ姫の神 捨てられて 拾たと育つ カナサキの 妻の乳を得て アワウワや 長じ潮の目 生まれ日は 炊し御食供え 立ち舞や 三冬髪置き 初日望 天地あわの敬ひ 桃に雛 菖蒲あやめちまき 七夕や 菊栗祝ひ 五年冬 男は袴着る 女は被衣かづき

天地歌あわうた
言葉を直す 天地歌あわうたを 常に教えて
あかはなま いきひにみうく ふぬむえけ へねめおこほの もとろそよ をてれせゑつる すゆんちり しゐたらさやわ
天地の歌 葛垣打ちて 率き歌ふ 自ずと声も 明らかに 五臓六腑ゐくらむわた緒 根肥分け 二十四に通ひ 四十八声 これ身の内の 巡りよく 病あらねば 永らえば 住吉の翁 これを知る

東西南北
ワカ姫聡く カナサキに 東西南北きつさねの名の 故を乞ふ 翁の曰く 日の出る かしらは東 猛昇る 皆見る南 日の落つる 西はニ沈む よねと水 釜に炊ぐは 火頭ひかしらや ニヱ花皆見 煮え静む エカ一度の 御食はこれ る年より 月三食の 人は百万に 月六食の 人は二十万 今の代は ただ二万年 行きなるる 御食重なれば 齢なし 故に御神 月に三食 苦きハホ菜や 南向き 朝気を受けて 長生きの 宮の後ろを 北と言ふ 夜は寝る故 北はネぞ もし人来たり 応わけん 会わねば北よ 会うは日手 南に事を わきまえて 落ち着くは西 帰る北 北より来りて 北(寝)に帰る 木は春若葉 夏青葉 秋ニヱ紅葉 冬落ち葉 これも同じく 根は北に 兆す東や に栄え ツは西つくる ヲは君の 国治むれば 東西ヲ南北 四方と中なり 木は東 花葉は南 の実西 身を分けふる の実故 キミは男女神をめかみ

東方キシイ
然る後 伊雑宮イサワノミヤに 侍る時 東方キシイの稲田 穂を虫に 傷むを嘆き ある形 告ぐる伊雑の 大御神をおんかみ 天の真那井に 御幸あと 民の嘆きに ムカツ姫 急ぎ東方に 行きひらき 田のに立ちて 押し草に 扇ぐワカ姫 歌詠みて 祓いたまえば 虫去るを

ワカの呪い
ムカツ姫より この歌を 三十女みそめ右左まてに 佇ませ 各々ともに 歌わしむ 稲虫祓ふ ワカのまじな
田根たね畑根はたね 大麦小麦うむすき盛豆さかめ まめ小豆すめらの 繁葉そろはめそ 虫も皆締む
たねはたね うむすきさかめ まめすめらの そろはもはめそ むしもみなしむ
繰り返し 三百六十歌ひ とよませば 虫飛び去りて 西の海 ざらり虫去り を祓ひ やはり若やぎ 蘇る ソロに実りて ぬばたまの 夜の糧を得る 御宝 喜び返す 東方キシイ国 天日あひ前宮まえみや 玉津宮 造れば休む 天日宮を 国懸くにかけとなす ワカ姫の 心を留む 玉津宮 枯れたる稲の 若返る ワカの歌より 和歌国

ワカ姫の回り歌
玉津の男鹿 アチヒコを 見れば焦がるる ワカ姫の ワカの歌詠み 歌見染め 思ひかねてぞ 進むるを つい取り見れば
東方キシイこそ 妻を身際に 琴の音の 床に我君を 待つぞ恋しき
(きしいこそ つまをみきわに ことのねの とこにわきみを まつそこいしき)
思えらく 橋懸けなくて 結ぶやは これ返さんと 返らねば 言の葉なくて 待ちたまえ 後返さんと 持ち帰り 高天に到り 諸に問ふ カナサキ曰く この歌は 返事かえことならぬ 回り歌

カナサキの回り歌
我も御幸の 船にあり 風激しくて 波立つを 打ち返さじと 回り歌詠む
長き夜の とおの眠りの みな目覚め 波乗り船の 音の良きかな
(なかきよの とおのねふりの みなめさめ なみのりふねの おとのよきかな)
と歌えば 風止み船は 快く 阿波に着くなり ワカ姫の 歌も雅の 返さじと 申せば君の 詔 カナサキが 船乗り受けて 夫婦なるなり 安河の 下照姫と 天晴れて

烏葉
その押し草は ぬばたまの 花はほのぼの 烏葉の 赤きは日の出 檜扇の 板もて作る 扇して 国守り治む 教え種 烏扇は 十二葉なり 檜扇の葉は みな祓ふ 天地あわの四十八ぞ また三十二 道な忘れそ

三十一と三十二
ハナキネは 五七に綴るを 姉に問ふ 姉の答えは アワの節 また問ふ祓ひ 三十二なり 今三十一とは この教え 天の巡りの 三六十五重 四つ三つ分けて 三十一なり 月は遅れて 三十足らず まこと三十一ぞ 然れども 後先かかり 三十二日も ある間窺ふ オヱものを 祓ふは歌の 声余る 敷島のに 人生まれ 三十一日には三十二 歌の数以て に応ふ これ敷島の ワカの道かな

02 天七代 床酒とこみきあや

天地開闢
いにしえの 天地あめつちうひの きわ無きに 兆し分かるる 陽陰あう女男めお は天と成り 日輪ひのわ成る つちと成り 月と成る 神その中に 在れまして 国常立の 常世国 八方八降りの 御子生みて 皆その国を 治めしむ これ国君の 始めなり 世継ぎの神は クニサツチ 狭霧さきりの道を 受けざれば 狭土さつちに治む 八御子神 各々御子を 五人いたり生む 八方の世継ぎは トヨクンヌ 天より三つの わざを分け 君臣民の 三降りの 神は百二十もふその 御子ありて 天なる道は 女もあらず 三代治まる

ウヒチニ・スヒチ
真榊の 植え継ぎ五百いもに 満つる頃 世継ぎの男神 ウヒチニの スヒチを入るる 幸いの その元折は 越国コシクニの 火成岳ヒナルノタケの 神宮かんみやに 木の実を持ちて あれませば 庭に植えおく 歳後とせのち 弥生やよいの三日みかに 花も実も ももゆえに (桃)の花 二神ふたかみの名も 桃雛木ももひなき 桃雛実ももひなみなり ひなはまだ ひとなるまえよ 君はその 木の実によりて 男神はキ 女神はミとぞ 名付きます 人成る後に 弥生三日 神酒作り初め 奉る 桃下ももとめる 神酒に月 映り進むる 女神まず 飲みて進むる 後男神 飲みて交わる 床の神酒 身熱ければや 明日三朝 寒川浴びる 袖ちて ウスのニ心 またきとて 名もウヒチニと スヒチ神 これもウヒニる 古事ふることや 多き少なき ウスの名も この雛形の 男はかむり 大袖袴 女は小袖 上被衣うはかつきなり この時に 皆妻入れて八十続き 諸民も皆 妻定む 天成る道の 備わりて たぐひ成るより 年数え 五百継ぎ天の 真榊や

オオトノチ・オオトマエ
五代の神は オオトノチ オオトマエなり ツノクイは 大殿にいてイククイを 戸前に相見 妻となす 故男は殿ぞ 女は前と 八百続きまで

オモタル・カシコネ
六代の継ぎ オモタルの神 カシコネと 八方を巡りて 民をす 近江安曇を 中柱 東はヤマト 日高見も 西は月隅 葦原も 南阿波蘇佐 北はの ヤマト細矛ホソホコ 千足まで 及べど百万もよ穂 嗣子つぎこ無く 道衰いて いため 

矛の雫
時に天より 二神に 壺は葦原 千五百ちいも秋 汝用いて 知らせとて と矛賜う 二神は 浮橋の上に 探り得る 矛の雫の オノコロに 宮殿造り 大山下

七代目を継ぐ糸口は
天の神代の 七代目を 継ぐ糸口は 常世神 木の実東に 植えて生む ハコクニの神 日高見の 高天に祀る ミナカヌシ 橘植えて 生む御子の タカミムスビの 諸称ゆ キノトコタチや その御子は アメカガミ神 筑紫す ​ウヒチニ儲く この御子は アメヨロツ神 ソアサ治し アワサク生めば アワナギは 根の白山下 千足まで 法も通れば 生む御子の 諱タカヒト カミロギや​ タカミムスビの 五代神 諱タマキネ トヨウケの 姫のイサコと 浮橋を ハヤタマノヲが 渡しても 解けぬ趣き 解き結ぶ コトサカノヲぞ 方壺の 西南の筑波の 伊佐宮に 頷き相見て イサナギと イサナミとなる 二神の

03 ひめ三男みを生む殿のあや

ヒルコ誕生
昔二神 筑波にて 御廻り問えば 女神には 成り成り足らぬ 陰元めもとあり 男神の成りて 余るもの 合わせて御子を 生まんとて ミトのまぐわい なして子を 孕みて産める 名はヒルコ 然れど父は 鈴四十穂 母は三十一穂 陰陽の節 宿れば当たる 父の汚穢 男の子は母の 隈となる 三年慈くに 足らざれど 磐樟舟に 乗せ捨つる 翁拾たと 西殿に ひたせば…

ヒヨルコ流産
後に二柱 浮橋に得る 淤能碁呂の 八尋の殿に 立つ柱 廻り生まんと 言上げに ひたりより みぎに 別れ巡りて 会う時に 女はあなにえや 愛男と 男はあなにえや 愛乙女と 歌い孕めど 月満てず 胞衣破れ産む ヒヨルコの 泡と流るる これもまだ この数ならず 葦舟に 流す淡路や

国生み
大和秋津洲 淡路島 伊予阿波二名 沖三つ子 筑紫吉備の子 佐渡大島ウシマ 生みて海川 山の幸〔佐路〕 木を焼くクの かやの姫 野土も成りて

アマテル大日山で誕生
アワ歌に 治む原見の 宮にいて すでに八島の 国産みて いかんぞ君を 産まんとて 日の神を生む その御名を ウホヒルギとぞ 称えます 国麗しく 照り通る クシヒルノコは 天に送りて 天の木と 御柱の道 奉る 故に原見を 大日山

ソサノヲ誕生
蘇佐国に産む ソサノヲは 常に雄たけび 泣きいさち 国民くじく イサナミは 世の隈なすも 我がヲエと 民のヲエ隈 身に受けて 守らんための 熊野宮 かく御心を 尽くし産む 君臣の道 トの教え 逆り悖らば 綻ばす 

生む殿は
この二柱 生む殿は 天の原見と 筑波山 淡路月隅 熊野なりけり

04 日の神のみつ御名みなあや

日高見や
昔この クニトコタチの 八下り子 木草を苞の ホツマ国 東遥かに 波高く 立ち昇る日の 日高見や タカミムスビと 国統べて 常世の花を 原見山 香久山となす

民のトヨウケ
五百継ぎの 真榊も植え 代々受けて 治む五代の ミムスビの 諱タマキネ 元明を 移す高天に 天御祖 もともと天並み 三十二守 祀れば民の トヨケ神 東の君と 道受けて 大嘗事も 真榊の 六万に継ぎて 植え継ぎは

嘆くトヨケの
二十一ふそひすすの としすでに 百二十もふそよろ七千なち 五百二十ゐもふそに かんがみれども 神孫かんまごの 千五百ちゐもうしある その中に あめの道得て 人草の 嘆きをやわす 神あらず あらねば道も 尽きんかと 嘆くトヨケの 原見山 登りて見れど 八島やしまなる よろ増す民も うくめきて 道習えぬも ことわりと やはり嘆きて 日高見の 宮に帰れば イサナミの 父に申して 嗣子も がなとおほせば … 天の御祖に 祈らんと トヨケ自ら 禊して … 天の御祖の 眼より 漏るる日嗣と 天元神 三十二の守の 守る故 子胤なること 覚えます

この頃君は 原見山 登りて曰く 諸共に 国々巡り 民を治し 姫御子生めど 嗣子なく 楽しなきとて 池水に 左の目を洗ひ 昼に祈り 右の目を洗ひ 月に祈り

イシコリトメが マス鏡 鋳造り進む イサナギは 天を知らする ウツの子を 生まん思ひの マス鏡 右左に昼月 なづらえて 神生り出でん 事を乞ひ 首巡る間に あくり乞ふ

アマテル誕生
二十一ふそひすす 百二十五もふそゐゑた としキシヱ 初日はつひほのぼの づる時 ともにれます 御形みかたちの まどか玉子たまこ いふかしや

八峰
やや初秋の 望の日に 開く瞳の 潮の目は 民のテフチの 喜びに 疲れも消ゆる 御恵みや 天に棚引く 白雲の かかる八峰の 降る霰 八隅にこだま この瑞祥みつを 布もて作る 八響幡やとよはた 八隅に立てて 君となる 位の山の 櫟笏いちゐさく 神の穂末ぞ

赤玉の
赤玉の ワカヒル乗るは 青き玉 暮れ日の御玉 ぬばたまなりき

久方の
久方の 光在れます 初嘗会 天ユキ地スキに つけ祀り 御子養さんと 二神の 御心つくす 天の原 十六穂いますも 一日とぞ 思すは恵み 篤きなり

帝王学
昔タマキネ 誓いして カツラギ山の 八千禊 すみてイトリの 手車を 作り桂の 迎かいとて 原見に伝う ある形 二神夢の 心地にて 相見たまえば トヨケにて 天御子ひたす 物語り 召す手車を 日高見へ 御幸の君は 八房輿 御乳母侍る 方輿も みな方壺の 山手宮 御子の光の 照り通り 八方に黄金の 花咲けば 日の若宮の ワカヒトと トヨケ諱を 奉る 二神畏れ 我が宮に むべ育てじと 天に上げ 沖津の宮に 帰ります 天御子学ぶ 天の道 ひとり侍る フリマロは 六代ヤソキネの 代嗣子ぞ タカミムスビの 五代君 日毎に上る 天津宮 ワカヒト深く 道を欲す

05 ワカの枕言葉のあや

伊予阿波二名
…二神の 沖壺にいて 国産めど 民の言葉の ふつ曇り これ直さんと 考えて 五音七道の アワ歌を 上二十四声 イサナギと 下二十四声 イサナミと 歌い連ねて 教ゆれば 歌に音声の 道開け 民の言葉の 調えば 中国の名も アワ国や … 到る 蘇阿佐国 サクナギの子の イヨツヒコ 歌に言葉を 習わせて 二名を求む アワツヒコ …

ツキヨミ誕生
二神の 沖壺にいて 国生めど … 筑紫に御幸 橘を 植えて常世の 道成れば 諸守請けて 民をす 玉の緒留む 宮の名も 弟橘の阿波岐宮 御子あれませば モチキネと 名づけて…

ソサノヲ誕生
蘇佐に来たりて 宮造り 静かにいます 東方キシヰ国 橘植えて 常世里 先に捨てたる ヒルコ姫 再び召され 花の下 歌を数えて 子を産めば 名もハナキネの 人なりは いさち雄たけび しきまきや 世の隈成せば 

イサナミの死
世の隈成せば 母の身に 捨てところなき 世の隈を 我が身に受けて 諸民の 欠けを償う 御熊野の 御山木焼くを 除かんと 生む火の神の カグツチに 焼かれてまさに 終わる間に 生む土の神 ハニヤスと 水ミツハメぞ カグツチと ハニヤスが生む ワカムスビ 首は蚕桑に 臍は稲 これウケミタマ イサナミは 有馬に納む

黄泉の国
イサナミは 有馬に納む 花と穂の 時に祀りて ココリ姫 輩に告ぐる イサナギは 追い行き見まく ココリ姫 君これな見そ なお聞かず 悲しむゆえに 来たるとて 湯津の黄楊櫛 おとり歯を たひとし見れば 蛆たかる いなや醜めき 汚きと 足ひき帰る その夜また 神行き見れば かな真 容れず恥じみす 我が恨み 醜女八人に 追わしむる 剣振り逃げ 葡萄投ぐる 醜女取り食み さらに追う 竹櫛投ぐる これも噛み また追い来れば 桃の木に 隠れて桃の 実を投ぐる てれば退く 葡萄ゆるく 櫛は黄楊良し 桃の名を オフカンツミや イサナミと 黄泉平坂 言立ちす イサナミ曰く 麗しや かく為さざらば 千首を 日々に縊らん イサナギも 麗しや我 その千五百 生みて過ち 無き事を 守る黄泉の 平坂は 息絶ゆる間の 限り岩 これ道返しの 神なりと 悔みて帰る 元つ宮

イサナギの禊
いな醜めきを 濯がんと 音無川に 禊して 八十禍つひの 神生みて 禍り直さん 大直日神 生みて身を 潔くして 後到る 筑紫阿波岐の 禊には 那珂川に生む 底筒男 次中筒男 上筒男 これカナサキに 纏らしむ またアツ川に 底と中 上海神の 三神生む これ宗像に 纏らしむ また志賀海に シマツヒコ オキツヒコ 志賀守 これは安曇に 纏らしむ

あしびきの
後淡宮に 詔 導きの歌 淡君よ 別れ惜しくど 妻送る 夫は行かず 行けば恥 醜女に追わす 良し悪しを 知れば足引く 黄泉坂 言立ち避くる 器あり 禊に民の 調いて いやマト通る あしびきの 千五百の小田の 瑞穂成る

枕詞
マトの教えに カカンして ノン淡国は デンヤマト 率て明るき 葦原の 歌も悟れよ マト道の 通らぬ前の あしびきの 枕詞は 歌の種 あしひきは山 ほのぼのは 明けぬばたまは 夜の種 しまつとりの鵜 おきつとり 鴨と船なり この味を ぬばたまの夜の 歌枕 覚めて明るき 前言葉 心を明かす 歌の道 禊の道は 身を明かす ヤマトの道の 大いなるかな

06 日の神 十二后そふきさきあや

安国宮
二十一鈴 百二十六枝 年サナト 弥生一日 日の山下 新宮造り 天御子は 日高見よりぞ 遷ります

十二后
二神御女を 詔 カンミムスビの ヤソキネが 諸と諮りて クラキネが マス姫モチコ の典侍と その妹姫ハヤコ コマス姫 の内后 ヤソキネの オオミヤミチコ の典侍に タナハタコタヱ の内侍 サクラウチが姫 サクナタリ セオリツホノコ の典侍に ワカ姫ハナコ の内侍 カナサキが姫の ハヤアキツ アキコは潮の 八百会子やもあひこ 西の典侍内は 宗像が オリハタオサコ 乙下侍おしもめは トヨ姫アヤコ 糟屋が姫 イロノヱアサコ 乙下おしも カダがアチコは 乙下おしも 筑波葉山が ソガ姫は の乙下ぞと 月に寄せ 御子は天日の 位宣る 日の山の名も 大山ぞ かれ大山下 日高見の 安国の宮 東西南北の 局は替り 宮仕え その中ひとり 素直なる セオリツ姫の 雅には 君も刻橋 踏み降りて 天下がる日に ムカツ姫 ついに入れます 内宮に カナヤマヒコが ウリフ姫 ナカコを典侍に 備えしむ これを暦の ウリフ月 みな機織りて 操立つ

ツキヨミ遣れば
弟ツキヨミは 日に次ぎて 民の政を 助けしむ 伊予の二名の 治まらで ツキヨミ遣れば 伊吹上げ 遠宮トツミヤ

トヨウケ宮津へ
千足国 益人コクミ 怠れば タナキネ付けて 日高見は ヤソキネに治す タカキネを 君の輔と手 タマキネは 行きて細矛サホコの 国をす 宮津の宮ぞ

宗像安曇助けしむ
月隅は シマツヒコより 七代統む 今カナサキの 枝姓 宗像安曇 助けしむ 御代も豊かに 治まりて 八万年経て

トヨウケ崩御
二十二鈴 五百五枝初に 宮津より 早雉飛べば 天日神あまひかみ 急ぎ真那井に 御幸なる 時にタマキネ 相語り 昔陸奥 尽くさねば ここに全つとて 授けまし 諸守たちも しかと聞け 君は幾代の 御祖なり これトコタチの 言宣りと 洞を閉ざして 隠れます その上に建つ 朝日宮 君懇ろに 祭りして 後帰まさん 御手車 留むる民を 憐れみて 自ら政 聞こし召す 趣告げる 雉子にて ムカツ姫より 言宣りし 高みに祀る トヨケ神

局留めて帰らんと
モチコの典侍と ハヤコ内 アチコと三人 早行きて 真那井の原の 宮仕え 言宣あれば 門出して 宮津の宮に ある時に 君の御狩りに 千足国 道を定めて 治む後 ヤソキネのおと カンサヒを 益人となし また弟子おとこ ツハモノヌシと コクミ副え 局留めて 帰らんと

宮津から帰国(アマテル40)
去年こそより向かう ソサノヲと アマノミチネと 門出なす ネナト弥生 望よりぞ 卯月の望に 帰ります ヒノハヤヒコニに 詔 汝国絵を 写すべし ヤマト巡りて みな描く 君は都を 遷さんと オモイカネして 造らしむ なりて伊雑に 宮遷し ここにいませば ムカツ姫 淵岡穴の 忍穂井に 産屋の耳に 在れませる オシホミミの御子 オシヒトと 諱を触れて 神在りの 餅飯賜えば 民歌う

アマテルの五男三女
先にモチコが 生む御子は ホヒの尊の タナヒトぞ ハヤコが三つ子 はタケコ 沖津島姫オキツシマヒメ はタキコ 江島姫ヱツノシマヒメ はタナコ 厳島姫イキチシマヒメ 然る後 アキコが生める タタキネは アマツヒコネぞ 然る後 ミチコが生める ハラキネは イキツヒコネぞ トヨ姫は 内侍うちめにて ヌカタダの クマノクスヒぞ 御子すべて 五男ゐおと三女みめなり

南の殿、東の宮
の殿に 橘植えて 橘宮カグノミヤ に桜植え 大内うおち宮 自ら政 聞し召す あまねく民も 豊かなり

イフキトヌシ誕生
ツキヨミの妻 イヨツ姫 生むモチタカは イフキヌシ

那智の若神子わかみこ
先に父親たらちお ハナキネ根国ネノクニ細矛サホコ 知らすべし 未だヒルコと 御熊野の 臣が助けて 後の君 那智の若神子わかみこ ヌカタタよ イサナミ祀る 熊野守 醜女がシヰを 枯らす神 祀れば黒き 鳥群れて 烏と名づく

イサナギ崩御
イサナギは 篤しれたまふ ここを以て 淡路宮に 隠れます ことは終われど 勢ひは 天に上りて ヲを還す 天日若宮に 留まりて 病を治します 多賀神

天安河
ヤマト安宮 引き写し 天安河の ヒルコ姫 御子オシヒトを 養します 根と細矛サホコ国 兼ね治む 下照姫と アチヒコと 伊勢を結びて 諸共に ここに治めて 生む御子は 諱シツヒコ タチカラヲかな

07 遺しふみ サカを断つあや

シラヒトコクミ
諸守の サカをたつ時 細矛サホコより ツハモノヌシが 橘宮カグミヤ雉子ききす飛ばせて 益人が 民のサシミメ 妻となす クラ姫生めば 慈しみ 兄のコクミを 子の如く 細矛サホコ千足の 益人や 今は副なり クラキネが 罷れる時に シラヒトを 根の益人に クラコ姫 身を立山に 納む後 母子を捨てて ツに送る コクミ母子を 犯す罪 カンサヒこれを 正さねば 臣これを乞ふ 御幡より 小男鹿さをしかに召す カンサヒと コクミ母子と 高天にて カナサキ問わく コクミ言ふ サシメはまこと 我が妻よ 君去りますの おしてあり また問ふ汝 何人ぞ 民と言ふにぞ 雄叫びて 獣に劣る 罪人ぞ サシメ捧ぐる 縁にて 益人となる 御恵みの 君なり母よ 性見れば 君を忘るる 百回と 母も二十回 犯するも おしての恥も 百と百 姫ないがしろ 五十回 すべて三百七十

ト矛法
天巡り 三百六十度を ト矛法 所を去ると 流離うと 交わり去ると 命去る

四つ割り過ぎて 綻びと ツツガに入れて 根国ネノクニの シラヒトを召す 高天にて カナサキ問わく 母を捨て 妻去る如何 答え言ふ 己は去らず 母よりぞ 家捨て出づる 姫もまま またもとを問う 答え言う 世々の臣ゆえ 如なせり 母は民の女 勧めてぞ 君の妻なり 御恵み 何忘れんと ゐゐ流す カンミムスビの 叱りてぞ 汝飾りて 惑わすや 我よく知れり ともを越え 力を貸して 母が上げ 政授けて 殊なすを 母に慕えば 姫が倦む 隠さんために 流しやり 民の目奪い 力貸す 恵み忘るる 二百回 去るも百回 踏むが五十 掴むの六十で 四百十回 これ逃るるや 答えねば ツツガに入れて

白山守
大御神 諸と諮りて ヤソキネを 根国ネノクニ守と イサナギの 産屋に叔父と 叔母なれば 政絶えずと 詔 以ちて民す 叔父と叔母 白山守ぞ

典侍が兄となし
イサナギは 政れど弟の クラキネは 政らず モチが クラ姫を カンサヒの子の アメオシヒ 娶わせ典侍が 兄となし 父益人の 政継ぐ シラヒトコクミ この祝ひ なかばを得て さすらひの 氷川に遣るを 益人の 我が臣となす

ハヤスフ姫
ソサノヲは これ調いて 真那井なる 神に詣でる その中に 手弱女たおやめあれば これを問う 侍女まかたち答ふ アカツチが ハヤスフ姫と 聞こし召し 雉を飛ばせて 父に請う アカツチ宮に 嫁がんと 言えど宮無く 大内の 折々宿る の局

剣持ち
姉妹ゑと休めとて 内宮の トヨ姫召せば 北の局 下がり嘆けば ソサノヲが 堪えかねてぞ 剣持ち 行くをハヤコが 押しとどめ 功成らば 天が下 ハナコ来たれば 矛隠す 見ぬ顔すれど 内に告げ

モチコハヤコの追放
ある日高天の 御幸後 モチコハヤコを 内に召す 日にムカツ姫 宣うは 汝ら姉妹が 御食冷えて 筑紫に遣れば 噤みおれ タナキネは取る 男は父に 女は母につく 三姫子も 共に下りて ひたしませ 必ず待てよ 時ありと むべ懇ろに 諭されて 筑紫アカツチ これを受け 宇佐の宮居を 改めて モチコハヤコは 新局 置けば怒りて ひたしせず 内に告ぐれば トヨ姫に ひたし奉らし 流離なす 二流離姫 憤り 氷川に怒り 成る大蛇おろち 世にわだかまり コクミらも 仕えてシムを 奪ひ蝕む

ソサノヲの悪行
ソサノヲ仕業 味気あぢきなく 苗代のしろしき撒き あお放ち 祈らす御裾みその 新嘗の 神御衣かんみは織れば 殿穢す これ糾されて ソサノヲが 一人かふむ斎衣殿いんはとの 閉じれば怒る 斑駒ふちこまを 瓦穿ちて 投げ入るる ハナコ驚き 梭に破れ 神去りますと 泣く声に 君怒りまし ソサノヲに 汝汚く国望む 道成す歌に 天が下 柔して巡る 日月こそ 晴れて明るき 民の父母たらなり

天岩戸
ソサノヲは 岩を蹴散らし なお怒る 君恐れまし 岩室に 入りて閉ざせば 天が下 日月もあや無し 安河の 闇に驚く オモイカネ 松明に馳せ 子に問いて 高天に諮り 祈らんや ツワモノヌシが 真榊の 上枝かんゑ瓊玉にたま 中つ枝に 真経津の鏡 しも和幣にきて 掛け祈らんと ウズメらに 日影を襷 茅巻矛 おけらを庭火 笹湯花 神楽かんくらの殿 神篝火かんかかり 深く謀りて オモイカネ 常世の踊り 長咲きや 俳優わざおき歌う かぐの木 枯れても匂ゆ 萎れてもよや 吾が妻あわ 吾が妻あわや 萎れてもよや 吾が妻あわ 諸守は 岩戸の前に かしまり これぞ常世の 長咲きや 君笑み細く 窺えば 岩戸を投ぐる タチカラヲ 御手取り出し 奉る ツワモノヌシが 注連縄に な返りましそ

ソサノヲの追放
然る後 高天に諮り ソサノヲの 咎は千座の 三段枯れ 髪抜きひとつ 爪も抜き まだ届かねば 殺す時 ムカツ姫より 早牡鹿に 受け物祈り 黄泉返す ハナコの四百祥 償えば 祥禍を明かせよ ソサノヲが 仕業は血の 虫なれど 祥禍無く恙 なからんやわや 言宣りを 諸が諮りて 天戻る 重きも魄の 半ば減り 交わり去ると 菅笠青衣 八重這い求む 下民の 流離遣らいき 大御神 知ろし召されば 天照らす 人の表も 楽しむに みちすけの歌 あはれ あなおもしろ あなたのし あなさやけ おけ さやけ おけ あはれ おもしろ さやけ おけ あなたのし 相共に 手を打ち伸べて 歌ひ舞ふ ちわやふるとぞ 楽しめば これ神座に 天照らす 大御神なり

ソサノヲの天安河訪問
流離男は 御言を受けて 根に行かん 姉にまみゆる 暫しとて 許せば上る 安河へ 踏み轟きて 鳴り動く 姉はもとより 流離男が 荒るるを知れば 驚きて 弟の来るは さはあらじ 国奪ふらん 父母の よさしの国を 捨ておけば あえて伺うと …〔男装して剣をもって待ち構え〕… なじり問う ソサノヲ曰く な恐れそ 昔根国ネノクニ 行けとあり 姉とまみえて 後行かん はるかに来れば 疑わで いつ返しませ 姉問わく さ心は何 その答え 根に到る後 子を生まん 女ならば穢れ 男は清く これ誓いなり … 我穢れなば 姫を得て とも恥見んと 誓い去る

三姫のその後
姫人成りて 沖津島オキツシマ 相模江島サガムヱノシマ 厳島イツクシマ 身から流離う 流離男の 影の雅の 過ちを 晴らして後に 帰ります

昔二神 遺し書 天の巡りの 蝕みを 見るマサカニの なかごりて 生むソサノヲは 玉乱れ 国の隈成す 過ちぞ 男は父に得て 土を抱け 女は母に得て 天と結ねよ 浮橋を得て 嫁ぐべし 女は月潮の 後三日に 清く朝日を 拝み受け 良き子生むなり 謝りて 穢るる時に 孕む子は 必ず荒るる 前後ろ 乱れて流る 我が恥を 後の掟の 占形ぞ 必ずこれを な忘れそこれ

08 玉返し ハタレ討つあや

節に当たれば
御神をんかみ 天下あまがした照る 貴霊くしひるに 民も豊かに 二十三ふそみよろ 二千三百八十ふちみもやその 二年ふたとしを 経ても安らや 御形も なお若やぎて をわします 今年二十四ふそよの 幸鈴さくすすを 二十五ふそゐの鈴に 植え替えて 節に当たれば 根国と 細矛の国の 益人が 内のシラヒト コクミらが 親も犯して 子も犯す 咎過ちも 二女殿 賢所の 引きつりに 許せば抱え 国を治す マイナイ掴み 忠ならず つひに大蛇おろちの なめられて ハタレの者の 蠢きて さはいの声の 恐ろしく ここさわやまの 早雉子 杼投ぐる告げの 高天には 守諮りして 進み出る タケミカツチが 十六丈の 万に優るる 力にも 知らぬハタレの 訝さを 討つや左の カナサキも 答えを知らで 伺えば 天照らします 詔 やや知る真 ハタレとは 天にも居らず 守ならず 人の拗けの とき優れ 凝り得て六つの ハタレ成る 錦大蛇おろちの シムミチや ハルナハハミチ イソラミチ 三人るキクミチ イツナミチ 鳴神求む アヱノミチ 皆そのシムを 抜き取りて 業に燃えつく 瘧火の 日々に三度の 悩みあり 如何で恐れん 神力 祓い除かば 自ずから ハハもイソラも 振り返し 射る矢も受けず 神の矢は 必ず当たる ハタレ身の 業や顕す フツヌシが 手立てを問えば カナサキの 翁答えて 我も無し 慈しを以て 神形 中子素直に 神力 よくもの知るは 神通り 事なふ保つ 貴霊くしひるぞ ただ和らぎを 手立てなり

ハタレ討ちの任命
神の御心 麗しく 禊司を カナサキに フツヌシ副えて ミカツチも いさおし合わせ 討たしむる 天の鹿児弓 羽々矢添え ハタレ破れと 賜ひけり 六つのハタレは 八岐あり 九千司に 七十ハカリ 群れ集まりて 垣破り 叢雲起こし 炎吹き 礫雷 国揺すり 民を揺すりて 攻め寄する

サクナタリ
アマテル神は サクナタリ 速川の瀬に 禊して ハタレ破るの まじないの 種を求めて 授けます 諸守請けて これを討つ

シムミチ
ハタレシムミチ なす業に 山川あふれ 大蛇おろちが 炎を吐きて 驚かす カナサキしばし 立ち還り 天に告ぐれば 大御神 賜ふ葛鈴 蕨縄 カナサキ受けて 攻め口の 諸に授けて 呪えば ハタレの者の 業ならず 逃げんとすれど 神軍 勝ちて生け捕る ハタレマを 乾く日照りに 繋ぎ置き ついに生け捕る ハタレ神 恙に置きて 三千モノマ シムに預けて 諸帰りけり

イソラミチ
然る後 また早雉は 大ハタレ 根の立山に 現れて 安濃に到れば 守諮り フツヌシ遣りて これを討つ 時にハタレの イソラ神 野山を変えて 叢雲や 幾日輝き 驚かし 棘矢放せば フツヌシが 手に取る時に 指破れ まず馳せ帰り 天に告ぐ 君考えて イソラミチ 粔籹をこしと蕗と 弓懸ゆかけして さらに向かいて 矢を求む ハタレ思えり 矢に当たり よみがえるかや 痛まぬか フツヌシ曰く 弓懸ゆかけあり なんぞ痛まん 受けよとて 羽々矢放せば ハタレ取る ともに笑いて みやげあり 神より粔籹をこし 賜れば ハタレ喜び 神如何 我が好き知るや また曰く 汝も知るや 答えねば 笑って曰く 殺すなり ハタレ怒って 何故ぞ 汝ほこりて 化くる故 イソラ討つなり なお怒り 岩を蹴上げて 罵れば フツヌシ粔籹をこし 投げ入るる ハタレマ奪ひ 争えり 味方は蕗を 焚き燻す ハタレ咽んで 退くを 追い詰め縛る 千ハタレマ これも昼寝と なお勇み 四方より囲み イソラ神 ついに縛りて 恙なす 千百のモノマも その国の シムに預けて 諸帰りけり

イツナミチ
またハタレ 伊予の山より 東方キシヰ国 渡り攻むるを 遠宮トツミヤの 告げに諸会い 守諮り かねて奏の 詔 タケミカツチに 伏兎環ふとまかり 賜えば急ぎ 奏でんと 高野に至る イツナミチ 万の獣に 化け懸る ミカツチ行けば ハタレ神 進みて曰く さき二人 我に返せよ 返さずば 神も取らんぞ ミカツチが 笑いて曰く 我が力 万に優れて 雷も 汝も拉ぐ 縄受けよ ハタレ怒りて 戦えば 味方投ぐる 伏兎環ふとまかり 群れ貪りて ハタレマを 討ち追い詰めて みな括り ついにイツナも 蕨縄 百一連れに 結い統べて 九千九百を 継ぎ縛り ヒヨトリ草の 如くなり 自ら山に 引き登る みな首締まり 罷る者 山にうづみて 生き残る 百笹山に 恙なす 奏で枯らせる 過ちと 喪に慎むを 聞し召し 御子のクスヒに 訪わしむる 臣過ちて 万モノマ 引き枯らしけり またクスヒ それは人かや 如くなり 返事かえことあれば 大御神 恙屋に至り 見給えば 形は真猿 顔は犬 そのもと聞けば 昔母 真猿に嫁ぎ 代々を経て みな猿如く 詔 玉返しせば 人成らん 先に罷るも 緒を解きて 人に生まるぞ 時に百 願わくは神 人に成し たまわれとみな 罷りけり ココストの道 大御神 ツハモノヌシと フツヌシと タケミカツチに 玉返し 猿去る沢に 起こる道かな

キクミチ(前半)
またハタレ 筑紫の三人 中国の 花山の野に 朋集む 時にアマテル 詔 受持うけもちの孫 カダマロに 国見て帰れ カダマロが 到ればハタレ 色変えて 咲き乱れたる キクミチの ここ騒ゆくや 姫踊り 叢雲手灯たひや 蛍火の 笑ひ嘲り 怒り火の 青玉吐けば 進み得ず カダマロ帰り 申す時 しばし考え 詔 これキクならん キツネとは キはよりなる 西南つさを経て 北(根)に来て住める 鼠(根住み)をば 油に揚げて 厭ふべし クはちと違う クはキウの ヲノホを厭ふ はしかみ生姜をか茗荷めかふすべ 拉がんと 御言を受けて カダマロが 諸に教えて 野に到る ハタレ三人が 咲き乱れ 幾重変わりて 驚かす カダマロ投げる 揚げ鼠 キク民奪ひ 貪るを 諸守強く 戦えば 譲り逃ぐるを 追い詰めて 千人捕らえて 斬らんとす ふつく嘆きて 僕ら 帰り詣でん 天民と 命を乞えば カダマロが みな解き許し 藁縄を さわに縄せて 椒と 茗荷を燻せば 乱るるを さらに戦い 追い詰めて ふつく捕らえて 先例 つひに追い詰め 三ハタレを 縛る蕨に キクツネを 三里の網を 野に張りて みな追ひ入れて 玉つなぎ キクツネすべて 三十三万 三人はツツガ 諸帰りけり

ハルナハハミチ
またハタレ 日隅日高見 香具山下 二岩浦に 継ぐ黄楊の 櫛の歯弾けば 諸守は 高天に諮り 御幸とぞ 願えば神の 御幸成る 輦車てくるまのうち セオリツ 天の御影に アキツ姫 日の御影差す イフキヌシ クマノクスヒと 右左まてにあり 白黒駒に 諸添いて 山田に到り 雉飛べば ハルナハハミチ 野も山も 変えて叢雲 炎吹き 棘矢のあられ 鳴る神に 味方帰れば 大御神 かねてサツサに 歌見つけ 投ぐれば嗜む ハタレマを サツサツツ歌 流離ても ハタレもハナケ 水足らず カカンなすかも 手立て尽き かれノンテンも あに効かず 日嗣と我は 天地も照らすさ 諸歌ふ ハタレ怒りて 矢の霰 神の民女に 矢も立たず いやたけ怒り 火花吹く 神ミツハメを 招く時 炎消ゆれば 胸騒ぎ 逃げんとするを タチカラヲ ハタレハルナに 跳びかかり 力争い 押し縛る ハタレマもみな 捕り縛り 前に引き据え 垂れ上ぐる 君八尺瓊やさかにの 勾玉まかるたま セオリは真経津まふつ 八咫やたかがみ アキツ草薙くさなぎ 八重やゑつるぎ 時にイフキト 故を問ふ ハルナ答えて やつかれに 根の益人ますひとが 教えけり いさおし成らば 国守くにつかみ これソサノヲの 御言なり 時にイフキト 真経津なら 鑑みんとて 御鏡に 写せばふつく 翼あり イフキト曰く このハタレ ヌヱアシモチぞ 化けわざに たぶらかす者 みな斬らん 時にクスヒが 熊野守 招けば烏 八つ来たる ここにハタレの 血を絞り 誓いとどめて うしほ浴び 影写す時 六十万人 人成るはみな 民となる

キクミチ(後半)
先のツツガの 六ハタレも ハルナがモノマ 五千人と 国預け四千 みな召して 血を濯ぐ時 キク三人 すぐにキツネの 影あれば 名も三つ狐 三十三万 玉断ちせんを カダが乞う 諸許さねば カダの守 七度誓う 宣言に やや許さるる 詔 三彦が如 諸狐 ウケノミタマを 守らせよ もしも違はば すみやかに 玉断ちなせよ この故に 永く汝に つけるなり 天御言の 趣きを 告げて兄彦 ここに留め 中は山背 花山野 弟は東の 飛鳥野へ キツネも三つに 分け行きて 田畑の鳥を 追わしむる ウケノミタマと ウケモチも カダの神なり シムミチも イソライツナも 血を抜きて をしてに誓ひ 潮浴びて 映す鏡に なお猿と 大蛇おろちみつち 影あれば そそいで掃けぬ 百三十は すでに殺すを 詔 斬らば三のに 悩まんぞ 人なるまでは 助け置き 人さかしれば 神の種 峰に預けて そのをして ハテレマ九千と 民九万 埋む高野の 玉川ぞこれ

アメヱノミチ(ハタタ神鳴り(1))
ちわやより アメヱノミチが 御神に 事語らんと 呼ばらしむ 君イフキトに 鎮めしむ イフキトヌシは 御幸みゆき輿こし ハタレが問わく 上神かんかみか 答えて神の やつこなり また問ふやつこ 輿こしは何 曰くなんじを やことせん ゆえに乗るなり またハタレ なんじわかえ はぢする やつことせんと 鳴り巡る ハタタ神鳴り イフキトは ウツロヰ招き これを消す 叢雲覆ひ 暗ませば シナトを招き 室焼けば タツタ招き これを消す ハタレ咽んで このはして 礫霰に 民攻める 味方領巾着て 橘入れて 討ちこぼさせば ハタレマの 奪い食む間に 取り縛る ハタレも領巾し まはすはゐ 見て驚けば 考えて ほら貝吹かせ 真領巾消し 橘貪らせ これを討つ ハタレ槌持て 神を打つ 神はにきてに 打つ槌の やれて海桐花とべらの 団扇うちわや ここにハタレが 胸騒ぎ 逃ぐるを掴む タチカラヲ ついに蕨の 縄縛り 汝やつこと なすべきや なるやと言えど 物言わず 斬らんとすれば イフキヌシ 留めてこれも 誓いなす 一升のモノマ アヰヌ影 炎も逃れ ちわやふる 神の恵みと 千々ちち拝む すべて七升 九千みな 人成る法の 御鏡を セオリツ姫の 持ち出でて 後のハタレの 人と成る 真経津の鏡 見るために 二見の岩と 名づけます 代々荒潮の 八方合いに 浸せど錆びぬ 神鏡 今永らえり

ハタレ討ちの論功行賞
高野には 化け物出でて イフキヌシ 宮を建つれば 鎮まるに をして賜る 高野守 またカナサキは 住吉スミヨロシ 守のをしてと 御衣のを 賜ふ筑紫の 民統べて 結ひ治むべし 我が代わり またフツヌシは 香具山を 司れとて 香取守 タケミカツチは 鳴る神に 武者主たけものぬしの 代槌かふつちと 先の国絵に ゆり鎮む 要石槌かないしつちも 賜ふなり ツハモノヌシが 玉返し 清き真の はな振りて 道に阿もなし 磯城県 穴師大神うをかみ をして添え 据えて写し日 上翁かんおぢ

09 八雲討ち 琴つくるあや

宿もなく
粗金あらかねの 土に堕ちたる 流離男さすらをの 雨の恐れの 蓑笠も 脱がで休まん 宿もなく 路にさまよひて 咎めやる すりやわことに 辿り来て ついに根国 細矛なる 弓削の蘇方守 ツルメソが 宿に噤むや シムの虫

八岐大蛇
佐田の粗長 アシナツチ 副えのテニツキ 八姫生めど 生ひ立ちかぬる 悲しさは 氷川の上の 八重谷は 常に叢雲 立ち昇り そひらに茂る 松萱の 中にヤマタの オロチいて ハハやカガチの 人身供ひとみけと 恙せらるる 七娘 残る一人の イナタ姫 これも食まんと 父母は 手撫で足撫で 痛む時 蘇佐の尊の 神問ひに あからさまにぞ 答えけり 姫を得んやと いや問いに 御名は誰ぞと 占問えば 天の弟と 顕れて 契りを結ぶ イナタ姫 病める炎の 苦しさを 袖脇裂きて 風入れば 炎も冷めて 快く 童の袖の 脇開けぞ 姫は弓削屋に 隠し入れ スサは休みの 姫姿 湯津の黄楊櫛 面に挿し 山のさすきに 八搾りの 酒を醸して 待ちたまふ 八岐頭の 大蛇来て 八船の酒を 飲み酔いて 眠る大蛇を ツタに斬る ハハが尾先に 剣あり ハハムラクモの 名にしあふ

誓約の結果
イナタ姫して オオヤヒコ 生めばソサノヲ 安河に 行きて誓ひの 男の子生む 吾勝つと言えば 姉が目に なお汚しや その心 恥をも知らぬ 世の乱れ これみなそれの 過ちと 思えばむせぶ はや帰れ ソサノヲ恥じて 根に帰る 後オオヤ姫 ツマツ姫 コトヤソ生みて 隠れ住む

涙は滝の
高天は六つの ハタレ神 蜂の如くに 乱るれば 守諮りして ハタレ討つ 君は禊の サクナタリ ハタレ厭ふの 種を得て 御代治まれど 源は 根の益人に 因るなれば イフキトヌシに 討たしむる 頷き向かう 八十続き 細矛サホコの宮の 朝日神 拝みて到る 出雲路の 道にたたずむ 下民や 笠蓑剣 投げ棄てて なに宣りこちの 大眼 涙は滝の 落ち下る 時の姿や 八歳ぶり 思い思えば ハタレとは 驕る心の 我からと やや知る今の ソサノヲが 悔みの涙 叔父甥の しむの過ち 償のえと 嘆き歌うや 天下に降る 吾が蓑笠ゆ 血の幹 三千日間で 荒ぶる恐れ かく三度 肝に堪えて 情けより さすがに濡るる イフキ神 血のつくばえ とも涙 駒より降りて ソサノヲの 手を引き起こす 血の寄り 吾癒えることは 後のまめ 功成せば 晴れやらん 我を助けて 一途に 益人討たば 忠なりと 打ち連れ宿る 佐田宮 法を定めて ハタレ根も シラヒトコクミ 大蛇おろちらも 討ち治めたる 趣を 天に告ぐれば

琴の種類
高天たかまには 弓弦ゆつ打ち鳴らし ウズメ身の 奏でるを見て 大御神ををんかみ 桑もて作る 六弦琴むゆつこと 賜ふワカ姫 六つに弾く 葛蕗奏かだふきかなで 茗荷葉めかはひれ その琴の音は イサナギの かきかだ打つ 糸すすき これを三筋みすぢの 琴の音ぞ 形は花と 葛の葉を 葛垣(掻き)と打つ ゐすことは 五臓ゐくらに響く を分けて のアワ歌を をしゆれば 琴の音通る 五芒ゐすき打ち 六筋むすぢの琴は ねふ大蛇おろち蛇に六つの 弓弦ゆつかけて 八雲打ちとぞ 名づくなり 

ソサノヲの五男三女
イナタ姫して オオヤヒコ 生めばソサノヲ 安河に 行きて … 根に帰る 後オオヤ姫 ツマツ姫 コトヤソ生みて 隠れ住む … 再び上る 天晴れて … 宮成らぬ間に イナタ姫 … 生む子の諱 クシキネは … オオナムチ 次はオオトシ クラムスビ 次はカツラギ ヒコトヌシ 次はスセリ姫 五男三女ぞ 君クシキネを 物主に タケコを妻と なして生む 兄はクシヒコ 姫はタカコ 弟はステシノ タカヒコネ

鏡の船
クシキネ阿波の ササザキに 鏡の船に 乗り来るを 問えど答えず クヱヒコが カンミムスビの 千五百子の 教えの結ひを 漏れ落つる スクナヒコナは これと言う クシキネ篤く 恵む後 共に努めて ウツシクニ 病めるを癒し 鳥獣 穂虫払い ふゆをなす

葛垣習ひ
スクナヒコナは 淡島の 葛垣習ひ ひな祭り 教えて到る 加太カタの浦 淡島守ぞ

八雲打ち
オオナムチ 一人巡りて 民の糧 獣肉許せば 肥え募り みな早枯れす 稲は穂虫 クシキネ馳せて これを問ふ 下照姫の 教え草 習い帰りて 押草に 扇げば穂の 虫去りて やはり若やぎ 実る故 娘タカコを 奉る アマクニタマの オクラ姫 これも捧げて 仕えしむ 下照姫は 二アオメ 召して楽しむ 八雲打ち

事代主
オオナムチにはクシヒコを大物主の代わりとて事代主と仕えしめ己は出雲に教ゆるに一二三六百八十二藁のヒモロケ数え種袋土は培う御宝飢え足す糧も蔵に満つ雨風日照り実らねどアタタラ配り植えさせず

譲る琴の音
後にワカ姫 日足ひたる時 八雲五薄 葛掻きを 譲る琴の音 タカ姫を 高照となし 若歌の 雲櫛書くもくしふみは オクラ姫 授けて名をも 下照と なして和歌国の 玉津島 歳徳神と 称えます

10 鹿島立ち 釣鯛のあや

オオナムチ満つれば欠くる
二十五鈴 九十三枝年の サアヱ夏 橘枝しぼみて 太占の シチリは家漏り 激しくて 西北つねすみの国 見せしむる ヨコヘ帰りて 申さくは 出雲八重垣 オオナムチ 満つれば欠くる 理か 額を玉垣 内宮と これ九重に 比ぶなり

阿智神アチノカミ
先に御子守 オモイカネ 信濃伊那洞 阿智神アチノカミ よりて七代の 大嘗事うなめこと タカキネ安の 今宮に 多賀若宮の かふの殿

ホヒ
タカミムスビの 守諮り 出雲正すは 誰良けん ホヒの尊と 皆言えば ホヒの尊に 向けしむる 然れどホヒは 国守に へつらい媚びて 三歳みとせまで 返事かえことあらで オオセイイ ミクマノ遣れど 父がまま 帰らねばまた

アメワカヒコの死
守諮り 遣はす人は アマ国の アメワカヒコと 極まりて タカミムスビが カゴ弓と ハハ矢賜ひて 向けしむる この守もまた 忠ならず タカテル姫を 娶りつつ 葦原国を 乗らんとて 八歳経るまで 帰らねば 名無しの雉子ききす 訪い下す アメワカヒコが 門の前 桂の末に 仕業見て ホロロホロロと 鳴くを聞き サクメが告げに 名も無くて 天を鳴くやと ワカヒコが ハハ矢を射れば 胸通り 飛びてタカミの 前に落ち ケンケンもなく 血のハハ矢 タカミムスビは これを見て 咎む返し矢 ワカヒコが 胸に当たりて 失せにしを 返し矢畏る 本折や

アメワカヒコの葬儀
高照姫の 鳴く声の 天に聞こえて 父母たらちねの 早ちにかばね 引き取りて 喪屋を作りて 仮殯かりもがり 送る川雁 キサリ持ち 鶏掃きし 雀ゐい 鳩は尸者ものまさ 鷦鷯ささき御裾みそ木綿ゆふ祀り 烏塚 八日八夜悼み 喪を務む タカテルの兄 タカヒコネ 天に上りて 喪を訪えば この神姿 ワカヒコに うるり分け得ず シムの者 君は生けると 寄ちかかり 八穂玉響たまゆらと 惑ふ時 怒るアチスキ タカヒコネ 友なればこそ 遠方おちに訪ふ 我を亡き身に 過つは あら穢らしや 腹立ちと 喪屋斬り伏せる 青葉刈り 割けて神門を 去らんとす

タカヒコネとオクラ姫の歌
下照オクラ タカヒコの 怒り解かんと 短か歌 詠みて諭せり 天なるや 弟棚機の 項がせる 玉の御統 御統に 穴玉はやみ 誰に二輪 垂らすアチスキ タカヒコネぞや この歌に 続きも知れり タカヒコも 怒り緩めて 太刀納め 女男の雅を 諭さんと 応えの歌に 天下がる 鄙つ女のは ただ背訪い しかは傾ふち 片淵に 網張り渡し めろ寄しに 寄しよりこねい しかは傾ふち この歌は 後の縁の アフウスの 鴨居と結ぶ 鄙ふりはこれ

鹿島立ち
この度は タカミムスビの 臣枯れを 除く門出の 鹿島立ち 埴スキ祀る 守諮り フツヌシ良しと 皆言えば タケミカツチが 進み出で あに唯一人 フツヌシが 優りて我は 優らんや タカギ勇みの ミカツチや フツヌシ副えて 鹿島立ち

国譲り
出雲杵築に 代土かふつちの つるぎを植えて うづくまり なじり問ふなり 満誇みほこりて あざむく道を らさんと 我ら使つかふぞ その心 ままいなやや オオナムチ 答え問わんと 美保みほさきの つりきぎすの イナセハギ あめの答えを 問ふ時に 事代主ことしろぬしが みすかお 我すずかにて 父母たらちねに ホロロ泣けども たいぞ さかなとるも おろかなり 高天タカマたみの みすたい いとけまくぞ  我が父去らば 諸共もろともの 返事かえことなせば まだ一人 ありと言う間に 現るる タケミナカタぞ 千引岩 捧げて誰か ワカ国を 忍び忍びに 脅さんや 出で我が力 比べんと 取る手も岩の ミカツチが 捕らえて投ぐる 葦萱あしかひの 恐れて逃ぐる 信濃海 すわと言う時 畏みて 我を助けよ この処 他へは行かじ 背かじと 言えば助けて 立ち帰り 問えば答える オオナムチ その子のままを 二神へ 我が子去りにき 我も去る 今我去らば たれかまた あえてれなん 者あらじ 我が草薙くさなぎの このほこに らしたまえと 言ひて去る 逆ふは斬りつ 服らふは 褒めて諸守 率いつつ 天に帰れば

国譲りの論功行賞
国府こふの殿 政を執りて 詔 汝フツヌシ アワウワの 通る導き 盛んなり またミカツチは 鹿島立ち 稜威いつを表す 物部の 涙和らに 戻すより 賜ふ守部かんべは 鹿島守

オオナムチの津軽ツカル追放
時に服らふ オオナムチ 百八十守を 率い来て 忠も日陰の 涙あり タカミムスビの 立たし枝 理あれば 詔 賜ふ阿蘇辺の アカル宮 天振ゆを受くる オオナムチ アカル阿蘇辺の 大元ウモト宮 造る千尋の 懸橋や 百八十縫の 白盾に ウツシクニタマ オオナムチ 津軽ツカル大元ウモトの 守となる

クシヒコとミホツ姫の婚姻
タカミムスビの 大御言ををんこと 汝物主 クシヒコよ 国女くにつめ取らば 疎からん 我がミホツ姫 妻として 八十万守を 司り 御孫を守り 奉れ

クシヒコの万木ヨロギ追放
賜ふ万木ヨロギは 嘗め事の 千種万木よろきの 名を立たす この宮知れば 世々のため 病めるを癒す 道を分け 世継ぎは一人 ヨロキマロ

コモリ
ミホヒコの妻 スヱツミが イクタマヨリ姫 十八子そやこ生む 越アチハセの シラタマ姫 十八姫そやのひめ生む 三十六人 委ねひたせば 詔 賜ふをしては コモリ守 瀬見の小川に 禊して 茅の輪に糾す 水無月や 民永らふる 祓いなりけり

御代物主御子の名歌

ミホヒコの十八子そやこ
コモリ子の 兄はカンタチ 次ツミハ ヨシノミコモリ 四つはヨテ 次はチハヤヒ コセツヒコ 七はナラヒコ ヤサカヒコ 九はタケフツ 十はチシロ 十一はミノシマ 十二オオタ 次はイワクラ ウタミワケ 次のミコモリ 十六サキス 次はクワウチ オトマロぞ

シラタマ姫の十八姫そやのひめ
一姫はモトメ タマネ姫 イソヨリ姫に ムレノ姫 ミハオリ姫や スセリ姫 ミタラシ姫に ヤヱコ姫 コユルキ姫に シモト姫 ミチツル姫や ハモミ姫 ムメチル姫に アサ姫や ハサクラ姫と ワカネ姫 アワナリ姫と トヨリ姫 すべ三十六神 子宝ぞこれ

勝手守 嗣得る歌
勝手守 嗣得る歌 葛城カツラキの ヒトコトヌシが スヱツミが ヤスタマと生む カツキマロ 諱ヤスヒコ ミホヒコと ココトムスビの 伝え受け 御内におれば をして賜る 勝手守 これも嗣の 歌の道かな

11 三種譲り御受けのあや

多賀国府タガノコフ
二十五鈴 百枝十一穂 日高見の 御座の跡に また都 遷して名づく 多賀国府タガノコフ … 君はアマテル 嗣御子

壺を慕ひて
君は去年こそ 壺を慕ひて 御幸なる 多賀の都を 引き写し かうのタクハタ チチ姫と 十二局そふのつほねも 備われば

行き交ひ坂
御内の祝い 調ひて 神に御告げの 神使ひ 軽君の子の シマツウシ 上るホツマの ヲバシリの 坂に行き会ふ 男鹿人をしかとは 御内に侍る カスガマロ 堅間かたまを据えて 松の陰 シマツは駒を 乗り放ち 寿ぎ終えて 西東 行き交ひ坂の 名に残る 秋帰る時 また会えば 行き来の丘の 名こそ得る

勿来
かねてホツマと 日高見の 境にて待つ フツヌシが さか迎ひして うゐまみえ 伯父と甥との 盃の 漣の眺めは 岩の上 ふりはよろしき 浜庇 波打ち限り 岩洗ふ 海松布みるめあふ貝 ゆる浜を 問えば名も無し フツヌシも 名こそもがなに カスガマロ すぐさの歌に 名こそ知る フツノミタマの さか迎ひ 貝のはまぐり 会ふ御伯父 甥の見る目も 年並みの 名こそ知るべゆ 因み合ふ浜

三種
魚君門に 出で迎ふ 男鹿蓆に 立ちながら 君九重の 褥降り 六重に聞きます 詔 汝オシヒト 我が代わり 常の寄さしも 満た足しぞ 千々の春秋 民を撫で この八尺瓊の 勾玉 吾がクシヒルと 用ゆれば 中子真直ぐに 保つなり 八咫鏡は 縦に振れ 諸人のサガを 鑑みよ また八重垣は 西に預け 荒神あらば よく向けて 恵み和せて 御手づから 賜ふ三種を 受けたまえ なおも思えよ 宝物 見ること我を 見る如く 娶るチチ姫 相共に 常睦まじく 雅なせ

フツヌシとミカツチ常に侍りて~男鹿蓆を降りにけり
我二神の 道を成す 我が子つらつら 道行かば 日嗣の栄え 天地と まさに際無し フツヌシと ミカツチ常に 侍りて 政事守れ 繭御布 ヤトヨの幡と ハクワ弓 ハハ矢を添えて 賜ふのみ 男鹿蓆を 降りにけり

黄金の花
ある日ワカヒコ 代殿に 上り黄金の 花を問ふ タカギ答えて 日の君と 宮守る烏 黄金吐く ついに木萱も 黄金咲く 砂子いさこ海子うみこ然々しかしかと 眺め違わず 黄金こかね咲く 久見る山と 称えたまゐき

12 アキツ姫アマカツの文

さつさつの 声と妹背の ささ祝ふ その本折は アマカツを ハヤアキツ姫の 作り初め アマテル御子の オシホミミ 天津日嗣は 多賀国府 タクハタ姫の 御内入り その先輿の アマカツを 塩釜の守 まだ知らで 春日の守に 故を問ふ 春日答えて これ昔 天の益人 背く故 六ハタレ四方に 湧き満ちて 民苦しむる その時に アマテル神の 宣を得て 諸守の討つ ハタレ中 上つハルナが 計らんと 神息読めば 大御神 これ知ろし召し 三つの小児 手車の内 袂下 置きて立つ息 混じる故 ハタレ疑ひ 数えせず 業も乱れば 大御神 天地知ろす クシヒルに 聡くハタレが 生き謀り 御歌作れば 染め札を サツサ餅飯に 付け投ぐる サツサ筒歌

13 ワカヒコ伊勢鈴鹿のあや

春日をなし
多賀の国府 壺若宮の 暑き日の 撰み伺ふ ワカヒコに 神酒賜りて 詔 神は妹背の 道開く 我は春日に これ受けん 春日をなし ひたす 右は日高見 大君うおきみと 軽君翁 次香取 上君かんきみおよび 鹿島君 筑波ツクバシホカマ 諸も

オシホミミの禊
時に御問ひは 先に水 浴びせんつるを 魚君が 止めて真似なす これ如何 春日答えて 遺る宣 昔ウヒチニ 雛が岳 桃に嫁ぎて 初三日に 寒川浴びる ソサノヲは 氷川に浴びる これ強し 君は優しく 柔らかに 坐せば考えて 止むものかな

夫婦違えど
春日説くなり … 夫婦めをとたがえど 神ひとつ よをとは日なり 嫁は月 月はもとより 光無し 日影を受けて 月の欠け 女男もこれなり 日の道は 中節の外 月は内 男は表業 務むべし 女は内治め 絹綴り

家を治むは兄なれど
家を治むは 兄なれど 病めるか親に 適わぬば 弟に継がせて 太子あことなせ

橋得て嫁ぎ
代を継ぐ者は 譲り受け 橋得て嫁ぎ 睦まじく 子を生み育て また譲る

誰が内室と
は世に住める ところ得ず うまし雅の ゑいに居れ たゑの言葉に 求むべし をせ両親たらちは 生みの親 明け暮れむべに うまし以て 老いに仕えよ よをとには 操を立てよ いもの身は 背のおなかに 居る如く なせば操ぞ 女は名無し 家に嫁げば 背の名に が内室と 軽君も 乱れ許せば 誰内ぞ 宮に上れば 内宮うちつみや 君は恵みを 国に述ぶ 宮はおなかぞ 県守 里守ヒコも それだけの 室も殿も おなかなり 民は田畑を 治むれば 屋は背の実ぞ 日は天に 月はつちる 嫁の実は 夫一人に 向かう日ぞ

腹悪し事も無かるべし
万国苞も 生む生まぬ あれば夫婦も 国苞ぞ 生まずば他所の 女を娶れ 背のおなかに 妹ありと 腹悪し事は 無かるべし 腹病めぬ間に 妙に諭せよ

竈神
オキツヒコ 腹悪し事に 妻荒れて 操立たぬと 契り去る 父オオトシが 伊勢宮に 嘆けば … ヲセ許さねば いや恥ぢて 罷らん時に クラムスビ 留めて叱る … 親の教えに オキツヒコ 再び嫁ぎ 睦まじく 妹背の道を 守りつつ 諸国巡り … 道教ゆれば 大御神 褒めて賜る 竈神

妻と妾と
子を持てよ もし妻生まず たね絶えば 妾女めかけめ置きて たねなせよ 妾となれる の務め 妻を敬え 妾女は 星になぞらふ 星光 月に及ばず 美しも 宮にな入れそ 天の原 月並ぶれば 国乱る 妻と妾と 屋に入れば 家を乱るぞ 月は夜 妻な疎みそ 内治む 妾の言葉 な政そ

妹男背の道
子を生むもりは 生まぬ時 棄つる群星 のり乱る いんし天神 星となる これは範なす 女の姿 良くて荒るるも 醜きに よき雅あり 装いに な踏み迷ひそ 伊勢の道 天の浮橋 よく渡す 神の教えの 妹男背の 道の概ね 通るこれなり

シホカマ子無きとて
時にシホカマ 子無きとて 問えば春日の 教えには アユキワスキの 祀り主 頼みてそれの 玉返し なさば苦しむ 玉の緒も 解けてムネカミ ミナモトへ 魂分けて 神となる 貴き人の 子と生まる なれどユキスキ 玉響たまゆらぞ 末を思ひて 睦まじく 業を勤むる 伊勢の道かな この道を 学ぶところは 神風かんかぜの 伊勢の国なり

伊勢と鈴鹿
チチ姫も 後には伊勢の 御神に 仕え清かの 道を得て 伊勢と淡路の 中の洞 鈴鹿の神と 箱根神 向かう妹背の 星を去る 清かの教え 大いなるかな

14 代嗣宣言のとことあや

左は谷のサクラウチ
天地あめつちうちすがに 通る時 八百万満ちの ミコとヒコ 御内に侍り 道を聞く 諸万民も 御知をしらすに 群れ聞く時に クシマドは 日島ヒノシマる イワマドは 月島ツキノシマる イクシマと タルシマ四方の 御垣り イカスリ内の 鬼遣らひ カカンノンテン 揃う時 左は谷の サクラウチ 御代の桜の 慣らし歌 右はヲヲヤマ カグツミの とぎしぐかぐの 祝歌

カカンなす
ココトムスビが カカンなす 春日ワカヒコ 御柱を 世継ぎ御蔵に 見て結び 天御祖を 招き請う 大物主が ノンなして 万木ミホヒコ ユフハナに 八色幣の かみすすむ 一言主が テンなして 葛城ヤスヒコ 幣クシテ 四十九の花に 木の実なる あくりを得んと 諸拝む 時にアマテル 大御神 世継ぎの綾を 織らんとす

胎児の成長(露溢れ)
皐月サの頃 一巡り サツサ腹帯 五臓成す 中管通る 天の火と 父母の火と 陰を招き 三つの因み 露溢れ

カカンノンテン
ミホヒコも 立ち敬ひて 思ふこと 申せる歌に 子を恋ふる 妹背のカに 籠り国の 子守り育てん 親子の神 かく三度 詠ひますれば ヤスヒコも 立ち敬ひて 思ふこと 申せる歌に やすやすと 桜の馬場の 緑子を 勝手に掛けて 出でや生ません かく三度 詠ひますれば 詔 汝ワカヒコ 一振りに アマノコヤネと 何しあゑ 賜ふをしては 春日守 またミホヒコが 三十六子を ひたす心は 身に堪え 賜ふをしては コモリ守 またヤスヒコは やすやすと とりあくことを 業となせ 賜ふをしては 勝手守

15 御食みけよろづなりそめのあや

元素
天地の 開ける時の 一息が 陰陽に分かれて 陽は天に 陰は地となる 陽の空 風生み風も 火と分かれ 男背の胸は 日輪なる 女の源 月となる 地は埴水 かつ埴は 山里となる 埴空 受けてハは石 清は玉 山に空の 通りなる 粗金のアワ 錫鉛 清は萩金 シ白金 泥に赤金 ハ黒金 それ萩は黄に 桐は白 檜は黄赤 栗は黒 出る粗金を 蹈鞴なし 鞴に錬れよ 埴受くる 空雨水 なる草木 空は助く 水冷やす 埴は穢れする 花も実も 天のままなり 三つは食ふ 二四は食わぬぞ 石玉の 二なるは尽きず 粗金の 水埴火練りて 色変わる草木の虫の 三つの声 風に声あり 空跳ね 埴虫もこれ 

鳥獣
うつほ水の四つが 成る鳥の 火勝つは泳ぐ はにと水 火風の四つが 成るけもの 風水寄るを 名も三声 狐狸きつねたぬきぞ 火と埴の 寄るは二声 猪猿ゐのましぞ 四つ名もこれぞ

月の水
月の水 下せる露は 川の水 うつほ受くれば 雲となり ちあゆみ昇る 埴の息 昇る毬栗 飯のなり 十八トメチつゑ 雲半ば 経れば女杖に 合ひ求め 雨と降るなり 寒風に 雪と凍れど をに解ける

ツキヨミ怒り
昔中国 ウケモチの 神がウケ菜を に乞えば 日夜ひよ粳種うるたねに下す 日粳ひうるゆる うる粳田うるたの備え 夜波に 生ゆるナロ菜は はたの種 クニトコタチの 天祀る 御食はの実か クニサツチ 生むウケモチの 八代の孫 今のカダなり ウケモチが 葉月初日に なる初穂 トヨクンヌシに 奉る 神は赤白黄かしき木綿ゆうにきて 天中主の 神祀る そろの穂積の 御食みけもまた 臼つぎしらげ 初日には かゐと汁とぞ ウヒチニは 月ごと奉る オモタルの 末に穂細と なる故に ツキヨミ遣りて 粳稲種うるそたね 得んと到れば 丸屋にて 国に迎えば 継ぎ桶の 口よりよねいゐかしぐ 園に迎えば 肥掛くる 手籠てこに入れ来て スズナ汁 ももたくわえて 御饗なす ツキヨミ怒り 賤しきの 唾吐く穢れ かわんやと 剣を抜きて 打ち殺し 返事かえことなせば 大御神ををんかみ 汝サカ無し 合ひ見ずと 政離れて 揺るぎます アメクマ遣れば すでに去り カダが粳稲うるその 種捧ぐ 配人くまと帰れば 治県をさかたに 植ゆるその秋 八握穂やつかほの 成れば国富み 快く また繭含み 糸抜きて 蚕飼こかいの道も 教ゆれば カダの尊は 代々の民 守り司ぞ

常の食い物
諸民も よく聞け常の 食い物は そろは幸い 鱗魚うろこいお 次なり鶏は が勝ちて ほとんど罷る 灯の 掻き立て油 減る如く 火勝ち命の 油減る 誤り三手の しし食めば 肉凝り縮み 空肥えて 身の油減り 気も枯れて やがて罷るぞ 二月中 スズシロ食えよ 二手猪は 食えば生きても 腐り胤 かみと中絶え 忌小屋いみこやに 三歳スズシロ 白髭も はしかみ食みて 垢濯げ やや人と成る 諏訪守スワノカミ 信濃は寒く 鶏猪に 寒さ凌ぐと 乞ふ故に なお改めて 四十物あいものの 魚は四十よそあり これも三日 スズナに消せよ 水鳥を 食えば二十一日 スズナ得よ 世の鳥獣 戒めと あまねく触れし 誤らば たとえ命は 惜しまねど 血穢れ故に 玉の緒も 乱れて元に 還らねば 魂迷ひ 苦しみて 獣の胤を 合い求む 鳥も獣も 月日なし そろは月日の 潤波ぞ 故に応ふる 人は元 中子心は 日月なり すぐに罷れば 相応え 天の宮居に 返さんと 獣になるを 止むなり 我が常の御食 千代見草 世の苦菜より 百苦し 苦菜の御食に 永らえて 民豊かにと 国治む 我見る鈴木 千枝四度 我が身も 今年二十四万 いまだ盛りの 燕子花かきつばた 後百万を るも知る

ウケステメ
クスヒよく聞け ココリ姫 語れることは トコタチの 八方を巡りて 西の国 クロソノツミテ 西にあたる 名も赤県アカカタの トヨクンヌ 代々治むれど 年を経て 道尽きぬるを ウケステメ 北国ネノクニに来て タマキネに よく仕ふれば 身に応え ココリの妹と 結ばせて 山の陸奥 授けます 喜び帰る ウケステメ コロヒン君と 因みあい クロソノツモル 御子生みて 西の母神 また来たり コロ山下ヤマモトは 愚かにて 猪味ししあじたしみ 早枯れし 百や二百ぞ 玉響たまゆらに 千万あれども 日々の猪 シナ君出でて 千代御草 断つぬと嘆く 我が耳も 穢れる垢を 禊せし 永らふ道を 喜べば 枯れを嘆きて 道授く

16 孕み謹む帯のあや

橋架けなして
二十五鈴 百枝二十八穂 年サミト 鹿島の宮の 一人姫 男子なければ 鹿島君 香取の宮に 行き到る フツヌシ迎え 戸言終え 入ります後に 物語り 知ろす如くに 一姫あり 嗣子なければ 春日殿 アマノコヤネは 万に秀で 春日の守と 名を賜ふ 我願わくは 上つ君 橋懸けなして たまわんや フツヌシ答え 我が甥の ワカヒコ先に 男鹿をしかにて 逆迎ひして 会ひそめて それより今に 睦まじく 今その君の 子となさば 我ももうける 子の如く 仲をなさんと 日高見へ 鹿に答えて 帰り聞き 共に上りて 中国の 春日に到り その父の ココトムスビに 乞ひ受けて 高天に上り 諸共に これ伺えば 詔 御許し受けて 拝む後 二君帰る 元つ国 ココトムスビは 占ひて 吉日に因み 調えて 寿ぎ終えて 睦まじく コヤネは天に 仕えます

コモリの診察
いつしか姫も 孕む由 天に告ぐれば 詔 コモリにこれを 訪わしむる 姫君会ひて 御胤生む 御幡を乞えば コモリだも 御女の愛背いろせに 習ひきと 姫は返して いと否や 愛背に問わば あちもまた よそに問わんと 思ふなり 心迷えば 教え乞ふ ここにコモリの 御胤書

五つ交わりて人と成る
天地いまだ 分かざるに 初の一息 まどかにて 水に油の 陰陽分かれ 陽まず上りて 天となり 陰は後下り 国泥の 埴水分けて 埴は山 水は海なり 陽の空 風と動きて 火と化ける 男背の胸元 日と丸め 天近く巡り 陽に配る 妹の源 月と凝る 地に近き故 陰に配り 空風火と 水埴の 五つ交わりて 人と成る 後は妹男背 嫁ぎ生む

天元に招く(露溢れ)
天元に招く 荒魂 月の和魂にこたま 父母たらちねの火と 三つ交わりて 心意気 成りて水通ふ 露溢れ

姫御子よ
コモリは姫の イキス診て チ腹を撫でて 笑みす顔 イキス足らぬは 姫御子よ これ殿君の 常語り

タチカラ吾子を招かんな
我姫御子を 儲けらん タチカラ吾子を 招かんな 我が喜びの 門開き しかば儲けの 胸の花

男女産み分け術
我が喜びの 門開き しかば儲けの 胸の花 実なる男子をのこは 日の御霊 まず籠りの 御柱に 向かひ手に居て を招き まず巡りて 女を包む 女が狭まりて 生え出づる 花茎がシヂ 男の初め 男子生むなり の子には 女の女より受く 月御霊 宮を潤し 背き居て 後受くる日の 交わりは 女まず巡りて 男を包む 男はシヂならず 玉島が 内につぼみて 女の初め 女の子生むなり

民は子さわに守殿の子無きは如何
またの問ひ 民は子さわに 守殿の 子無きは如何 コモリまた セオリツ姫の 慎みに 民のなす業 身を砕き 働くとても 心向く 油盛んに 子を得るぞ 国守などは 民のため 心尽くして 油減り 子胤稀なり 高き身は 下が羨み 叶わねば 掟を恨み 君誹る これも仇なり

アオメ・サムメ
内宮の アオメのいぶり 気を冷ます そばの事代 忠なれば これをサムメが 恨むなり 君が恵みも つい忘れ 恨み妬むの 庭桜 咲かずば知れよ 万民の 恨めん女殿 万桜 天に植えてぞ 愚か女が 妬むイソラの 金杖に 子胤打たれて 流れゆく あるはカタワと なすイソラ 妬むその息 一万三千 群れて鱗の 大蛇おろちなす

玉島の暇
玉島の暇 窺ひて 子壺に入りて 孕み子を 噛み砕く故 胤成らず カタワ生むなり 貧しきは 及ばぬ富を 羨みて 恨みのアタに 胤滅ぶ 人を妬めば 日に三度 炎食らひて 身も痩する 妬む妬まる みな咎ぞ

五色の花
たとえば侍る アオメたち 五色の花ぞ その君の 心青きは 青に愛で 黄なるば花の 黄を愛でし 赤きは花の 赤に愛で 白きは花の 白に愛で 黒きは花の 黒に愛す 同じ心に 合い求む 君の心と わが花と 合ふや合わぬや あえ知らず てれば恨むな あけらるも 上も辺もゆらず 求むなり てれば召すとも 幾たびも 畏れて後は 恨み無し 慎みはこれ 諸姫ら まさに知るべし 色の花 ひとたび愛でて 早や散れば 塵と捨てられ 他所(四十)の花 召す時はその 花盛り つらつら思え 満の花も 人も移れば 散る花ぞ 誰指し恨む 人も無し もし誤れば 胤断ちて 見咎めあれど その人は まだ太刀持たず 杖打たず 人打ち殺す 故も無し

イトリヤマ
孕みの帯は 葛城の 嗣社に 御胤祈る 時に天より ニイトリの 一羽落つれば 天つ宣 これはイフキの なる紅葉 化けて葛城 イトリヤマ 羽先見れば 二十四筋 数備われど つねあらず 諸鳥見れば 十五に割け


日高見に 鶴奉る 羽先見れば 二十四なり かれ諸羽を 撚りただし 雄鶴をたてに 雌をよこに ケフの細布 織り以て 四十八備わる 御孕帯

障れど帯に調ひて
母のイサナミ 長孕み 九十六月経て 生みたまふ アマテル神ぞ ハタレマの 障れど帯に 調ひて 四十八備わる そのためし

姫君障らねど
てれば姫君 障らねど イキス肥立ちと なす帯ぞ

羽二重
時にミカツチ 訝しく イキス肥立ちと なる帯の 業にイキスは 何処へか 時にコモリの 答えには 昔トヨケの 宣ふは 天より授く ケフの帯 天にのとりて 父の丈 比ぶる帯に 母の息 肥立ちとなるは 頂くなり 天より頂き に編みて 連なり育つ 子のためし 父の恵みは 頂く 母の慈し 乗するはに アマテル神も 忘れじと 糸二十四筋 撚り合わせ 雌雄めを羽二重はふたえの 御衣となす この御衣召して 朝毎に 天地祀り 父母に 継がう御心 その君も これと申せば ミカツチも 喜びケフの 布織らん 曰く羽二重 あらざるか 答えて開く 宝殿 内より出づる 羽二重は 君の賜物 二衣あり なす故知らず 天の衣を 着るも畏れて 朽ちんとす 今幸いの 教え得る

姫はコヤネの丈知るや
姫はコヤネの 丈知るや 知れり一丈 二尺五寸ぞ かね聞く上の 御丈と 生まれ合ひたる 御恵みと 諸宣えば イ女が身に いとありがたと 笑みす時 父喜びて 羽二重を 身丈の帯と なしたまふ 孕帯なせば 身のイキス 肥立ちとなりて

これは勝手がよく知れり
姫の問ひ 生む時如何 コモリまた これは勝手が よく知れり 我帰る後 下すべし

タケミカツチの二剣
ある日御殿に 御饗して コモリを招き 物語り 我が生まれつき 身の丈も 一丈六咫あり 力業 八咫の人らの よろきの 岩をも投げて ウツロイも 拉げば賜ふ 二剣

我は赤子の
今ふし見れば 翁守をきなかみ 盛かるコモリと 比ぶれば 我は赤子あかごの 道受けて 人成る代えの 石鎚いしつつを 勧め敬う 時コモリ 驚き我は 道のおと コヤネの親も 我が親と 返物かえもの受けず ミカツチは なお恥ぢ勧む コモリ見て 剣を拝み 戴けば ミカツチ笑みて くらなして 政絶えんを 姫ありて よつぎ道聞く 子は宝

息栖宮
イキスも知れば 息栖宮 コヤネとヒメと ここに置き 我は後屋に フツヌシと 常陸帯成し 授けんと 語りとことも 調ひて コモリは天に 帰りけり 後に香取の 宮に行き 語りて共に 日高見に 告ぐれば君も 喜びて ケフの細布 織らしむる 高天の原の 仮宮に 帯賜れば 諸が名も 常陸の宮と 物部が 愛でて造れる 鹿島宮 コヤネとヒメと 息栖宮 香取と鹿島 息栖宮 賜う常陸の 帯の名も 五幡帯とぞ

月の位
丈八咫は 八十万男子 なれ丈ぞ 孕みのうちの 遊びには 豆を拾えよ 忠なるぞ もしも十二子を 生む母は 月の位ぞ 一孕み 三つ子を生めば 三光の 幸ひありと 天に告ぐ

コヤネに授く
あまねく触れて ホツマ国 治まる後に フツヌシの 香取の道を 悉く コヤネに授け 隠れます 鹿島の道の 奥もみな コヤネに授く 春日殿 玉返しなす 奥法も コヤネに授く この故に 四方の政も 自ずから 一人に着けり

姫は姫なり
鹿島守 姫生む時に 母が名を 乞えど名づけず まれ一人 姫は姫なり また生まば 紛れんために 諱せん まず姫神と ばかり言う 故にコヤネも 代々宣りと 初は姫君 月の名も 妙の奥法 慎みの ヒタチ帯こそ いとも畏し

17 神鏡かんかがみ 八咫の名のあや

天地も 内外うちとも清く なる時に 大内をうちに侍る 臣民も 八咫鏡を 拝む時 アマノコヤネが 慎みて 八咫と名付くる 故を乞ふ 時にアマテル 詔

ムの民女
我聞くいにし 神の屋は ムの民女たみめより 室屋建つ 民に教えて 屋根をなす またヤの民女 社なる いま宮殿に 民をやつは館ぞ

タチカラヲ谷を出て玉響聞けば
またタチカラヲ 谷を出て 玉響たまゆら聞けば 水知れり 喩ひイソラも 竜犬も 拉ぐ心地で はんべりき

ミの葦原も
時にアマテル 詔 むべなり汝 四方巡り 培ふ道に 糧増やし 暇あらせで 国巡り 四の葦原も 瑞穂成る 神の御歌に 培ふば ミの葦原も 瑞穂成る 民と成せ臣 臣と成れ民 諸人に アマノコヤネの 申さくは 御歌の味は 末々の 民も導き 素直なる 業も教えて 培えば 家も栄えて 稲増ゆる 瑞穂と成せる 神歌ぞ かくの教えに 導きて 民も気安く 賑わせて その国保つ 者あらば 末民とても 上の臣 必ず璽 賜ふなる 御歌なりけり かけまくも いと畏れみの 御歌と 三千臣彦も 諸声に 八百万民は 百千声 あなありがたや あなにえや あな嬉しやと 拝み去る 八咫鏡の 御名の文 いと恵み成り あなかしこかな

18 オノコロとまじなふのあや

オノコロ
人に生まれて 蠢くに 常世の道を 教ゆ神 クニトコタチも のり巡り 国輪に八方を 何方と 生む国すべて オノコロぞ

トホカミヱヒタメ
国常立の 八下り子 なにクニサツチ 八方主と なりてトホカミ ヱヒタメの 国に生む子は 三下りの 君臣民ぞ トヨクンヌ

ハタタ神鳴り(2)
ハタタ神鳴り 止まざれば ホオコホさわひな居りと 祈り留むる 御残りと 童の額 に押せば 襲われぬ法 オノコロあや

19-1 乗りのり 一貫ひとぬきあや

右サクラウチ
二神の 御代の齢も 安らかに 近江の多賀に 居まさんと 御子ワカヒトに 天照らす 日嗣を譲り ます時に 左の臣は オモイカネ 右サクラウチ カナサキは 日を写します おやとみ カダは受持うけもち ヲバシリは 馬屋治めぞ 君臣と 心一つに 司れ

19-2 乗りのふみ テルタエのあや

天より伊勢に
二十五鈴 百三十枝の 年サナト 春の初日に 世の日嗣 御子オシヒトに 譲りまし 天より伊勢に 下り居ます

真那井に乗り御幸
桜庭成れば またの望 黄金蹄の 黒駒を タカギが牽けば 奉る 御壺真那井に 乗り御幸 しばしば政 聞し召す これ空曇り あらざりき

新治なる乗り法召せば
年経て後に ニニキネの 御幸ホツマの 新治なる 乗り法召せば ヲバシリが 技を受けたる タカヒコネ

まず知る馬の
まず知る馬の 生まれつき あらまし説かん 日高見は 肉たくましく 緩やかで やや一歳に 乗り馴るる 路道の後は 荒乗りや 筑紫の馬は 健やかに 緩く馴るるも 歳半ば 馳せ伊豆駈けも 長馴れや また越国は たくましく 肉長馴れに 急ぐ故 三四月馴れて 伊豆駈けも なれど急ぐは 怪しあり 南の馬は 小さくて 歳馴れ早く 根が薄く 功成らず しかしまた 強き弱きも 胤により 毛色に分かつ 良し悪しも 育ちによりて 品変わる よく乗り馴れて これを知る

二荒守ふたあれかみ
タカヒコネには 二荒ふたあれをして賜えば 子も孫も 馬の君なり 薬には ヒトミコマヒサ 卯花葛 辻一重葉は 豆箱ぞ 伊豆ヲバシリと タカヒコネ 二荒守ふたあれかみと 如月シヱ 祀る乗弓 並ぶ頃かな

20 皇御孫すめみまこ 十種とくさ得るあや

政休まん
年キヤヱ 弥生春日の 年置いて 政休まん 断りに

テルヒコ下さんと
天照らします オシホミミ 御子はクシタマ ホノアカリ 諱テルヒコ 下さんと 父自らの 告げふみを 香具山鹿に 奉る ふみに申さく 自らが 葦原国を 治めんと 装ふ間に民 集まりて ひた留むゆえ テルヒコを 降すべきやと 伺えば 伊勢の御神 聞し召し 許せば鹿の 返事かえこと

十種宝
ここにト祖の 十種宝とくさたからを 授けます 沖津鏡と 辺津鏡 叢雲剣 卯成うなるたま 玉返たまかえしたま 千足ちたるたま 道明みちあかしたま 大蛇おろち領巾ひれ 母蛇絞ははちしむ領巾ひれ 木葉このは領巾ひれ この十種なり

数えて振るえ
傷むこと あらば一二三四 五六七八九 十まで数えて 振るえただ ゆらゆら振るえ かくなせば すでに罷るも 蘇る 振る宣言ぞと 詔

ホノアカリの供守
中国の守 拒まんを 防ぐ供守 カグヤマは ヤマスミの二子 フトタマは ミムスビの御子 コヤネとは 春日殿の子 クシタマは ミムスビの四子 ミチネとは カンミの曾孫 カンタマは ヤマスミの御子 サワラノの アカツチの孫 ヌカドとは カガミツコの子 アケタマは タマツコの子ぞ ムラクモは ミチネが弟 ウスメヒコ ミケモチの孫 カンタチは 子守の初子 アメミカゲ タタキネの弟子 ミヤツヒコ カナサキの御子 ヨテヒコ 子守の四子 アメトマミ ヌカタタの弟子 アマセオ カンミの玄孫 タマクシ セオの従兄弟ぞ ユツヒコ サワラノの弟 カンタマ タマクシの弟 ミツキヒコ カンタマの弟 アヒミタマ タカギの四子 チハヤヒ ヨテの弟五子 ヤサカヒコ 子守の八子 イサフタマ ツノコリの子ぞ イキシニホ オモイカネの子 イクタマ タカギの五子 サノヒコネ ヒコナの子なり コトユヒコ ハラキネの弟子 ウワハル ヤツココロの子 シタハル ウワハルの弟 アヨミタマ タカギの七子 アマツマラ カンミの玄孫 アカマロ ツクバソソの子 アカウラ シホモリの二子 マウラ ヤマスミの五子 アカホシ カツテの弟 総三十二 皆乗り馬で 守り行く 御子は八房の 出車

五伴
二十五の侍人を 五伴の 守る宮造 アマツマラ カンミの玄孫 アカマロは 筑波ソソの子 アカウラは シホモリの二子 マウラとは ヤマスミの五子 アカホシは カツテの弟 この五人 大物主は 五組の 物部二十五を 率き添ふて 供人すべて 八百六十四

耕し欠くと
日高見を出て 鹿島宮 その道民の 出迎かひ 耕し欠くと 聞こし召し

磐船勧むべし
伊勢に侍る 御子の弟 キヨヒトに神 詔 なれとチカラと 早船に 行きて磐船 勧むべし

タチカラヲ鰐船に乗り
よりて御孫と タチカラヲ 鰐船に乗り 上総の 九十九ツクモに着きて 香取宮 神言かんこと宣れば

マウラを召して
ホノアカリ マウラを召して うら問えば マウラ太占 アキニ取る 東風にも解け 罪逃る 今春なれば 西の空 民疲れ無し よしよしと 御言定まる

日高見の君を拝みて
ニニキネと タチカラと行く 日高見の 君を拝みて 由を告げ 後に御孫と タチカラと 伊雑イサワに帰り 返事かえこと

伊豆の岬に帆を上げて
時に皇御子 磐樟の 船を設けて マラが叔父 アマツハハラを 船長に マラは舵取り アカウラを 船子司に アカマロと アカホシ物を 添え籠に マウラは風見かぜみ 九十九より 伊豆の岬に 帆を上げて 沖走る目は 大空を 遥かに駈けり

鴨にて到る斑鳩イカルガ
御熊野の 宮居拝みて 難波なみはより 鴨にて到る 斑鳩イカルガの 峰より鳥の 白庭に 天の磐船 大空を 駈けり巡りて この里の 名をも空見つ ヤマト国

スガタ姫
宮屋みやつや成りて 十二の守 スガタが娘 御后に なして歌詠み 葛垣の 琴を楽しむ

烏飛ぶ
斑鳩の 宮に遷りて その明日か うてなに四方を 望む折 白庭山に 烏飛ぶ 熊野と思ひ 宮遷し 時にコヤネは 早かれと 大物主も 留めける フトタマが言ふ かがなえて 君の思すを 留めんや 香具山も言ふ 熊野なる 飛鳥遷せば よきためし すでに極まる 物主は 怒りて曰く フトタマは 君の殿祖父とのおぢ 臣翁とみをきな 昨日きなふ万歳よろとし 君祝ひ 今日また変わる 宮遷し 万千は遠し 一年ひととせも 経ざるを責めば 世の恥は 汝の心 穢れより 君肖らば 我居らず 茜炎に 罪すとも 麿金食めど 穢れ得ず かく言い帰る 諸諮り ついに遷して 飛鳥川 くるわに掘りて 禊なすかな

21 新治宮ニハリミヤ 法定のりさたあや

新治宮
二十六鈴 十七枝二十三穂 弥生初日 キヨヒト御子の 詔 大物主が 親の国 出雲八重垣 法治む その元則は 先神の 功なれば 我も事 立てんと四方を 巡るうち 良き野を得たり ここに居て 田を開かんと まず建つる 名も新治宮 太占に 宮造り法 定めよと 大物主に 詔 物主受けて 法定む まず杣をして 木を切るは キヤヱの日良し 手斧初め ネシヱ礎 柱立て 中隅柱 南向き 北東西 巡り立つ 島からふかと 中隅に よりて定むる 棟上げは ツアヱに祝ひ 赤こわ飯 十三膳天 日と月と 八膳天元 棟に据え 餅三百六十六 弓矢添え 柱に祀る 五臓の五 トシノリタマメ 六腑の七 皆一夜神酒 賽を振る 棟と柱根 槌を打つ 時に匠は ムの民女 その宣言は 天地の 開く室屋の 神あれば ゑやは弱かれ 主は永かれ かく三度 宣して餅を 投げ散らす

イクシマ・タルシマ
先に宮場に オコロあり モチウコに似て 炎吐く 民ら恐れて これ告げる 物主問えば 答え言ふ カグツチ竜を ハニヤスに 万子生ませど 竜成らず 穴に憂ふる 願わくは 人成したまえ 物主が 申せば御孫 詔 汝受けべし 天の神 ヤマサを生みて 御釜守り オフカンツミは 埴敷きて 祀る屋造り シコメなし 兄弟のイクシマ タルシマと 神名賜えば 守もなし 我が新治の 新屋あらや建つ 中柱なかつはしらの 根を抱え また四所の 守も兼ね 共に守れよ

クシマド・トヨマド
天の御孫は 新治の 門の高屋に ヤマサ神 祀るは民の カラフシマ 我がクシマドと トヨマドと 常に守りて 鳥を飼ふ 民のから枯れ あらじなと

烏だも良きいお受けて
烏だも 良きいお受けて 喜べり 憂へば憂ふ 己がカを 告げず揺らすは 烏なり

鳥居
鳥より先に 知る神の 締は鳥居ぞ これ神の 御子に教えて いたわりを 知らねば神は 鳥犬ぞ ホツマを並めて 鳥居なりける

フトタマをして祝わしむ
宮造り 葺き甍まで みな成りて 御孫ニニキネ 筑波より 遷ります日は ヲコヌシの 二十五物部 膳なす 春日もろとも 乗り添ひて 御孫の御幸 守り行く この日飛鳥の 宮代と フトタマをして 祝わしむ

ハタタ神鳴り(3)
君夜を込めて 十里来て 新治済は かき曇り ハタタ神鳴り 垣破る ヲコヌシ曰く 渡座を 民も祝ふに 情けなと ハハ矢を射れば シナトベに 吹き払ふ時 道を向かひ ともに入ります

社拉げと
春日に宣れば 太占の アコケは仕業 ウツヲ神 時詔 ウツヲ神 社閉ざして 天に告ぐ 天の詔 情けなき 社拉げと 時御孫 璽捧げて 後を乞ふ 天はた悪しく 許されず また願わくは ウツヲ神 たとひ一度 事乱れ さらにあらんや オオナムチ 一度堕ちて 日隅君 その子物主 忠をなす これには似ずも ウツヲまた 後殊立てん 許したまえや 大御神 許す御言は 兄弟の末 ヤナイ隠ろひ ウツロ守り 東北の一木を 居社にせよ ヲヲコヌシ 御孫に申す 我が親の 日隅の君は 喜ばし ウツヲも神の 喜びと 乞えば御言ぞ 鳴る神の 主東北守り ウツロヰの ヲマサ君とぞ 年徳に 社賜る 瑞垣を 直す匠ら ウツロヰの 社木あれば 恐るるを ヲコヌシほかの 木に移し 繕ひ成りて また戻す これ仮移し 障りなし またウツロヰの ヤマサ守 兄弟のほにより つき守る 然れど新屋 造る時 強く咎むる これにより またヲコヌシに 問わしむる ヲコヌシ曰く 汝また 民の新屋を 咎むるや ウツロヰ答え ヲタ伏せず 庭や穢れを 我に出す 故に咎むる ヲコヌシが 申せば御言 これ汝 守離るるを 我乞ふて また守となす 我が民を 故なく咎む 民は田を 肥しそろ植ゆ 汝知れ コワを庭とす かれ庭屋 知らで穢るや これにより アヱよりヤヱの 中五日 守を離れて 遊び行け この間五日に 屋造りす これも汝が 名の誉 辞ばほとんど ウツロヰの 守屋離れん これにより 民治まりて 六万年 筑波の宮に 遷ります また六万年 二荒の 伊豆の神とて 六万年 経てまた元の 新治宮 伊豆大神の 殊大いかな

22 オキツヒコ 火水の祓いのあや

オコロ
カグツチ神と ハニヤス姫 因みて万の オコロ生む 竜ならざれば 棄てらるを ヲヲクヌ神の 告げにより 天の御孫の 詔 オコロの神よ 春は釜 九咫そこにあれ 夏は門 三咫そこにあれ 秋は井戸 七咫そこにあれ 冬は庭 一咫そこにあれ 新宮の 敷きます国を いかすりて 一振るなせよ 住吉すみよろし オコロらば オトオコロ 形見に代わり ひめもすに 宮のうてなの くろところ 中柱なかつはしらに住みて ヤマサの神と 諸共に 代々のカマドを 守らしむべし 誓いには 身柱立てよ この時に 天つ御言の 定まれば 赤白黄かしき木綿ゆうみてぐらに 火水を結ぶ オキツヒコ ここも高天の 原なれば 代々に誓ふる 宣言のりこち

23 御衣みはさだ剣名つるぎなあや

剣の基は 天の矛 クニトコタチの 代にはまだ 矛なき故は 素直にて 法を守れば 矛要らず 心ゆきすく 神の代は 升万年の 寿も ウヒチニの代は 厳かに 飾る心の 寿も 百万年ぞ オモタルの 民ときすぐれ 物奪う これに斧もて 斬り治む 斧は木を切る 器ゆえ 金練りに矛を 造らせて とき者斬れば 嗣無し 民の齢も 八万均れ 食にもよれども 昔あり 万鈴も減り 百年より また万に増す これ鈴を 結ぶ神なり 畏るるを なつみと斬れば 子胤絶つ げに慎めよ

トと矛
天の神 嗣無く政 尽きんとす かれイサナギに 宣ふは 豊葦原の 千五百秋 瑞穂の田あり 汝行き 知らすべしとて トと矛と 授け賜る トは璽 矛は逆矛 二神は これを用いて 葦原に オノコロを得て ここに降り 八尋の殿と 中柱 立てて巡れば 大八島 通る真の トの教え 千五百の葦も みな抜きて 田となし民も 賑わえば ヰヤマト通る ヤマト国 マトの教えは 昇る日の 本なる故に 日の本や 然れどヤマト な棄てそよ

天逆矛
また矛も 宝の故は トの道に 国治むれど その中に 横聞く者は 己が身に 合わねば道を 逆に行く 一人悖れば 友を増し 群れ集まりて わだかまり 道妨げば 召し捕りて 糾しあかして 罪を討つ 治むる道の 乱れ糸 切り綻ばす 器物 天の教えに 逆らえば 身に愛く天の 逆矛ぞ

益人
細矛サホコの国の 益人が 道を乱れば これを召す 糾せば殺す 罪なるを を得て逃る またのカに ついに天より 詰みせらる

機法定む
かれカ起こりを たやすくに 許せば民も みな驕る これよりハタレ 現るる 例えば川の 源の 一滴より 流れ増し 野田に溢るる 人もこれ 一人許せば 万群れて その道悖る 差し置けば ついには四方の 乱れなす これ源を 糾さねば 大水なして 防がれず これ知らずんば 治まらぬなり 我見るに 人意は変わる 驕りがち 減りには難く かれ機の 織法定む … 夏は幣 生みて布織り 冬はユキ 撚りて木綿織り 着る時は 上下も世々の 意も安く 飾るを見れば 賑わえど 内は苦しむ その故は 木綿布絹を 染め飾る これなす人は 耕さで 暇欠く故に 田も荒れて たとひ実れど 乏しくて やや人数の 糧あれど 元力得ぬ 稲の実は 食みても肥えず ようやくに 糧足らざるぞ 誇る代は 天の憎みに 雨風の 時も違えば 稲痩せて 民の力も やや尽きて 世に苦しむぞ 飾りより 驕りになりて ときはかる 果てはハタレの 国乱れ 民安からず かれ常に 民の意安き 木綿ゆうを着る アサコとスガの 羽二重は 民の意安く 永らえと 日に祈る衣ぞ 錦織にしこりは ユキスキ宮の 大嘗めの の時のぞ 綾織は 埴の社の 新嘗会さなめゑに スキ祈る衣ぞ この故は 綾錦織は 筬歯おさは八百 一歯に四垂り 三千二百垂 これ葦原の 豊の数 棚機神と 田畑神 同じ祀りの 綾錦 三千垂の経に 飾りを 掛けて四つ六つ 踏み分くる 柳綾なる 花形は 描きマノリに 当て写し ツウヂヨコヘに 吊り分けて 織姫飾り 踏む時に ヨコヘに分けて ツウヂ引く かひ貫き投げて 筬巡る 綾錦織も これなるぞ 高機法の あらましぞこれ 政事 民の妹背は 筬一歯 五家ゐや組む長は 一手指 八十手侍一人 粗長と なるを弟らが 契りまく 八十粗侍置く 県主 これ一読みの 物部ぞ 八十侍の国に ツウヂ置き 物部たてを 教えしむ この国造くにつこに ヨコヘ十人 添えてあまねく 道分きて サカ臣アタヒ ツウヂ経て 直ちに告ぐる 天の目付 これアタヒらぞ 物部を 八百人束ぬる 主はこれ 大物主や そえムラジ 事代主と助けしむ 副の二人は と飾り 大物主は 機の主 かれサカを読む 十のカまで あれば粗長 組を呼び 十内は叱る 十の外は 県に告げる 県主 九十内は杖 ケタのカは カトヤに入れて 国造に 告ぐれば諮り ケタのカは 杖打ち県 追いやらひ 二ケタならば 国を去る 余れば告げる 物主の 正し明かして 二百のカは 島に流離す 三ケタカは 髪爪抜きて 入墨し 天に渡れば 身を枯らす 罷るの罪は 物主の 御言を受けよ 物部ら 確と聞けこれ 我がままに 民を斬るなよ 民は皆 なお我が孫ぞ その民を 守り治むる 国神は これなお我が子 国神は 民の両親 その民は 国神の子ぞ 我が子でも 親が斬るなよ … 生まず女は 他所女ぞ兄も 背も枯らす … 生まざるは 他所生めばあに … 天法を 民一組が 乱れても 筬巡らねば 機織れず かれ治むるは 機の道かな 時にまた 大物主が 申さくは 昔乱れず 驕らぬを 粗子を着ては いずくんぞ 君笑み曰く 汝もと ただち思えど 後の代に いや治まれば 飢え知らで 驕る楽しの 満つる時 飢え遠し頃は 実らずて 真に飢える これ予て 定むる衣法 鑑みぞ これ慎めよ

アマメヒトツ
昔なる 青人草も そに増えて 道を触れても 届きかね 梢破るる もといかや 時矛振らば すみやかに 通らんものと 剣成す その時触れて 金練人かねりとを 十人に剣 造らしむ 中に一人は 秀でたり 刃鋭く 水を割る この金練人に 詔 汝が刃 よくきぞ 然れど右左まての 活き枯れを 知らず教えん しかと聞け の目は春の 活きる頃 左の目を入れて 錬る剣 活き身に近く 枯れ疎し もし誤るや 恐るなり の目は秋の 枯らす頃 右の目を入れて 錬る剣 枯れ身に近く 活き疎し 罪ある者を 枯れと言ふ 無きは活きなり の剣 枯れ身を好み 活き畏るこ れぞ治むる 宝物 これ打つべしと 宣えば 畏れて百日 物忌みし 右目みぎめ一つで 錬る剣 八振上ぐれば 詔 今この剣 むべによし 我が御心に よく適い 御代の治まる 宝物 名も八重垣の 剣とぞ 金練りを褒めて 賜ふ名は アマメヒトツの 神となる

身の程も忘れて
もし民驕り 身の程も 忘れてついに 剣受く 受けさせじとて 身の垣よ

ハタレが業は
時にまた 大物主が 申さくは ハタレ破るの 名をもがな 問えばアマテル 詔 ハタレが業は 近づけず 弓矢に破り 近づけば 太刀打ち払う 身の垣ぞ

大国主ヲコヌシ
むべなるや クシヒコ汝 御孫より 大国主ヲコヌシ神の 賜ふ名も まだ足らず我 二神の 賜ふ逆矛 幸ひに その気を得れば 譲るなり 生まれ素直に ヤマト道の 教えに適ふ 皇の 八重垣の翁 賜ふ名も ヤマトヲヲコノ ミタマ神 時にクシヒコ 畏れ伏し しばし答えず 物部ら さ受けたまえと 勧むれど また項垂るを コヤネまた な深畏れそ 受けたまえ 我若けれど コモリとは 代々睦まじく 君のため 中子一つに 忠なさん 時にクシヒコ 敬いて 受け頂けば

皇孫の羽臣
君はまた フトタマカグに 詔 孫テルヒコの 羽の臣 フトタマは代々 政執れ またカグヤマは 物主よ 六十の物部 司り 民を治めよ 時にまた コヤネコモリに 詔 今キヨヒトの 羽の臣 コヤネは代々の 政執れ コモリは代々の 物主ぞ 共に守りて 民を治せ また皇孫に 詔 汝ら政 怠らず ホツマなる時 八咫安ふらん

三諸山ミモロノヤマに洞掘りて
クシヒコは ヤマト山辺に 殿造り 代を考えば 歳すでに 十二万八千百 際あれば 後の守りは トヨケ法 玉の緒入れて 皇の 代々守らんは 天の道 三諸山ミモロノヤマ 洞掘りて 天逆矛 提げながら 入りて静かに 時を待つ すぐなる主を 見分けんと すぐな印の 杉植ゆる

ニニキネ御子の守り
ヲコノミタマの 神はもと 日輪分け身の 言宣も 天に継ぐとて コモリ守 副物部は トマミなり 事代主は ツミハなり ニニキネ御子の 守りなりけり

24 肥国こゑくに原見山はらみやまあや

伊豆の鴨船伊勢に着け
そもそもに 御孫ニニキネ 新治宮 筑波に治む 歳すでに 三鈴二千五十 つらつらと 思せば民の 増ゆるほど 田は増さぬゆえ 糧足らず 平場の小田は 水絶えず 高田は雨の 降らぬ年 種を滅ぼす 川上の 水を筧に 運ばせど これも朽つれば 井堰建て 堤築きて 山水を 取りて高田を 開かんと 伊豆の鴨船 伊勢に着け 巡り乞えども 大御神 許さずここに 仮住まい

日読み
時にアマテル 詔 八島巡れと 触れたまふ 時二十九鈴 五百の一枝 三十八如月 一日と むめの花見の 御饗して 日読みの宮の 門出宣 昔日読みの オモイカネ 暦作りて ここにあり 後ムラクモに 譲り置く ムラクモ天の 御供に 飛鳥に侍る タチカラヲ 親の後とて ここにあり 御巡りの御供 乞ふゆえに ムラクモ召して 詔 汝ムラクモ 暦なす 鏡曇れば 賜ふ名は アメフタヱなり フタヱ今日 御饗をなせば 門出に ミハタのトメの 御書を 御孫に賜ひ 御鏡を コヤネに賜ひ 御剣を コモリに賜ひ

三種譲り
宣ふは 先に三種の 宝物 御子オシヒトに 賜ひしは 兄御孫得て フトタマと 香具山羽の 臣となる

右鳥かのとり
コヤネ物主 キヨが 羽の(をみなり 君と臣 心ひとつに 右鳥かのとりの 形は八民 首は君 鏡は()(はね)()() 物部は足 鏡臣 末滅ぶれば 民離れ 日嗣踏まれず 剣臣 末滅ぶれば 物部割れ 世を奪わるる 八咫臣は そろふ春の 民業を 鑑みる目ぞ 垣臣は 邪を枯らし 物部の 力守る手ぞ この故に 三種を分けて 授く謂は 長く一つに なる由を 文に記して 御手づから 書を御孫に 授けます セオリツ姫は 御鏡を 持ちて春日に 授けます ハヤアキツ姫は 御剣を 持ちてコモリに 授けます 三度敬ひ 皆受くるかな

伊勢より発ちて
然る後 三種宝を 櫃に入れ 徴は榊 先駆りは タチカラヲなり 次カツテ 大物主と 三種櫃 八房御車 次コヤネ 籠馬八十の 物部ら 伊勢より発ちて 飛鳥宮 これより三津の 西宮 まず神崎の 大井掘り 真那井に到り 幣納め

越のアチハセ
コヱ根国ネノクニ アチハセが 峰輿みねこし捧ぐ これに召し 白山峰シラヤマミネを めくるに 斜めにならず この輿こしは が作れると のたまえば ココリ曰く 孫がなす いもウケステメ 赤県アカガタに クロソノツミと 生む御子を コロヒツクニの きみとなす クロソノツメル 君の母 険しき峰の 越す時に 峰輿作り 子を育つ 今ここに来て まみえなす 御孫喜び 国は越 山は峰輿 その返に みちみの桃を 賜れば 花見の桃は 稀なりと 国苞となす


弥生望 御饗のむめに 君笑みて 梅に三種の 門出も 梅に輿得て この御饗 天の徴と 折り翳し


到る高島 楽浪さざなみの 桜も良しと 折り翳し 熊野万木野ヨロギノ 田にせんと オオタミシマが 井川成す

サルタヒコとウズメ(卯)
乙玉川の 白砂に 昼寝しておる 道股守 身の丈十七尺 面案山子 鼻高さ七寸 目は鏡 供の八十守 恐るれば 御孫ウズメに 詔 汝目勝ちに 問ふべしと ウズメ胸開け 裳紐下げ 嘲笑い行く 道股守 覚めてかくする 何故や 曰く御孫の 御幸先 かくおるは誰ぞ 答え言ふ 神の御孫の 御幸なす 卯川仮屋に 御饗して 合ひ待つ永田 サルタヒコ ウズメまた問ふ いづれから 行くや答えて 我行かん また問ふ汝 知るや君 行きます所を 答え言う 君は筑紫の 高千穂ぞ 我は伊勢の南 永田川 汝我が名を 顕さば 我も致さん 返事かえことす 御孫喜び 卯の花も また翳し行く

ヨロイザキ
サルタして タケの磐座 押し放ち 稜威いつ道分ちわきの ヨロイザキ タケや鏡の 水尾の土 積むミカミ山 井堰築く サルタを褒めて 水尾の神 好むウズメを 賜りて その名顕す 猿部らと 神楽男の 君の基なり 詔 水尾の道分きも 田はここに これ鏡なり 仮宮を 瑞穂と名づく 多賀に行き 幣を捧げて

昔春日にうるり得て
美濃に行き アマクニタマの 喜びも 昔春日に うるり得て 生むタカヒコネ 捧げ物 各々真桑 一籠と 八十喜びて

富士八海
雲路分け 信濃諏訪より 導けば 原見山から 四方を見て 裾野は広し 水を埋み 裾野田にせん タチカラヲ 八方に掘らしむ 海の名も は山中と 東北きね明日アス は河口と 北西ねつ本栖 西西湖ニシノウミ 西南つさ清湖キヨミ 四尾連湖シビレウミ 東南きさは須戸

伊豆浅間峰
新治の民が 群れ来たり 海掘り土を 峰に上げ 八房計りと 天に応え 中の輪もがな ウツロヰが 淡海浚え 水尾の地と 人担い来て 朝の間に 中峰成せば 神の名も 伊豆浅間峰 山高く 湖深く 並び無し 峰に降る雪 池水の 末九千里の 田と成りて 及ぶ御代田に ハタ年に 浚えなせとて

一夜召されて
酒折の 宮に入ります 預かりの オオヤマスミが 御饗なす 御膳捧ぐ アシツ姫 一夜召されて 契りこむ

コヤネ西洲に年越ゆる
帰る新治の ユキスキの 宮に祈りの 大嘗会おおなめゑ 三種の受けを 天に応え 宮に納むる その飾り かぐ八幡あり その明日か 大御宝に 拝ましむ コヤネ西洲カシマに 年越ゆる

物主一人
物主一人 日高見の 井堰成し成し 日隅まで 祖父ををち喜び その父が 大和の神と なりて後 孫に会いたく 年寄ると 手づから御饗 物主も 喜び曰く わが君の 山を八房の 居行き成す 祖父驚き 我たとひ 新田成すとも これ知らず 君は真の 照らす神 代々の御祖ぞ まめなせと 国境まで 送りてぞ 名残あるなり 物主は 海辺を西に 巡りつつ 刺辺サシヱに新田 興さしむ 佐渡に渡りて 新田成す 越に戻りて 井堰成すかな 時に君 思すことあり コヤネして 新治にとどめ カツテして 海辺を上る 御幸触れ

イ女孕めり
オオヤマスミは 伊豆崎の 仮屋に迎え 御饗なす 膳なす時 アシツ姫 イ女孕めりと 申す故 伊勢に告げんと 装いなす

イワナガ姫
時にその母 姉連れて 仮屋に到り まみえ乞う 召せば申さく 妹さえ 我が慈しの 姉ありと 言葉飾れば 二心 姉イワナガを 召せばその 形鋭く 見目悪しく かれに肝消し 雅変え やはりアシツと 宣えば 父驚きて 妻叱る かくあらんとて 出ださぬを 急ぎ帰れと 追いやれば 母姉恨み 下女して 妹陥さん あた枕 ついに偽り 白子屋で 君に聞こゆる 疑ひに 旅屋を夜半に 立ち出でて 伊勢に帰えます

桜謂あらば
姫一人 寝覚めて行けば 松坂に 堰き止められて 白子屋に 帰り誓って 妬まれの 我が恥濯げ この桜 曾祖父ひををぢ サクラウシ この花捧ぐ 大御神 大内に植えて 伊勢の道 成る離るるを 計ります 桜あらば 我が孕み あた胤ならば 花萎め 正胤ならば 生む時に 咲けと誓ひて ここに植え 里に帰ます 十二満ちて 六月初日 三つ子生む その胞衣の紋 梅桜 卯花と変わり 怪しめば 君に告ぐれど 返え無くて 姫は裾野に うつ室し 周りに柴の 垣なして 母子誓いて 中にあり 他胤ならば 滅びんと 火をつけ焼けば 熱がりて 這い出でんとす 峰の竜 水吐きかけて 一人ずつ 導き御子を 這い出だす 諸人驚き 火を消して 姫引き出だし 御輿もて 宮に送りて 伊勢に告ぐ 白子の桜 生まれ日に 咲きて絶えねば 天御孫 鴨舟早く 飛ばさせて 興津に着けば 雉飛びて 酒折に告ぐ

浜千鳥はまつちとり
姫恨み 衾被りて 答えなし返事かえことすれば 君しばし 思いて和歌の 歌見染め オキヒコをして 小男鹿さをしか人 姫いただきて 沖つ藻は 辺には寄れども サ寝床も あたわぬ鴨よ 浜千鳥はまつちとりよ この歌に 恨みの涙 融け落ちて 肝に堪えの かち裸足 裾野走りて 興津浜 君喜びて 輿並べ 行く大宮は ヤマスミの 道迎えして 御所に 諏訪守会えば 須走りて 酒折宮に 入りまして

コノハナサクヤ姫の三つ子
初に出る名は ホノアカリ 諱ムメヒト 次の子は 名もホノススミ サクラギぞ 末は名もヒコ ホオテミの 諱ウツキネ また姫は 子を生む日より 花絶えず 故にコノハナ サクヤ姫

山鳩
この秋瑞穂 力なす かれ山鳩の 御衣となす 綾に衣を留め 織る錦 大嘗祀る 御衣はこれ

肥根国
ワカムスビ 籠子を桑に 糸なせば ココリ姫得て 御衣捧ぐ 肥根国コエネノクニぞ 物主は 北より巡り 越に来て かの絵を勧む ココリ姫 綾に織りなす 鳥襷 天に捧げて また西の 母が土産と 世に残る

アサ姫とツエ
多賀に到れば ツエが妻 アサ姫迎ふ 物主は 桑良きを見て アサ姫に 蚕飼い衣織る 裁ち縫ひの 道教ゆれば ヲコタマの 神を祀りて 五座治し 御衣さし作り 裁ち縫ひの 道教ゆれば 八方通り 肥国守 ヲコの里 蚕飼い得るなり

薬草
天御孫 また山巡り 根に冷えて 腹痛む時 コモリその 三草勧めて これを治す ミトは交わる ひとみ草 根箱根臼杵 茎ひとり四枝五葉ひとみ 小白花 秋実は小豆 甘苦く 脾臓潤ひ 胸を養す 百草あれど 原見のみ こと優る故 三種褒め 原見山なり

三壺
二神の 国中柱 沖の壺 アマテル神の 日高見の 方竹宮の 中柱 方壺のふみ 伊豆守の 原見端壺は 四方八方の 中柱なり 大御神 原の大君と 名を賜ふ

新治の民
新治の民が 子と慕う ふりも分かれて 元民と 水際分かれ シワカミの 御柱のまま なる如く

シハカミホツマ
政ホツマに 調ひて 二万八千経て 三十鈴の 暦なす頃 国の名も シハカミホツマ 遍くに 移り楽しむ 世々豊か

箱根神
八万年経て 日高見の 君より召せば 諸共に 宮に上れば 父帝 御子二方に 詔 我齢老い ひたる故 今より兄も 名はヤマト 飛鳥大君と 原大君 共に睦みて ヱト神の その日その民 守る如く 兄弟確と聞け 国民を 我がものにせな 君はその 民は君なり 田は箱根 フタヱ恵みぞ かに愛でる 君は明もなし 二もなし 神の鏡の 天照らす 日嗣の君と 守る箱根ぞ ついに掘る 伊豆ヲバシリの 洞穴に 自ら入りて 箱根神 祀りて後に 原大君 遺言より 二民ふたたみの 争いあれば とみりて やわさばきて 何事も たみを立てて 新民にいたみの 欠けは原より 償わす かれに代のうち 睦まじき 兄弟を名付けて ハラカラと 言ふも通りぞ

比叡山(瑞穂宮)
原大君 伊豆崎宮に 箱根神 三歳祀りて 沖壺の 峰より眺め 詔 汝ヤマクイ 山後ろ 野を掘り土を ここに上げ 大日の山を 写すべし 一枝に足り 一枝の山

広沢、御笠山、伊予の天山
広沢を オオタに掘らせ 国となす あまねく通る ホツマ振り 楽しみ歌ふ 津軽には 沼掘り上げて 田水生む 阿蘇辺の丘の ヰユキ山 七万里生みて カツシマや カツミネ山と 島間に カツウオ生れば この魚を 新田に入れて 地を肥やす アマノコヤネも 春日国 飛火野丘に ヤマト川 掘りて造れる 御笠山 伊予のイフキは 天山に 写し田を成す

ホノアカリの后
飛鳥アスカきみ 香具山カグヤマ写し 宮の名も 初瀬ハセガワ掘りて 飛鳥川 淵を田と成す スガタ姫 君に申さく これろし 昔クシヒコ いさめしを あざけけがれ みそぎなす これをつれば またけがれ 何神なにかみありと いさむれば 香具山カグヤマ大君をきみ これ聞かず おうなまつり 何処いづこある 汝はこの田 子はえず 妻にならぬと 今日けふ去りて トヨマドがの ハツセ姫 妻と召さるる 飛鳥川

代々橘の君となる
オオヤマスミは これ写し 相模サカムの小野オノに あら成し かくの木植えて マウラかみ 代々よよたちばなの きみとなる

旅姿
君酒折の 付くる名も 原浅間宮 装ひは 黄金を飾り 玉臺たまうてな 漆彩り 懸橋の 滑れば木綿ゆうの 足袋つけて 懸橋慕う 旅姿 なお豊かにて 瑞穂上れば 民安く

千代見草
庭に棲む鶴 千代見草 濯ぎ根を食む 池の亀 葉を食む万の 占形は 合ふと離ると 亀占は 水湧く湧かぬ 御心を 尽くす御孫の ホツマなるかな

25 ヒコみこと を得るのあや

箱根・瑞穂
三十二鈴 九百枝二十三穂 ワケイカツチの 天君は 深き思ひの あるにより オオシマをして 近江の 瑞穂の宮を 造らしむ なれば日を見て 遷らんと 先に両親 日足ひたる時 箱根の洞に 入りますを 母チチ姫は 言ありて 伊勢に到りて 御神に 朝夕仕え 祀らしむ 十万年経て 今かれに 箱根に詣で 幣捧げ それより伊勢に 御幸なる 御神および チチ姫を 拝みて淡の 瑞穂国 宮遷し成る ムメヒトは 原に留まり 政事 コヤネ預かり 物主は 供なすゆえに ミゾクイを 副物主と 原の守り

海幸山幸(冒頭)
新治にいます スセリ宮 昔の跡に 今造る 卯川の宮に 遷ります 二荒裾の 宇都宮は 大津小竹宮 今造り これ賜りて 遷ります 時に諱の 故あれば 卯川を乞えど 許されず 常に狩りして 楽しめば 山幸彦と またスセリ 釣り楽しめば 幸彦と

安芸
君は自ら 御狩りなす 西中国の 山表 井堰堤に 新田なす 西に到りて 禿山を 問えば粗長 安芸と言ふ 木の有る名にて 無き如何 これ大蛇おろちあり 国守の 姫を呑むゆえ みな焼けば 逃げて氷川に 斬られける 然れど山は 禿かふろなり 今に木こりの 暇空き 天君笑みて 嘆くなと アカツチ守に これ教え 檜杉の種を 植えさしむ 十歳になりて 峰籠る 田水も絶えず 国豊か また山陰も 御巡りて ところどころに 井堰成し 高田開きて 帰ります

筑紫大君
豊かなる年 三万経る 時に筑紫の 治まらで 御子御下りを 乞う故に 君聞し召し 小竹宮を 筑紫大君と 詔 ウツキネ原の 宮に行き 暇を乞えば ムメヒトも ともに上りて 瑞穂なる 天君拝む 時に君 筑紫は糧の 足らざるか てれば行き見て 田を増さん かれムメヒトを 大君とす コヤネ物主 諸共に ここに留まり 政聞け

イササワケ
ウツキネスセリ 北の津に 行きて治めよ イササワケ あれば睦めよ

宇土・鹿児
天君は 西宮より 亀に乗り 筑紫ウマシの 宇土に着き 筑紫あまねく 巡り狩り 井堰堤に 新田成す 法定むれば 住吉の 孫ホタカミや 志賀の守 筑紫に乞えば 曾於のハテ 鹿児に乞えども 終日ひめもすに 月済むまでも 身を尽くし 三歳にサシヱ ほぼ成りて 造り行い 治めしむ 後に瑞穂に 帰ませば ムメヒト大君 磯輪しわかみの ホツマの宮に 帰りますかな 

海幸山幸(本編)
兄弟ゑとの宮 きたにありて 試みに 海幸彦が 幸換えん 山幸彦も 頷きて 兄は弓矢取り 山に狩る は海にり 釣りをなす ともにむなしく さちあらず ゆみ矢返やかえ を求む を取られ よしなくて にいもとめば は受けず もとたれば 太刀たちに ひとれど なお怒り さわなき元の たる 浜にうなだれ うれふ時 かりわなつ これをく シホツツのをぢ ゆえを問ふ ままに答ふる をぢいわく きみうれひそ はからんと 無堅網なしかたあみ 鴨に入れ 歌札つけて 君も乗せ 帆上げ艫綱ともつな 解き放つ 筑紫ウマシの 浜に着く 鴨網捨てて 行き到る 曾於そをハテかみの 瑞垣みづかきや うてな輝く 日も暮れて え葉ゆずり葉 して いねもせで待つ 海女あまのとも 明けて群れ出る 若姫が まりに若水 まんとす つるねれば 影映る 驚き入りて たらぐ 空つ神かは 稀人と 父は御衣裳を 望み見て 八重の畳を 敷き設け 引き入れまして 故を問ふ 君ある形 宣えば ハテ守しばし 思ふ時 宇土守来たり 堅網の 誰が鴨がある 年の朝 歌え添むるを 取り見れば 和歌の歌あり シホツツが 目無堅網 張るべらや 満ち干の珠は ハテの神風かんかぜ 時にハテ 諸海女召して これを問ふ ヒキメは引かん 粗籠網 クチメが釣りも よしなしや アカメ一人は 目無し網 ここにハテ守 諸海女を アカメに添えて 目無網 四方ひれどれば 大鯛が 口を噛み裂き 前に寄る アカメは口に 元鉤得て 鯛を生け簀に 待つべしと 告ぐればハテは 先に知る 夢に鯛来て 我魚の よしなきために 口捧ぐ 我を御食にと 詔 鯛は魚君 御食のもの 印は鱗 三つに山 移して返す 三山の 鯛はこれなり 口は忌む アカメを褒めて ヨド姫と 君は鉤を得て 喜びに 志賀守して 返さしむ 鰐に乗り行き 小竹宮で ヤマクイ招き 諸共に 卯川に行けば 宮会いて 問えばヤマクイ これ昔 君が鉤を借り 取られしを 今取り返し 弟宮から 志賀守して 返さしむ 志賀は鉤を持ち 奉る 宮うかがいて 我が鉤ぞと 言いつつ立つを 袖控え 待ちちと言えば 宮怒り 道なく我を なぜ呪ふ 兄には弟から 上るはず 答えて否や 朽ち糸を 換えて貸すはず 知れば幸 知らねば弟へ 駒這ひに 詫び言あれと 言えばなお 怒りて船を 漕ぎ出す 珠を投ぐれば 海乾く 志賀追い行きて 船に乗る 宮飛び逃ぐる ヤマクイも 馳せ行き宮の 手を引けば 志賀また投ぐる 珠の水 溢れてすでに 沈む時 汝助けよ 我永く 弟の駒して 糧受けん ここに許して 迎ひ船 宮に帰りて 睦みてぞ去る

昔母君
ハテツミは 君に申さく 我が子とて トヨツミヒコと トヨタマ姫 タケツミヒコと オトタマ姫 連れ出で君を 拝ましむ 君は筑紫の 守集め 我妻入れん 諸如何 時にホタカミ 申さくは 先に乞ふ時 君の名も 筑紫御君 これここの 天神あまつかみなり お任せに むかし母君ははぎみ 天君あまきみに ひとちぎりて のちす 君まずはかる なおしと 鹿児島宮に 遷ります トヨタマ姫を 御后に

宇佐に流行らせ
今年植え付け 照れど良し 宇佐の県に 流行らせて 皐月の望の 春祝ひ

タケイワタツ・アソ姫
豊賑わいて 六万年 経ても阿蘇国 まだ肥えず かれ宮造り 遷ります 埴を考えて 数峰の 数魚入れて 田を肥やし 陽炎の火の 肥国の タケイワタツは 沓を上げ アソ姫斎餞ゆなに 奉る 君召し上げて 内后 ここにも六万 年を経て

招く鹿児島
志賀守方は まだ満てず 筑紫の宮に 遷ります 埴を考えて 油粕 入れて糟屋の 埴満つる そのほか三十の 招くゆえ 巡り考え 筑紫宮 豊かに肥えて 民安く ここにも六万 年を経て 三鈴の間 しばらくも 休まで民を すゆえに 后局も 御子生まず かれこれ思し 宮棄てて 宇土に到れば ハテ守の 招く鹿児島 行きまさず 后は父に これを告ぐ ハテ守宇土に 申さくは 君楽さずや 然らずぞ 局はあれど 子を生まず かれに棄て置き ただひとり 連れてしばらく ここにあり 筑紫の民を 思うばかりぞ

26 あおいかつらあや

ホオテミの呼び出し
三十六鈴 三十四枝三十八 弥生望 ワケイカツチの 天君は 諸臣召して 詔 昔新治の 宮建てて 田水のために 原見山 成りて三十万 民を治す ついにシハカミ ホツマ成る 天日嗣を 受け継ぎて ワケイカツチの 神となる 三十一万年 治むれば 齢も老いて 天日嗣 今ウツキネに 譲らんと 男鹿到れば 三十二守 慕ひ惜しめど 詔 定まる上は 万歳を 祝ひて後の 御幸乞う

志賀船問えば
志賀船問えば 鰐が言う 大亀ならば 月越えん 鴨はひと月 大鰐は ささと申せば 宣はく 父召す時は 騒かなり 我は大鰐 姫は鴨 あとに送れと 大鰐を 志賀の浦より 綱解きて 早ちに北の 津に着きて イササワケより 瑞穂まで 御帰りあれば 天君も 臣も喜ぶ

ウカヤ誕生
これの先 妃孕みて 月臨む かれにあとより 鴨をして 北津に行かん 我がために 産屋をなして 待ちたまえ かれ松原に 産屋葺く 棟合わぬ間に 鴨着きて はや入りまして 御子を生む

白鬚守
カツテは椅子も 御湯みゆも上ぐ ウカヤの湯とは コノハナの 白きカニ咲く 子は鵜目うのめ またアマカツら 今御子の カニツワ吐けば ココモあり スセリ宮より 御湯進め 海人草まくりとともに カニを治す かれ永らえて 十四鈴の 齢卯川の 宮褒めて 白鬚守の 名を賜ふ

な覗きそ
予ねてカツテが 申さくは は産宮を な覗きそ 卯月十五日より 七十五日は 日ごと産が屋の 産湯上ぐ 遺る法なり

桑の弓
ホタカミは 臍の緒を切るも 腹の法 物主鳴らす 桑の弓 ハハ矢引きめぞ

鴨割れて
コヤネ神 諱考えて カモヒトと 母よりナギサ タケウカヤ フキアワセズの 名を賜う 故は筑羅チクラに 鴨割れて 姫もタケスミ ホタカミも 渚に落ちて 溺るるを 猛き心に 泳がせば 竜やみつちの 力得て 恙も波の 磯に着く 釣り船よりぞ ミホサキの 鰐得てここに 着くことも 御胤思えば 渚猛 母の御心 現るる 

ミツハメの社
君松原に 進み来て 産屋覗けば 腹這ひに 装ひなければ 戸細引く 音に寝覚めて 恥づかしや 弟タケスミと 水無月の 禊して後 産屋出て 大丹生に到り 御子抱き 見目御手撫でて 母は今 恥ぢ帰るなり 見ゆ折り もがなと捨てて 朽木川 上り山越え やや三日に 分土ワケツチの北の ミツハメの 社に休む このよしを 瑞穂に告げば 驚きて ホタカミをして 留めしむ 大丹生の雉の ひた飛べば 後を慕ひて 朽木谷 西より南 山越えて ミツハの宮に 追いつきて 乞えど返え無で タケスミに 含め留めて 馳せ帰り 返事かえことなせば 雉飛びて 告ぐる筑紫の ハテスミと オトタマ姫と 鰐上り 西宮より 山背に 到りて訪えど 姫は今 下りて上らず オトタマを 捧げとあれば 諸共に 上り申せば 妹召す

八幡の花
天日嗣あまつひつぎを 若宮に 授けたまいて 大上君おおゑきみ 小竹宮シノミヤす 瑞穂には 新治のためし ユキスキの 大御祭ををんまつり大嘗会おおなめゑ 三種の受けを 天に応え 青人草を 安らかに 保つ八幡の 花飾り 明日万民に 拝ましむ

ニニキネの説得
しばしば召せど トヨタマは ミツ屋を出でず 明くる年 大上皇おおゑすべらき 分土ワケツチの 葵桂を 袖に掛け 宮に到れば 姫迎ふ 時に葉を持ち これ如何 トヨタマ答え 葵葉ぞ またこれ如何 桂葉ぞ いづれ掛くるや まだ掛けず 汝世を棄て 道欠くや 姫は畏れて 欠かねども 渚に泳ぐ 嘲りに 腹這ひの恥 かさぬ身は あに上らんや これ恥に 似て恥ならず しかと聞け 子を生む後は 因み断つ 七十五日に足す 慎まず 更断ち足せず 勝手神 かねて申すを 覗く恥 汝にあらず 竜の子は 千穂海に住み タツタ知る 千穂山に住み タツフルと 千穂里に住み 付く離る 三生き悟りて 君となる 汝渚に 落ちんとす 御胤思えば 猛心たけこころ なして泳ぎて 永らうる これ地生はいき知る 宮に立ち 振りて嘲り 免るる これ天生あいき知る 今一つ 葵桂の 妹背いせを得ば 人生き悟る 三つ知れば 竜君如く 神となる 竜君如何 竜はひれ 三つ知る故に 鱗君 上身かんつみ鬼を 三つ知れば 人は神なり 姫は恥じ ぢ入り言わず ミホツ姫 御幸送りて ここにあり 問えば喜び 答え問ふ ミホツ頷き 大上君おおゑきみ 心な痛め たまひそよ 君と姫とは 日と月と 睦まじなさん 申す時 大君笑みて タケスミに トヨタマせと 河合の 国賜りて 谷を出で 室津に亀の 迎い待つ 門出送り 御幸なす

ニニキネ鹿児島へ
亀に乗り行く 鹿児島や 曾於高千穂の 日に辞む 朝は朝間の 日に向かふ 日向ひむかふ国と

歌なせと
天君姫を 訪ねれば コヤネ答えて ためしあり ミホツに問えば 歌なせと かれ歌詠みて ミホツ姫が 孫イソヨリを 遣わせば 姫迎ゆるを イソヨリは 立ちて詠む歌 沖つ鳥 鴨着く島に 我がいねし 妹は忘らじ 世の事々も 御歌受け ミホツは如何 イソヨリが ミホツの歌に みとひ 穢れを断つる 日本ひのもとの 神の心を 知る人ぞ神 時に姫 返しは葵 君桂 紙に包みて 水引草みひきくさ 書箱ふはこに納め 奉る 君自らに 結ひを解き その歌詠めば 沖つ鳥 上下かもを治むる 君ならで 世の事々を ゑやは防がん

織る錦 小葵の御衣みは
この歌を 三度になんた 落ちかかる 膝の葵葉 裳に染みて 迎ひの輿に トヨタマの あゐ宮入りと 喜びて あやに写させ 織る錦 小葵の御衣みは 菊散ここちりと 山鳩色の 三つの紋 神のよそひの 御衣裳みはもなるかな

27 御祖神みをやかみ 船霊ふなたまあや

瑞穂、伊吹、原
この時に 瑞穂の宮は トヨタマの 再び上る 喜びぞ … 先にツミハと タケフツと 伊吹の宮に 二十四県 して治めしむ ホツマ路は 鹿島オシクモ ヒタカヒコ ミシマミゾクイ 原宮に 百枝県の 物部と 豊かに治む 筑紫より 鹿人乞ふゆえ カンタチを 物主として ハテツミと ともに三十二を 治めしむ かれにツミハを 事代と 飛鳥宮に 侍らしむ

シイオリ
文月弓張(七日) 伊勢結び カモタケスミに 詔 妃を妻に 賜ふべし 乞ふに任せん タケツミは 乞ふは畏るる 天のまま ミホツ姫申す 十二局 あれど我が孫 典侍すけモトメ うちイソヨリ シイオリの 中にイソヨリ 知る人ぞ 父に尋ねば 頷きて これタケツミに 賜われば 河合の立ちぞ

スセリ姫・ウツヒコ
卯川宮 娶るスセリ姫 御子を生む 諱ウツヒコ

タマネ姫
これの先 姉タマネ姫 原大君 后になして ミゾクイが イクタマは典侍 イクヨリは 内侍となれど タマネ姫 クニテル宮と タケテルと 生めばナツメが 産着なす

ニギハヤヒを養子に
時に飛鳥の 宮罷る 母チチ姫は 後の代を 伊勢に侍れば 大御神 居を同じくす 告げ聞きて 母の嘆きは 嗣も無や 神の教えは 原宮の クニテルを嗣 天照らす ニギハヤヒ君 喪に入りて 白庭村の 御墓成す 後に十種の 譲り受け 年巡る日も 喪に入りて 飛鳥の神と 祀るなり

アメミチ姫とカゴヤマの追放
先に御子なく 香具山が アメミチ姫を ゑゑなして 兄タクリが子 タクラマロ 継ぎ子となせど ハセ姫は とみと憎みて 棄てさしむ 君また怒り ハセを棄つ 香具山大君 母と召し 子は召せど来ず フトタマの 孫ミカシヤを 妻として ウマシマチ生む ナガスネは おものとみなり

ヲニフより
都には 夫婦睦まじく 八百日ふり 筑紫の十八戸 四十五万 年経て治む 天日嗣 譲らんために 御子を召す 皇御皇子は ヲニフより 瑞穂に御幸 見え済む

八重垣の太刀
時に若宮 中にす コヤネは左 ミホヒコは 右に侍れば 天君は 御幡の書を 御手づから 御皇子に譲り 真后は 八咫鏡を 捧げ持ち 春日に授く 大典侍は 八重垣の太刀 捧げ持ち コモリに与ふ 君と臣 慎み受くる

ホオテミ崩御
天君と 后諸共 小竹宮に 下り居てここに 神となる 時四十二鈴 八百五十枝 極年ネウト 葉月四日 君の喪祀り 四十八済み 御言に任せ 亡骸おもむろを イササワケ 気比の神 故は翁に ケヰを得て 巡り開ける 鉤を得たり 門出のケヰぞ 膳手は 姫は亡骸おもむろ ミツハ宮 昔渚に 誓いして 三ソロの竜の 御霊得て 名もアヰソロの 神となる

田水を守り 船を生む 貴船の神は 船霊か 船は古 シマツヒコ 朽ち木に乗れる 鵜の鳥の 安曇川行く 筏乗り 棹差し覚え 船となす 子のオキツヒコ 鴨を見て 櫂を作れば 孫の志賀 帆鰐なす七代 カナサキは お亀を作る その孫の ハテ守の子の トヨタマと ミツハメと船 造る神 六船霊ぞ

多賀
詔 多賀は二神 果つの宮 今破るれば 造り替え 瑞穂の宮を 遷しいて 常拝まんと … 宮遷し 御位につく … キアト夏 御位なりて 伊勢に告ぐ アマテル神の 詔 トカクシをして 我が御孫 多賀の古宮 造り替え 都遷せば 天に継ぎて 地の二神ぞ 

カクノフミ
我昔 天の道得る カクノフミ 御祖百編を 授く名も 御祖天君 この心 万の政を 聞く時は 神も降りて 敬えば 神の御祖ぞ この道に 国治むれば 百司 その道慕う 子の如く これも御祖ぞ この梢 民を恵みて 我が子ぞと 撫づれば返る 人草の 御祖の心 すべ入れて 百のヲシテの 中にあり 文しけければ 味見えず 錦の紋を 織る如く 闇道の所は 明かりなす 春日子守と 味知らば 天日嗣の 栄えんは 天地くれど 極め無きかな 君受けて 鹿去る時に 詔 冬至る日に 大祭 天神と代々 皇神 ユキスキの宮 山海と ト尊霊は ハニスキの 嘗会につけて 人草の 寿ぎ祈るなり 二神は 常に正すの 殿にいて あまねく治む 民豊か サク鈴成れば 植え継ぎて 七鈴及べど なお豊か

ヤセ姫
四十九の鈴の 九百十一枝 初穂キアヱの 初三日に コヤネ申さく 君は今 御祖の道に 治むゆえ 人草の親 天地の 神も下れば 御祖神 世々の御祖の 嗣子なし 十二の妃も 如何なるや 時に天君 我思ふ 十三鈴老いて 胤あらじ コモリ申さく 嗣書よつぎふみ ありとてアマノ オシクモに 宣して嗣 社なす 時にオシクモ 名宛なし コヤネ太占 占えば ヤセ姫良けん … 年も若葉の ヤセ姫を 十一の妃も みな祝ふ オシクモ清め 嗣社に 祈れば徴 孕み得て 十五月に生む イツセ君 ヤセ姫宮に 入るる間に つい神となる

十三鈴までも子無き故
御乳なくて 触れ尋ぬれば これの先 カモタケスミと イソヨリと 十三鈴までも 子無き故 ワケツチ神に 祈る夜の 夢に賜る 玉の名の タマヨリ姫を 生みて後 ひたして齢 十四鈴に 父母ともに 神となる 河合の守ぞ 

白羽の矢
タマヨリは 喪祀りなして ただひとり ワケツチ神に また詣で ゆふ捧ぐれば ウツロイが 疑ひ問わく 姫一人 ワケツチ神に 仕ふかや 答え然らず また問わく 世に因むかや 姫答え 何者なれば 脅さんや 我は神の子 汝はと 言えばウツロヰ 飛び上がり 鳴神してぞ 去りにける ある日また出で 禊なす 白羽の矢来て 軒に刺す あるじおけの 留まりて 思はず男子 生み育つ 三つなる時に 矢を指して 父と言う時 矢は昇る ワケイカツチの 神なりと 世に鳴り渡る

諸守乞えど頷かず
姫御子を 諸守乞えど 頷かず 高野の森に 隠れ住む ワケイカツチの 祠成し 常に御影を 祀るなり 御触れによりて 申さくは 一枝の麓に 姫ありて 乳良きゆえに 民の子の 痩するに乳を 賜れば たちまち肥ゆる これ昔 神の子なれど 隠れ住む 森に五色の 雲起こる 出雲路守と 名づくなり 諸守乞えど 参らねば 差御使なされ 然るべし 時にイワクラ 伺いて 使いをやれど 来たらねば 自ら行きて 招けども 頷かぬよし 返事かえことす ワカヤマクイが 申さくは 御使人ならで 来ぬゆえは ワカツチ神を 常祀る 召せば祀りの 欠くるゆえなり 詔 ヤマクイをして 召す時に 母子上れば 見たまひて 氏名を問えば 姫答え 親のタケスミ イソヨリが 名づくタマヨリ ハテが孫 子は父も無く 神なりぞ 父が無ければ 諱せず 出雲の御子と 人が呼ぶ 言葉も詳し 透き通る 珠の姿の 輝けば 詔して 内局 イツセひたせば 御子の名も ミケイリ御子ぞ 生む御子は イナイイ君ぞ 御后と なりて生む御子 カンヤマト イハワレヒコの 尊なり 時にタネコが タケヒトと 諱ちりばめ 奉る

ミシマミゾクイ
これの先 原のオシクモ 召し上す 弟ヒタチは 若き故 阿波の事代 侍る宮 同胞はらからなれば 西にしひがし かよつとめて かなめむ 名もツミハ八重 事代が 三島に到り 原に行き また三島より 伊予に行く ついにちなみて ミゾクイの タマクシ姫も はらむ故 わに乗り阿波へ 帰るうち 生む子の諱 ワニヒコは クシミカタマぞ 次の子は 諱ナカヒコ クシナシぞ 青垣殿に 住ましむる

フトミミ
先に筑紫の カンタチは 曾於の船津の フトミミを 安に娶りて フキネ生む 後もろともに 神となる 大物主は フキネなり トヨツミヒコと 治めしむ 野業教えて 民を生む

光の神、クシミカタマを養子に
海原光 現れて 我あればこそ 汝その おおよそになす 労わりぞ オオナムチ問う 汝誰ぞ 我は汝の 先御魂 貴霊くしゐ業霊わざたま さて知りぬ 祀る先霊 どこに住む いや神住まず 汝をば 青垣山に 住ませんと 宮造りして そこに居れ 子無きが故に 乱るるぞ 事代主が 兄弟の子の クシミカタマを 乞い受けて 嗣となすべし 御教えに 三諸のそばに 殿成して 乞えば賜はる もうけの子 クシミカタマと 若妻の サシクニワカ姫 もろともに 住ませて主は 筑紫日足ひたるの時に これを継ぐ 母子到れば 遺し言 このムラクモは あれませる 御子の祝いに 捧げよと 言いて妹背 神となる 安に納めて 祀る後 筑紫御使の 詔 後にクシナシ 神となる 母に乞われて 御使棄つ かれに筑紫の 御幸乞う

イツセ多賀大君~宮崎
時にイツセに 詔 多賀大君と オシクモと クシミカタマと 右左まてにあり タネコは御子の 大御守 御子タケヒトは 歳五つ またイワクラは 宮内の 局預かり 天君は 筑紫に御幸 室津より お亀に召して 宇土の浜 鹿児島宮に 三十二守 御狩りを乞えば 巡りみて 廃るを直し 絶えをし みな治まるも イカツチの 神の功し 遺りあり 十歳ととせに民も 賑わいて 万歳よろとしうたう 宮崎の 君の御心 休まれば 齢も老いて 早雉の 多賀に告ぐれば 驚きて 御子タケヒトと 守タネコ 多賀より出でて 西宮 大鰐乗りて 宇土の浜 宮崎宮に 到ります

ウカヤの死
御祖天君 詔 タケヒトタネコ しかと聞け 我つらつらと 思みれば 人草の御食 繁るゆえ 生まれ賢しく 永らえも 千代は百代と なり枯れて 我が八十万も 百歳も 世の楽しみは あい同じ アマテル神も 還らせば 天の道守る 人もなし もろとも褒むる 神もなし 汝ふたりも 永らえず イツセは子なし タケヒトは 世の御祖なり タネコらも ヱト六十内に 妻入れて 嗣をなせよ タケヒトは 歳十五なれば 我が代わり タネコが助け 治むべし 白矢のをして タケヒトに 国を知らする ももふみ タネコに譲る 我が心 先に鏡は オシクモに また八重垣は ワニヒコに 授くを姫が 預かりて 分土ワケツチ宮に 納め置く ホツマなる時 自ずから 三種の宝 集まりて 御祖となすが ホツマぞと 宮崎山の 洞に入り アカンタヒラと 上がります 御子喪を務め 四十八済む 三十二集まり 上ぐる名は 筑紫皇 このよしを 多賀に告ぐれば 喪に入りて 日向の神と 祀りなす 大丹生ヲニフに祀る 鴨の神 アヒラツ山は 御祖神 後にタマヨリ 神となる 河合に合わせ 御祖神 女男の神とて いちしるきかな

タマネ姫
これの先 姉タマネ姫 原大君 妃になして ミゾクイが イクタマは典侍 イクヨリは 内侍なれど タマネ姫 クニテル宮と タケテルと 生めば

28 君臣遺し宣りのあや

暦まだとて
五十鈴の 千枝の二十年 天替わる 暦まだとて 物主が 伊勢に詣でて これを問ふ フタヱこれより 伺はで 代殿に受く 喜びと ともに到れる 大内宮 春日に会いて 元を問ふ 翁答えて この鈴は 天地開く 常立ちの 宮の真榊 アヱ千枝に サクスズとなる 植え継ぎの 五百に至れば 三百ハカリ 万歳満ちて 五百継ぎの 天の真榊 年の穂の 十歳には五寸 六十年に 三咫伸ぶヱトの 一巡り あくる年成る 三咫のアヱ

暦の数え方
なれば二ヱト キアヱより 枝と穂と数え 一枝六十 十枝は六百年 百枝は六千 千枝に六万を 天守の 一巡りづつ 暦なる

アマテル誕生
かれ千枝の年 種植えて 明くれば生ゆる 真榊を ハコクニ宮に トコタチの 植えて国名も 日高見の タカミムスビの 植え継ぎの 二十一の鈴の 百枝後 五代タマキネの イサコ姫 七代の神の タカヒトと 高日の西南の 筑波山 伊佐川端なる 宮に居て 頷きあみて 木実会いて 名もイサナギと イサナミの 天二神の 御子なきを かれタマキネの カツラギの 山に祈れば 天御祖 日輪の御霊 分け下し アマテル神を 生み賜う 時二十一鈴 百に十五枝 三十一キシヱの 初日の出 若日とともに あれませば 諱ワカヒト 産宮は 原見酒折 

胞衣
緒の胞衣を 北に納むれば よく守り 災いあるも 品(科)変えて 防ぎ祓えば 和らぎて 玉の緒長く これにより オオヤマスミが 巡り見て 嫁路行く北の 尾に納む 胞衣(恵那)が岳なる 信濃国

分治
大山下 日高見安の 政事 聞こせば民も 穏やかに 二十五万年 天日嗣 御子のオシヒト 譲り受け もとの高日に 知ろしめす 西は安河 オモイカネ 男鹿と分けて 遠国は ツキヨミ治む 白山は 根に月隅は 住吉

八つ御耳
アマテル神は 肥国の 伊雑大内の 宮に居て 八つ御耳に 聞し召し 民の教えは 伊勢の道

ハタレ
その神風の 伊勢の国 通りたっとむ 神風かんかぜを 羨みねじけ 化け物が 自らほめて ハタレ君 七十万九千を 群れ集め 国を乱れば 住吉 香取鹿島や イフキヌシ カダタチカラヲ クスヒ神 みな器得て これを討つ 時に六ハタレ 皆降る これ皇神の 詔

ホノアカリとニニキネ(ワケイカツチ)
御子オシヒトも 三十万端 治めて御子の ホノアカリ 十種宝に 駈け廻り 空見つヤマト 飛鳥宮 弟キヨヒトは 新治宮 新田開きて 民治む 十八万年に 殊を得て 水際分かる 新治振り 天より三つの 神宝 君臣分けて 賜れば 心ひとつに 国の名も シワカミホツマ 現るる 三十万経れば 天の名も ワケイカツチの 天君と 六十万治む 大御恵みぞ 

四科
先に御子 三人生む時 信濃より 四科県の 主来たり アマテル神の ためしあり 胞衣乞う時に 詔 埴科主は 胞衣が岳 波閇および 更科と 妻科主ら この三胞衣 その尾に納め 守るべし

ホオテミ(気比の神)
その乙御子の ウツキネは 筑紫に到り 田を肥やし 親に継がふる 民を愛で 十八万治め もと国の 日嗣を受けて 天神あまかみの 親に継がふる 君の名も 六十万治め 気比の神

ウカヤ(御祖天君)
御子カモヒトは 日嗣受け 瑞穂を遷す 多賀の宮 治むる民を 子の如し 天にことふる 神の名も 御祖天君 若宮の 時に四十万 世の政 また三十五万 豊かなり

サコクシロへ
時に伊雑の 天神あまつかみ 十二の妃も 神となる セオリツ姫と 大御神 宮遷さんと 御裳側に 天上る道得て サコクシロ 内の宮居に 二万穂経る

アマテル遺言
時に五十鈴 宮に生え つらつら思す 植えずして 生えるも天よ 我が命 天が知らすと 八百守を 召して我世を 辞まんと サルタに穴を 掘らしむる 真那井に契る 朝日宮 同じところと 宣えば 諸驚きて 留むれば いやとよ我は 民のため 苦きを食みて 百七十三万 二千五百年を 永らえて 天の楽しみ 覚ゆれば またサルタ 昔授くる 逆矛木さかほこき 美しき鈴 地生太刀わいきたち カカンノンテン 時待ちて 道顕せよ また后 広田に行きて ワカ姫と ともに妹心 守るべし 我はトヨケと 背を守る 伊勢の道なり またコヤネ 汝よく知る タケコが子 クシヒコ生まれ 直ぐなれば 授く御矛に 鑑みて 三諸に入りて 時待つも 道衰はば また出でて 興さんためや 汝また 鏡の臣は 軽からず 神を都に 留むべし 我も守らん これなりと 御代の御衣箱みははこ 御璽みをしてと 汝春日よ 遺し物 多賀に持ち行き 捧げよと 自らこれを 授けます 春日は君に 奉る 神のをして小男鹿さをしかかむり衣裳はも菊散ここちりぞ 

アマテル崩御
御幸の神輿 真那井にて アマテル神は 内つ宮 トヨケは外宮 かれ春日 送りて後は 務め降り 御笠社の 玉返し 国治まれば 枯れもなし 祀りの紋を 三つ染めて 一つ持ち行き 日読みなす フタヱに授け 御裳裾の サコクシロ内 改めて アマテル神の 内つ宮 八百番ふ守 侍りて ヒモロケ捧げ 天にことふ 伊勢の道受く 上臣の 番ふ守らが 侍るゆえ 内侍所 春日守 太宣言を 司るかな 

昔春日に
六万年 経て去年尽きる 幸鈴ぞ 昔春日に 詔 二十六の鈴を 我植えて 後の二十三も 詔 受け巡り植ゆ 宮の前 君おわさねば 如何にせん フタヱが曰く 春日殿 辞む御笠も 今伊勢の 番ふる守の いますべし これ理と 国巡る 物主触れて モノノベら 春日の守を 導かす 諸守祝う 門出して 国々巡り 真榊の 二重三重十重 かつてなく

伊予に到れば
伊予に到れば 事代が 館に入れて 主問う 鈴苗ありや かつてなし 手を空しくす 物主が 翁植えんや 春日また 我は臣なり 君植ゆる 天の真榊 如何にせん 我は宣言 宣んすのみ また問う汝 治を棄つや ほろして曰く 治は棄てず 植ゆを畏れて またも問う イフキ神かや 時に母 タナコ姫あり 答え言う 昔二神 日の神を 君月は次ぐ 次ぐは臣 この子臣なり 臣を以て まだ君とせず 日の神の 嗣得て植ゆる 君は今 若きタケヒト 思わねば 天の蝕み 晴るる時 苗生えなんや 主問う 佐久鈴二十 伸び如何 かれに失せたり これも天 

アスス暦
時にフタヱが 暦名は 如何なさんや 時に姫 父母神に かり言わば スズキは齢 二十歳の 伸びもこの木の 天の命 春日も齢 長ければ これ名づくべし 時春日 やや笑み曰く 暦名を アススとせんや 時に姫 諸守ともに むべなりと アススと極め 二十一穂の キナヱの春は アメフタヱ アスス暦と 名を換えて 梓に彫りて 奉る アスス暦を 諸受けて この世の技を 鑑みる 暦これなり

タナコの子孫
タナコ姫 イフキト宮に 生む御子の 兄はイヨツヒコ トサツヒコ ウサツヒコこれ 御供に 行きて筑紫の 宇佐に住む 母も宇佐にて 神となる 厳島宮 イトウ神 善きを知るなぞ 大蛇おろちなる 恥に自ら さすらいて イトウを知れば 

九頭大蛇こかしらのおろち
オオナムチ 一姫を娶る 子のシマツ 三姫祀る ソトハマ イトウヤスカタ 神の御食 食むウトウあり 九頭こかしらの 大蛇おろちめば シマツウシ ハハきりふれば 逃げ至り 越の洞穴 掘り抜けて 信濃に出れば これを告ぐ 伊勢のトカクシ 馳せ帰り 汝は畏る これ如何 答えて昔 二オロチ 姫に生まれて 君召せば モチは御子生み 典侍となる ハヤは姫生み 内局 内セオリツが 御妃に なるをモチコが 殺さんと 妬めばハヤは 君を誣い 弟君乞えど 現れて ともにさすらう アカツチが 姫を弟君に 因むをば ハヤがオロチに 嚙み殺す 弟アシナツが 姫を乞えば 七姫までは 噛み食らう 時にソサノヲ これを斬り 身をヤスカタと 祀るゆえ またヤマスミの 姫と生まれ 妹を妬む 罪の鳥 またモチオロチ セオリツを 噛まん噛まんと 百五十万穂 蝦夷ヱゾ白竜しらたつの 岳に待つ 今神となる 虚しさよ トカクシ曰く 汝今 ヒミの炎を 絶つべしぞ 我が御食食みて 下に居れ 相模を守れば 罪消えて また人成ると 尾を切れば ヨロのヲタウの 山ぞ箱崎

タケコ終わる
この先に たけに生まるる タケコ姫 多賀に詣でて 物主が 館に終われば ススキ島 亡骸おもむろ納め 竹生たけふ

五芒ゐすき打ち
昔流離い 琴を弾く 時に霰の すすき打つ 琴に響きて 妙なれば この葉を写し 琴作る 名も五芒ゐすき打ち 島海も 名はイスキなり

タキコ
タキコ姫 カグヤマツミの 妻となり カゴヤマ生みて 相模なる 江島神と なりにける

コヤネからフタヱへの譲位
アスス三十三穂 春日守 百五十六万 二十五なり フタヱに曰く 我が齢 極まるゆえに 上翁かんおちを 汝に授く

コヤネ崩御
如月十一日 オシクモは 四十八喪に入り 山背の オシホに納む 東向き これヒメ神の 罷る時 は山背に いますゆえ 息栖の宮の 西向きぞ 諸民慕い 喪に入るは 天喪の如し

サルタヒコ御笠山へ
サルタヒコ 禊に泡の 胸騒ぎ 太占見れば 忌むの身は 鏡老なる 名がひとり 憂いありとて これ祀り 受けぬ憂いと 驚き 内に到れば 御笠山 なお馳せ上る 春日殿 はや仮納め 喪中ゆえ ともに喪に入り 神輿なし 明日枚岡に 送る時 サルタが乞えば 許されて 神輿開くれば

オヰヱとフタヱ
サルタヒコ 我常に乞う 玉返し オヰヱとフタヱ 一書ひふみあり 今我一人 受けざると 散々にぞ悔む 時に神 目を開き曰く 汝よく 忘れず来たる 御裳裾よ 乞うはこれぞと 授けます サルタ受け取り 問わんとす はや目を閉じて 答えなし

御裳裾
その後に 御裳裾問えば サルタヒコ 昔ハタレを 破らんと 禊なす時 神の裳の 岩に懸かりて ひた引けば 滝落ち下る サクナタリ 天に祈れば 葛流れ はみ足を噛む 追い詰めて 止まる蕨で 括り捨つ 裳裾の葛に 破る故 すすくず用い これをす シムミチ破る 器得る みな禊して 器得て 六道を破り 治む民 みな御裳裾の 流れなり

溺れるサルタヒコ
サルタ天坂アサカに 砂取りの 平子に噛まれ 溺るるを 君ウズメして 底解くに(ソコトクニ=細矛サホコ遠国) 粒立つアワの サク床に 引き上げさしむ 藁に助す はひらをぬきて なまこなす

ナガスネヒコ嗣書写し取る
先にカグヤマ ナガスネは 御祖皇 御子なきを オシクモ祈る そのふみを 乞えど授けず 罷る後 アマノタネコは このふみを 御笠に籠めて 君の供 ナガスネヒコは その蔵を ひそかに開けて 写し取る 蔵人くらと見つけて これを告ぐ タネコ驚き 君に告ぐ 小男鹿やれば 御子答え 蔵人が業は 我知らず

タタライソスス姫誕生
これにあらけて 事代は 伊予に留まる その妻は 伊勢に詣でて サルタヒコ タタラなすをば 身に到り そこで姫生む その妻に 取り上げさせて 送り行く 事代笑めば サルタヒコ 称ゆる姫の 名はタタラ イスス姫なり 

ナガスネヒコ我を立つる
ナガスネが 我を立つれば 市騒ぐ かれに原見の 御子触れて ホツマ日高見 糧舟を 上さぬゆえに 多賀の宮 筑紫の宮に 行き居ます 大物主は 多賀殿に 根国ネノクニ治め オオタをば 日向代殿 副モノと なして娘の ミラ姫を 娶りて生む子 タタヒコが アタツクシネは 幼名ぞ 

前編の上梓
父のツミハも 神となる アスス五十年 神無月 八十四万三千 四十八なり 今年ワニヒコ 百の八つ 妹イスズは 十五つ ともに喪に入り 四十八後 阿波の県に 納む後 自ら記し このふみを 社に置くは いつこのためか

29 タケヒト ヤマト討ちのあや

ウカヤからタケヒトに譲位
カンヤマト イハワレヒコの 皇は 御祖天君 四つの御子 母はタマヨリ 兄宮の イツセは多賀の 大君なり 御祖天君 筑紫す 十年治めて 日足ひたる時 天君のを タケヒトに 授けアヒラの 神となる 君宮崎に タネコらと 政執るゆえ 静かなり

神武東征前夜
香具山の臣 ナガスネが ままにふるえば 騒がしく 原の大君は 糧止どむ かれにナガスネ 船止どむ 大物主が 討たんとす 多賀の大君は 驚きて 筑紫に下り ともにす 物主一人 民治む 時にタケヒト アヒラ姫 娶り生む御子 タギシミミ 君歳四十五 物語り 昔の御祖 タカムスビ 日高見生みて 百増す万穂 過ぎて天日の 大御神 天なる道に 民をす 御子のオシヒト 譲り受く 御孫キヨヒト また受けて ワケイカツチの 天君と 天の磐座 押し開き 伊豆の地分きに 治まりて 御祖に継がふ 道開きて 光重ぬる 年の数 百七十九万 二千四百 七十穂経るまで おちこちも 潤ふ国の 君ありて あれも乱れず 天の道 世に流行る歌 乗り下せ ホツマ道平む 天も磐船 シオツチの 翁すすめて ニギハヤか 如何ぞ行きて 向けざらん 諸御子もげに いやちこと 先にをしての 答えつら 君速やかに 御幸なせ

宇佐から安芸
アススキミヱの 神無三日 天御子自ら 諸率きて 御船の到る 速吸門ハヤスヒト 寄る海小舟あまおふね アヒワケが 問えば国守 ウツヒコぞ 海のツリにて 聞く御船 向かふは御船 導くか あひと答えて 詔 椎棹の末 持たしめて 船に引き入れ 名を賜ふ シイネツヒコの 曳く船の 宇佐に到れば ウサツヒコ 人騰屋ヒトアガリヤに 御饗なす かしはてに寄る ウサコ姫 タネコが妻と 父に問ひ 筑紫の男鹿をしと 安芸の国 チノ宮に越す 

吉備高島から河内日下
弥生には 吉備高島に 中国ナカクニまつり治めて 三歳みとせす 内に調い 御船行く アスス五十五穂 如月や 早波立つる 三津岬 名も浪速の 港より 山後川を 遡り 河内日下の アウヱモロ 館に軍 調いて タツタの道は 並び得ず 生駒越ゆれば ナガスネが 軍起こして 我が国を 奪わんやわと 孔舎衛坂 戦い合わす イツセ御子 肘を撃たれて 進み得ず 皇触れる 諮り事 我は日の孫 日に向かう 天に逆えば 退きて 神を祀りて 日のままに 襲わば仇も 破れんと みな然りとて 八尾へ退く 仇も迫らず 御船行く 

千怒から紀の竈山
千怒の山際で イツセ枯る 紀の竈山に 送らしむ 名草のトベが 拒むゆえ 詰みして佐野へ 熊野邑 磐盾越えて 沖を漕ぐ 辻風船を 漂わす イナイイさちて 天の神 母海神や 如何せん くかにたしなめ また海と 入るサヒモチの 海の神 ミケイリもまた 逆波の 海を恨みて 神となる 

タカクラシタ
すへらき御子みこも つつがなく 行く荒坂に イソラなす ニシキド拒み 汚穢をえ吐けば みな疲れ臥し 眠る時 タカクラシタに 夢の告げ タケミカツチに 詔 国さやければ 汝行け 神に答えは 行かずとも 国け剣 くださんと 神もうめなり ミカツチの フツノミタマを 蔵に置く これ奉れ あひあひと タカクラシタが 夢覚めて 蔵をひらけば 底板に 立ちたる剣 進むれば 君の長寝の 汚穢をえ覚めて 諸も覚むれば いくさ立ち 山険しく え絶えて 野にしぢまひて 

八咫烏
皇の 夢にアマテル 神の告げ 八咫やたの烏を 導きと 覚むれば八咫の 烏あり 大翁おおち穿うがつ 飛鳥道 いくさ率き行く

ウカ主
ミチオミが 峰越え宇陀ウダの ウカチ村 ウカ主召せば 兄は来ず 弟は詣でて 告げ申す 兄逆らえど 御饗して 謀るくるりを 知ろしめせ 故にミチヲミ 探すれば 仇成すことを 雄叫びて 汝が造る 屋に居れと 剣よ弓と 攻められて 辞むとこなき 天の罪 己がくるりに 罷るなり 弟はもてなす 君臣も 吉野尾上の ヰヒカリも イワワケ守も 出迎う

香具山のはに
高倉山の 麓には 兄シギが軍 磐割の 要に寄りて 道塞ぐ 皇祈る 夢の告げ 神を祀れよ 香具山の はに葉盤ひらての 神饌ひもろけと 神の教えに なさんとす 弟ウカシ来て 磯城タケル 葛城カタキアカシも みな拒む 君を思えば 香具山の はに葉盤ひらての 神饌ひもろけに 天地祀り 後討たん ウカシが告げも 夢合わせ シイネツヒコは 蓑と笠 を持つウカシ 大父をち大母うはの 民の姿で 香具山の 峰の埴採り 返事かえことは 御代の占形 努々と 慎み採れと 詔 巷に仇の 満ち居れば 斎瓮を造り 丹生川の 宇陀に写せる 朝日原 アマテルトヨケ 二祀りは ミチオミぞまた カンミ孫 アメマヒが曾孫ひこ アタネして 分土ワケツチ山の 御祖神 三日祀らせて 仇を討つ 国見が丘に 軍立て … 十一月七日 シギヒコを 雉に召せど 兄は来ず また遣る八咫の 烏鳴き … 

黄金鵜の鳥
ミチヲミが撃つ オシサカと ウツヒコが撃つ オンナサカ 兄シキの逃げる 黒坂に 挟みて撃てば タケルども ふつく斬れども ナガスネが 戦い強く 当たられず 時にたちまち 氷雨降る 黄金こがねの鳥 飛び来たり 弓弭ゆはすに止まる その光 照り輝けば ナガスネが 戦い止めて

ニギハヤヒ、ナガスネヒコを斬る
君に言う 昔アマテル 神の御子 磐船に乗り 天下り 飛鳥に照らす ニギハヤヒ 妹ミカシヤを 后とし 生む御子の名も ウマシマチ 我が君はこれ ニギハヤヒ アマテル神の 神宝 十種を授く あにほかに 神の御孫と 偽りて 国奪わんや これ如何 時に皇 答え言う 汝が君も まことなら しるしあらんぞ ナガスネが 君のゆきより ハハ矢手を 天に示せば 神をして また皇も 徒靫かちゆきの 出だすハハヤの 神をして ナガスネヒコに 示さしむ 進まぬ軍 守りいる 懇ろを知る ニギハヤヒ 我がナガスネが 生まれつき 天地分かぬ 頑なを 斬りて諸率き 服ろえば 君はもとより クニテルの 忠を写し見

年越えて
年越えて 巨勢のホフリや 層富トベと 猪野ホフリらも 土蜘蛛の 縄張る者を みな殺す 多賀尾張辺が 背低て 足長蜘蛛の 大力 イワキを振りて 寄せつけず 多賀の宮守る 大物主 クシミカタマに 詔 モノヌシ考え 葛網を 結ひ被らせて やや殺す

橿原遷都
統べ治まれば 筑紫より 上るタネコと 物主に 都遷さん 国見よと 御言を受けて 巡り見る 橿原よしと 申す時 君も思いは 同じくと アメトミをして 宮造り

タタライソスス姫
妃立てんと 諸に問う ウサツが申す 事代が タマクシと生む 姫タタラ イソスス姫は 国の色 阿波宮にます これ良けん 皇笑みて 妃とす

大神神社
事代主を 恵比寿神 孫のクシネを 県主 社造らせ 陰(十月)の二十日 祀る大三輪 神奈備ぞ 神寄りに名も カンヤマト イハワレヒコの 天君と あまねく触れて 年サナト 橿原宮の 初年と 御代カンタケの 大いなるかな

30 天君 都鳥のあや

神武東征前夜
御祖筑紫に 日足ひたる時 神のをしては タケヒトに 母タマヨリも 神となる 鏡は河合 八重垣は 分土ワケツチ宮に 預け置く ナガスネヒコは 山崎に 川船拒む 物主が 討たんとすれば イツセ御子 恐れ多賀より 行く筑紫 クシミカタマは オシクモと ナガスネ討てば 逃げ行くを 追ひて河内に 留まりて タケチノコリと アウヱモロ ヤマトの層富に 防がしむ 物主帰り オシクモは 河内に行きて 小塩より 春日を招き 枚岡の 社祀りて 神となる 筑紫のタネコ 喪を治め 四神祀りて アウヱモロ 河内を兼ねて 治めしむ 大物主は 淡海の 大国宮を 造り替え 肥根国コエネノクニ細矛サホコみな 民を治めて 静かなり 

神武即位
今天君の 位成る 昔は御上 分け授く 今は亡きゆえ その使ひ 寄りて諮れば 皆曰く 日の神使ひ ミチヲミと 月の使ひは アタネなり 星の使ひは アメトミと 斎部賜り 禊なす 時に橿原 皇の 御代あらたまの 年サナト 初日サヤヱに ウマシマチ 十種宝を 奉る アメノタネコは 上の代の 古事記し 奉る … サアヱ日嗣と アメトミは 分土ワケツチ宮の 剣持ち アタネは鏡 持ち上る 君高御座 褥九重 アマノタネコは 褥三重 クシミカタマは 褥二重 日の臣歌ふ 都鳥 三重降りて聞く

羽臣と三種宝
天地あわす あますべらきの もろとみ 春日とコモリ 君臣の 心ひとつに 都鳥 形は八民 首は君 鏡と剣 右左まての羽 物部は足 鏡臣 尽き滅ぶれば 民離れ 日嗣踏まれず 剣臣 尽き滅ぶれば もの割れ 世を奪わるる 八咫臣は そろふ春の 民業を 鑑みる目ぞ 垣臣は ヨコマを枯らし 物部もののふの 力る手ぞ このゆえに くさを分けて 授くるは 永くひとつに なるよしを あやに記して 御手づから ふみを御孫に 授けます セオリツ姫は 御鏡を 持ちて春日に 授けます ハヤアキツ姫は 御剣を 持ちてコモリに 授けます たび敬い みな受くる ヤマト日嗣の 都鳥かな 日の臣は しるしの御筥 奉る アタネは鏡 アメトミは 八重垣持ちて アメタネコ クシミカタマに 授くなり 君臣元の しとね敷く 臣百とみももつかさ 寿ことほぎし 万歳よろとし歌ふ 御鏡は イソスス姫に 八重垣は アヒラツ姫に 御璽みしるしは 君の身に添え 三種とも 内つの宮に 納めます 原見のためし 内宮と たたゆもとなり 御飾りを 民に拝ませ 

神武新体制
タネコクシタマ 右左まてにあり 御食みけへ祀り 申す臣 ウマシ物部と 戸を守る ミチヲミ久米と 御垣守 神宣言は 忌部臣 次春十一日 詔 思えばまめは ウマシマチ 世々物部継げ ミチヲミは 望みのままに 築坂と 久米の所を 賜ふなり ウツヒコがこと 船と埴 ヤマト国造 オトウカシ 竹田県使 クロハヤは 磯城の県シ アメヒワケ 伊勢の国造 アタネ神 賀茂の県シ カツテ孫 ツルキネ葛城カツキ 国造ぞ 八咫烏孫 葛野主 … アメトミに 賀茂を写させ 御祖神 祀る針原 鳥見山 アタネを賀茂の タケスミの 政継がせて 国造ぞ

直りの祓(60)
〔神武〕三穂の五月雨 四十日降り ゑ病み流行りて 稲みもち 君に告ぐれば アメタネコ クシミカタマと 安河の 仮屋に祈り 時ゑ病み 治ると稲の 傷み去る 直りの祓 行えば ゑ病みも直り 稲直る ゆえ詔 ワニヒコが 御祖クシヒコ 諫めいる 直きに賜う ヤマト守 三代輪の直き 功に 直り物主 守賜ふ タネコも御祖 ワカヒコが 直き鏡の 殊継げば 直り中臣 守賜ふ ともに継ぐべし

31 直り神 三輪神のあや

弥彦守
橿原(神武)の 八穂ヲヤヱ秋 すへ鹿人しかと タカクラシタが やや帰り 告げ申さくは 臣昔 御言を受けて クニより 筑紫三十二みそふも 山陰ヤマカゲも 巡り治めて コシウシロ 弥彦山辺に 土蜘蛛が ふたわるゆえに 矛用い 五度戦ひ みな殺し 二十四治むと 国統くにすべ 捧ぐれば君 タカクラを 紀国造キのくにつこの おおむらじ 二十年サミト 越後 初穂納めず また向かふ タカクラシタは 太刀抜かず みなまつろえば 詔 タカクラ褒めて 国守と をして賜る 弥彦守 永く住むゆえ いもと婿 アメノミチネを 国造くにつこと 紀館キのたち賜ふ

君嗣なし
二十四年 君嗣なし クメが子の イスキヨリ姫 乙下侍おしもめに 召せば妃に 咎められ ユリ姫となり 殿居せず 妃孕みて 明くる夏 カンヤヰミミの 御子を生む 諱イホヒト 二十六年 祀り御幸の ヤスタレに カヌカワミミの 御子生みて 諱ヤスキネ

タカクラシタとユリ姫の婚約(87)
サミヱ夏 弥彦上りて 拝む時 天の盃 数至る 皇問わく 昔得ず 今飲む如何 その答え 我が国寒く 常飲めば 自ずと好けり 君笑みて 汝は酒に 若やぎつ 肴に賜ふ 乙下侍ぞ 七十七なそなをと二十女はたちめと 越に嫁ぎて 男女を生む 先にサユリの 花見とて 君の御幸は サユ川に 一夜いねます クメがの イスキヨリ姫 膳手かしはてに 御食勧むれば 皇は これを召さんと 告げの御歌 葦原の しけこき御屋に 菅畳 いやさか敷きて 我が二人寝ん これに召し 局にあるを

神武の歌(88)
年サミト 卯月初日に 掖上の 頬間の丘に 御幸して 巡り望めば あなにえや 得つはうつゆふ まさき国 形アキツの トナメせる これ秋津洲 天神は ヤマト浦安 肥根国 ヤマト日高見 細矛千足 シワカミホツマ オオナムチ 玉垣内つ ニギハヤヒ 空見つヤマト

鏡と物主(99)
四十二年 初三日キミヱ カヌナカワ ミミの尊を 嗣御子 鏡の臣は ウサマロと アタツクシネは 物主と 御子の両羽ぞ 国政 御食供え申す ヲモチ君 共に助けよ

中臣物主に任す(133)
七十六年 睦月の望に 詔 我すでに老ひ 政事 直り中臣 物主の 親子の臣に 任すべし 諸臣これと 若宮を 立てよと言ひて 内に入り 弥生十キヤヱ 神となる アヒラツ姫と 物主と 橿原宮に 侍りて 長く喪に入り 生きますの 如に勤むる

タギシミミの変
アメタネコ クシネウサマロ 若宮に 送り諮れば タギシ御子 一人政を 執らんとす 直り三人は 若宮に 問えど答えず 喪に入りて 両羽に任す 見送りも 拒みて延ばす タギシ御子 二弟を絶つ 畝傍峰の サユの花見と 御饗して 室屋に召せば イスス姫 歌の直しを 乞はしむる 若宮札を 取り見れば 五色詠む歌 サユ川ゆ 雲立ち渡り 畝傍山 木の葉さやきぬ 風吹かんとす 畝傍山 昼は雲訪い 夕ざれば 風吹かんとぞ 木の葉さやぎる 若宮は この二歌を 考えて サユに損なう ことを知る カンヤヰ御子に 物語り 昔后を 犯せしも 親子の情け 内に済む 今の政の わがままも 臣に授けて 退くべきを また弄ふ如 如何ぞや 兄が拒みて 送りせず 我ら招くも 偽りぞ これ計らんと ワカヒコに 弓作らせて マナウラに マカゴの鏃 鍛わせて カンヤヰ御子に 靫負わせ ヌナカワ尊 兄と到る 片丘室の タギシ御子 折りに昼寝の 床に臥す 皇御子ヤヰに 宣ふは 兄弟の互ひに 軋らふは 篤く人無し 我入らば 汝射よとて 室の戸を 突き開け入れば 兄怒り 靫負い入ると 斬らんとす ヤヰ御子手足 わななけば 皇御子弓矢 引き取りて 一矢を胸に 二矢背に 当てて殺しつ 亡骸おもむろを ここに納めて 御子の神 

イホの臣
カンヤヰ恥じて うえなひぬ 十市に住みて イホの臣 ミシリツヒコと 名を換えて 常の行ひ 神の道 兄が祀りも ねんごろにこそ

綏靖即位(134)
新都 葛城に建てて 宮遷し ここに迎える 時アスス 百三十四年 ツアト春 初日サナヱの 寿ぎし 末一日サヤヱ 若宮の 諱ヤスキネ 歳五十二 天津日嗣を 受け継ぎて カヌカワミミの 天君と 高丘宮に 初暦 上代の例 御飾りを 民に拝ませ 母を上げ 御上后と 長月の 二十日ツミヱに 亡骸を 白檮尾に送り 装いは アヒラツ姫と ワニヒコと 問わず語りを なし侍る 君臣ともに 洞に入り 神となること 明日聞きて 追い罷る者 三十三人 世に歌う歌 天御子が 天に還れば 三十三追う 忠も操も 通る天かな

綏靖の后
二年春 ミスズヨリ姫 内宮 磯城クロハヤが カワマタ姫 大典侍后 アタが孫 アタオリ姫は 典侍后 春日合江の 諸が姫の イトオリ姫を 勾当に 御子長橋の ヲシテ守 葛城国造 ツルギネが 姫のカツラ姫 内后 妹カツラヨリ 下后 アメトミが姫の キサ姫も 下后また コトメ三十

ホツマ東遷・物部復帰(135)
葉月初日に 詔 我聞く昔 オオナムチ 殊なす時に 三諸神 我あればこそ おおよその 殊なさしむる 先御霊 また業霊は ワニヒコぞ かれオオナムチ 嗣となす 三度巡りて 殊なせば ひとり別れて 三人目の ワニヒコまでが 三輪の神 代々皇の 守りとて 長月十一日 祀らしむ アタツクシネに 大三輪の 姓賜る ワニヒコは 百九十二穂ぞ 筑紫より 御幸を乞えば 身代わりと 直り中臣 下らしむ 豊の直入の 県なる 三十二の主も 法を受く … かれに穂積の 祭りなす それより民の 産土と 祀る住吉 物主と 中臣合わせ 直り神 宇佐に到の 三女神や また天君は ヒコユキを政の臣の 輔となす

イホ臣(137、138、139)
四サヤヱ卯月 イホ臣去る ミシリツヒコの 神となる サヤト長望 后生む 諱シキヒト タマテ御子 六穂ネシヱ冬 イトオリ姫生む イキシ御子 輔(典侍)となる

御笠臣(158)
二十五サアトの 睦月三日 シキヒト立てて 嗣御子 今二十一歳 霜十四日 アメタネコ去る 百八十七 亡骸納む 御笠山 春日の殿に 合い祀る 御笠の姓 ウサマロに 賜いて称ゆ 御笠臣

綏靖崩御(169)
三十六穂皐月 十日ネナト 皇罷る 八十四歳 若宮その夜 喪に入り 四十八夜到り 伊佐川に 禊の輪抜け 宮に出づ 御上の臣は 神祀る 分かれ務むる 若宮の 政事執る 臣は新たぞ

3代安寧即位(170)
時アスス 百七十ネアト 天文三日 御子シキヒトの 歳三十三 天津日嗣を 受け継ぎて タマテミ天の 皇君 昔菊の 花見とて ミスズヨリ姫 カワマタ姫 磯城クロハヤが 舘に行き 御子生まんとし 三日病める 時夫婦来て これを乞う 君の申して タマテ御子 抱え取り上げ 安く生む 磯城が屋朝日 輝けば タマテが御名を 勧め言う 姓を問えば 男はコモリ 女はカツテヒコ 賜う名は 若宮のウシ 守の臣 コモリカツテの 二神を 吉野に祀り母を上げ 御上后と 馴れ御名も 諱もそれぞ 神無十日 亡骸送る 桃花烏田丘

片塩浮穴遷都(171)
キミヱの師走 片塩の 浮穴都

(172)
キミト初 ヌナソ姫立つ 内宮 これはクシネが 合江諸 ヌナタケ娶り イイカツと ヌナソ生むなり 磯城ハエが カハツ姫典侍に これの先 オオマがイトヰ 長橋に 生む御子諱 キロキネの トコネツヒコぞ かれ内を 大典侍となす カワツ姫 生む御子諱 ハチキネの シキツヒコ御子

(173、175、180)
四穂ツヤヱ 卯月十五日に ヌナソ姫 生む御子諱 ヨシヒトの オオヤマトヒコ スキトモぞ タケイイカツと イツモシコ なる食国臣 オオネ臣 なる斎主 六穂ヲシヱ 睦月十五日に 内の生む 諱トキヒコ クシトモセ 十一の初三日 ヨシヒトの 今八歳にて 嗣御子

(207)
三十八サミヱの 師走六日 皇罷る 若宮の 裳入り四十八 掃きもなし 伊佐川禊 宮に出で 政事聞く 臣分けて 浮穴の神 御饗なす 秋亡骸を 畝傍山 ミホトに送る 歳七十なり

4代懿徳(208)
時アスス 二百八穂サミト 如月四日 ネアヱ若宮 歳三十六 天津日嗣を 受け継ぎて オオヤマトヒコ スキトモの 天皇と 称えます 天の宣もて 拝ませて 曲尾暦 改めて 御祖送りの 穂積一 師走の六日と 喪に入り 長月十三日 母を上げ 御上后と 睦月五日 軽曲尾の 新都 遷し如月 十一に立つ アメトヨツ姫 内宮 磯城ヰテが姫の ヰズミ典侍 フトマワカが姫 イイ姫を 勾当

(212、229、241)
五年 弥生弓 住江に御幸 海松を見て 内の生む御子 カヱシネの 諱ミルヒト 内の父 イキシ大君 イイ姫が タケアシに生む タヂマ御子 諱タケシヰ 二十二年 如月ツシトは 十二ヲシヱ カエシネ御子を 嗣成る 今年十八なり 三十四年 長月八日に 君罷る 若宮神に 仕えんと 裳は一穂まで 御饗なす 生きます如く 明くる冬 送る畝傍の 真名子谷 七十四に坐して 送る臣 問わず語りや 若君も 送り治めて みな帰します

5代孝昭(243)
時アスス 二百四十三年 ツミヱ春 初ツウヱは 九日キシヱ 天津日嗣を 受け継ぎて カヱシネ天の 皇君 飾り拝ませ 卯月五日 御上后と 母を上げ 葛城掖上 池心 都遷して 初年に イツシココロを 食国臣 君歳三十一 境岡 若宮の時 ワカハヱが ヌナギ姫は典侍 サタヒコが 姫のオオヰ姫は 長橋に ヲシテ扱う 仮典侍よ 内侍六人 下四人 アオメ三十人 二十九年 キシヱ初三日 后立つ ヨソタリ姫の 歳十五ぞ 昔弥彦に ユリ姫を 賜えば生める アメヰダキ 子のアメオシヲ 孫娘 ヨソタリはこれ 三十一年 内宮の兄 オキツヨソ なる食国臣 四十五年 皐月十五日に 后生む 諱オシキネ アメタラシ ヒコクニの御子 四十九年 キミヱ初日に 后生む 諱オシヒト ヤマトタリ ヒコクニの御子 生む時に 朝日輝き 六十八年 睦月十四日に オシヒトを 若宮となす 歳二十 明日オシキネを 大君とし 春日を賜う 八十三年 秋葉月五日 君罷る 歳百十三ぞ 臣后 みな留まりて 喪に仕ふ 御子神祀る 歳三十五 親に継がえて民治む かれ兄大君 うえなひて その子オオヤケ アワタオノ カキモトイチシ 十臣忠 君年毎の 葉月五日 八夜の喪祀り 真なるかな

6代孝安(326)
時アスス 三百二十六年 初の七日 天津日嗣を 受け継ぎて タリヒコクニの 天君 諱オシヒト 位成る 飾りを民に 拝ませて 磯城ナガハヱが ナガ姫を 大典侍后 十市ヰサカ ヒコがヰサカ姫 内后 長橋に居て ヲシテ守 すべて十二なり 二年冬 室秋津島 新都 十一穂群雲 穂虫を つくれば君の 自らに 祓いカセフの 祀りなす かれ蘇り 瑞穂あつ よりて穂積の 祀りなす 二十六年春 如月十四 春日大君の オシ姫を 入れて内宮 今年十三 三十三年後 葉月十四 送る御上の 亡骸を 博多の洞に 納むなり 臣女の骸も みな納む 生きる三人も 追い罷る 天御子宣や 五十一年 長月初日 后生む 諱ネコヒコ オオヤマト フトニの御子ぞ 七十六年 春睦月五日 ネコヒコの 歳二十六立つ 嗣御子 九十二年春 駿河宮 はふり原の絵 奉る 御子申せども 君受けず 御代百二年 睦月九日 君罷る歳 百三十七 御子喪は納む 四十八後 若宮にいて 政事 長月三日に 亡骸を タマテに送り 五人追う ともに納めて アキツ神かな

32 富士と淡海 見つのあや

7代孝霊(428)
時アスス 四百二十八年 初十二日 天津日嗣を 受け継ぎて ヤマトフトニの 天津君 諱ネコヒコ 諸諮り 天の御孫の 法を以て 民に拝ませ 母を上げ 御上后と 去年師走 四日に黒田の 廬戸宮 遷して今年 初暦 二年如月 十一に立つ 磯城のオオメが ホソ姫を 后ぞ春日 チチハヤが ヤマカ姫なる 典侍妃 十市マソヲが マシタ姫 勾当となる 内四人 乙下おしもも四人 三年春 オオミナクチと オオヤクチ ともに宿禰と

三つ子(430、440)
〔孝霊〕三年春 … 夏内侍 ヤマトクニカが 三つ子生む 名は皆ヤマト モモソ姫 イサセリヒコに ワカヤ姫 母もヤマトの オオミヤ姫 十一冬妹 ハエを内 十三年師走初 ハエ姫も また三つ子生む 名は兄ワカ タケヒコの中 ヒコサシマ 弟ワカタケヒコ 母も上げ ワカオオミヤ姫 … 二十五春 いつも初十一 県召し みな物賜ひ 詔 もし一腹三子 生む者は 帝に告げよ 下民も 賜物あるぞ その故は 天の御孫の サクヤ姫 三つ子生むより 後聞かず 我今三つ子 生むにつき ほのかに聞けば 三つ子をば 間引くと名付け 殺すとや 今よりあらば 罪人ぞ 我が子も人は 天の胤 鹿犬千より 人ひとり タケミナカタの 宣りなりと 御言定まる 国司 民に触れんと 諸帰る

原山・淡海の絵(452)
〔孝霊二十五年一月の〕明日十二日朝 諏訪はふり 原山の絵を 奉る 君これを褒む 同じ時 シラヒゲの孫 アメミカゲ 淡海の絵を 奉る 君面白く 賜物や ある日春日に 宣うは 我昔この 絵を見れど 宛て無で高く これを棄つ 今山沢の 絵合わせは 割札合わす よきしるし 原見の山の よき草も 五百歳前に 焼け失せし 種も再び なるしるし にお海山を 潤せば 千代見る草も 生ゆるぞと 楽しみたまひ

原見山御幸(463)
〔孝霊〕三十六年 初春十日に モトキネを 嗣となして … 弥生七日 原見山へと 御幸なる その道なりて 黒田より 香具山賀茂や 多賀の宮 諏訪酒折の タケヒテル 御饗して待つ 山登り 下る須走 裾巡り 梅大宮に 入り居ます 春日申さく 峰に得る 御衣の紋草 千代見かや 諸食わんとて 煮て苦し 誰も得食わず

九山
中峰の あては淡海あわうみ 八峰やつみねは 裾の八湖やつうみ 三つ埋まり 焼くれど中は 変わらじと 御作りの歌 なかはふり なかば沸きつつ のヤマト とも鎮まりの 九山このやまよこれ かく詠みて 山のさら名と おほす時 田子浦タコノウラ人 藤の花 捧ぐるゆかり 原見得て 名を生む御歌 原見山 ひとふるさけよ 藤蔓の 名をもゆかりの 九山よこれ これよりぞ 名も富士山フジノヤマ

伊豆浅間御子
南路を 都に帰り 梅宮の ハフリ穂積の おしうとに 伊豆浅間御子 ヤマツミの 四神移して 安河原

神宝
時タケヒテル 玉川の 神宝書かんたからふみ 奉る これ天御孫 原大君 その子神代の 御法みのり得て 今に永らえ 君笑みて 子のタケトメを 臣に請う タケツツクサの 政継ぐ タケタの親ぞ 神宝 出雲に納む

孝元即位(504)
時アスス 五百四穂睦月 十四日君 天津日嗣を 受け継ぎて ヤマトクニクル 天神あまつかみ 天の御孫の ためしなり 飾りを民に 拝ませて 御上后と 母を上げ 十二の局に 后立つ 四年の弥生 新都 軽境原 五穂セ水無 内ウツシコメ 生む御子は ヤマトアエクニ オオヒコぞ 六穂長月六日 廬戸宮 亡骸おもむろ納む 馬坂や 七穂如月二日 ウツシコメ 内宮となる ウツシコヲ なるケクニ臣 師走初 日の出に妃 生む御子は 諱フトヒヒ ワカヤマト ネコヒコの御子 … 十一弥生 望にまた生む トト姫は ともに御幸や へソキネが ヤマトイケスに 御饗なす 姫のイカシコメ 膳に 召す内妃 今年十四 十三穂初三日 イカシコメ 生む御子の名は オシマコト 諱ヒコフト 十四文月 ハニヤス姫生む ハニヤスの 諱タケハル これ河内カウチ アオカキカケが 姫の乙下 なる内妃

イカシコメ再即位(567)
七年初十二 イキシコメ 立てば内宮 これの先 君召す時に オミケヌシ 諫め申さく 君聞くや シラウトコクミ 母犯す 汚名かな今にあり 君真似て 汚名かなかぶるや ウツシコヲ 答え姪なり 母ならず 曰く伊勢には と継ぎて 生みの親なし むかし叔母 姪今はつづ 生む子あり 連なる枝の オシマコト 母は違ひぞ また答え 天に月一つ 母は月 下侍は星よ これを召す 嘆きて曰く 大御神 天の道なす 代々の君 継ぎ受け治む 天日嗣 汝が政 諫めずて おもねり君を 穴にする 心汚し 君如何 我が御祖神 離れんや 穢れ食まずと 言い終わり 帰れど君は これ聞かず ミケヌシ親子 噤みおる 

33 神崇め ヱ病あや

崇神の妃たち(621)
時アスス 六百二十一年 キナヱ春 睦月ネシヱは 十三キシヱ ヰソニヱの御子 歳五十二 天津日嗣を 受け継ぎて ミマキイリヒコ 天津君 三種使ひも 天ためし 民に拝ませ 母を上げ 御上后と 百二十一 大母の歳 百六十二 大御后と 初年の 如月サウト 十六ツミヱ オオヒコの姫の 今年十一 召して妃の ミマキ姫 紀アラカトベが トオツアヒ メクハシ内侍 大典侍に 近江がヤサカ フリイロネ 仮典侍となる 尾張が姫 オオアマ内侍 長橋の をして執る守 これの先 メクハシが生む トヨスキ姫 オオアマが生む ヌナギ姫 メクハシが生む ヤマトヒコ 諱ヰソキネ ヤサカ生む ヤサカイリヒコ オオキネぞ かれ母を上ぐ 三年長月 磯城瑞籬に 新都

鏡と剣をさらに造る(624)
〔崇神〕四穂よほ(十月)末三日みか 詔 おやの授く 種物くさもの クニトコタチは 神をして アマテル神は 八咫やた鏡 オオクニタマは 八重垣と 常に祀りて 身と神と 器もともに 住み来たる やや稜威いつ恐れ 安からず アマテル神は 笠縫に トヨスキ姫に 祀らしむ オオクニタマは ヌナギ姫 山辺の里に 祀らしむ イシコリトメの 孫鏡 アメヒトカミの 孫剣 さらに造らせ 天照らす 神のをしてと この三種 あま津日つひつぎかんたから

半ば枯る、民散る(625)
〔崇神〕五年ゑ病みす 半ば枯る 六年民散る 言宣に 治し難しかれ つとにおき 罪神に乞う 二宮を さらに造らせ 六歳秋 オオクニタマの 神遷し 長月十六日夜 明日の夜は アマテル神の 宮遷し 豊の明かりの 色もよし

朝日の原に御幸、オオタタネコ斎主に(627)
七穂如月 三日詔 我が御祖 開くもとひは 盛んなり 我が代にあたり をえあるは 政届かぬ 咎めあり けだし究めて 寄るなりと 朝日の原に 御幸して 八百万招く … モモソ姫の神託
湯の花の モモソ姫して 宣こちに サツサツス歌 去る民も つすに祀らで をゑに乱るさ 君問ふて かく教ゆるは 誰神ぞ 答えて我は 国神くにつかみ 大物主ぞ 君祀る ことしるしなし 湯浴びして すがに祈りて 告げ申す 我敬えど 受けざるや この夜の夢に 我はこれ 大物主の 神なるが 君な憂いそ 治せざるは 我が心あり 我が果つ子 オオタタネコに 祀らさば 等しくなれて 遠つ国も まさに服らふ … 葉月七日 トハヤがチハラ メクハシ姫 オオミナクチと イセヲウミ 三人帝に 告げ申す 夢に神あり タタネコを 大物主の 斎主 シナガオイチを オオヤマト クニタマ神の 斎主 なさばむけべし 君これに 夢あわせして 触れ求む オオタタネコを 千怒スエに ありと告ぐれば 君八十と 千怒に御幸し タタネコに 誰が子ぞと問う 答えには 昔物主 スエスミが イクタマと生む 物主の 大三輪神の 果つ子なり … 陰月初日に イキシコヲ 八十甍成し これをもて オオタタネコを 斎主 大三輪の神 ナガオイチ オオクニタマの 斎主 あまねく触れて 神崇め 神名文なす 神部して 八百万神を 祀らしむ ゑ病みむけいえ そろ実り 民豊かなり 八穂サミト 卯四日 タカハシ 村イクヒ うまささ作り 三輪神に その神酒うまし 師走八日 タタネコ遣りて 御幸なる イクヒが酒に 御饗なす 

玉返し法(629)
〔崇神〕九穂弥生 望の夜夢に 神の告げ かしき矛奉て 神祀れ 宇陀隅坂も 大坂も 川瀬相模を 残りなく これ罪人の 誣い留む ゑ病みなすゆえ 卯末二日 大臣カシマと タタネコと 玉返し法 祀らしむ かれに明るき

「四道将軍」(630)
〔崇神〕十穂そほネヤト つきすえ四日よか 詔 民す教え 神祀り ややヲエ去れど 遠国(トオツクニ) 粗人法を まだ向けず かれ四方にヲシ 遣はして 法教えしむ 長月九日 オオヒコをして 越のヲシ タケヌナガワを ホツマヲシ キビツヒコして 西南(ツサ)のヲシ タニハチヌシを 丹波ヲシ 教え受けずば ほころばせ をして賜り いくさ立ち

34 ミマキの代 任那のあや

ミマキイリヒコあわや、タケハニヤスの乱(630)
瑞籬(崇神)の 十穂長の十七日 越の御使 オオヒコ帰り 申さくは 行く山背の 奈良坂に 乙女が歌に 見よミマキ イリヒコあわや 己が副 盗みしせんと 尻つ戸を い行き違いぬ 前つ戸よ い行き違いて 窺わく 知らじとミマキ イリヒコあわや しるしかと 君これ諮る モモソ姫 生まれ聡くて これを知る 君に申さく これ徴 タケハニヤスの 背くなり我聞く妻の アタ姫が 香具山埴を 領巾に入れ 祈りて国の 物実と これに如あり はや諮れ 諸諮るうち はや既に タケハニヤスと アタ姫と 軍起こして 山背と 妻は大坂 道分けて ともに襲うを 詔 イサセリヒコを 大坂へ 向かひアタ姫 討ち破り オオヒコと ヒコクニフクと 向かわしむ ヒコクニフクは 山背の ワニタケスキに 斎瓮据え 兵率きて 軍立て 木萱踏みむけ 手膳の 軍まず勝つ 奈良坂ぞ またオオヒコは 下道に ワカラアクラと 相挑む ハニヤスヒコは 川北に ヒコクニフクを 見て曰く 汝何故 拒むぞや クニフク曰く これ汝 天に逆ふを 討たしむと 先争いて ハニヤスが 射る矢当たらず クニフクが 射る矢は当たる ハニヤスが 胸撃ち殺す その軍 破れ逃ぐるを 追ひ討てば 我君我君と 流れ去る 軍収めて みな帰る
陰月(十月)初日に 詔 内は向けれど 遠つ荒るる 四道の軍 発つべしと 末二日に発つ 四方の御使ゑ人

モモソ姫と大物主(630)
モモソ姫 大物主の 妻となる 夜には来たりて 昼見えず 明けなば君の 御姿を 見んと留むれば 神の告げ 言著し 我明日 櫛笥に入らん 我が姿 な驚きそと モモソ姫 心怪しく 明くる朝 櫛笥を見れば 小蛇あり 姫驚きて 叫び泣く 大神恥ぢて 人と成り 汝忍びず 我が恥と 大空踏んで 諸山モロヤマ 姫仰ぎ恥ぢ つきおるに 箸にミホトを 突き罷る 大市に埋む 箸塚や 昼は人手に 夜は神の 大坂山の 石運び 諸あひ継ぎて 手輿かて 墓成るの歌 大坂も 月のを添え 石群いしむらを 手輿に越さば 越しがてんかも

トヨキヒコとイクメイリヒコの夢(668)
四十八年 初十日ヲアヱ トヨ君と イクメ君とに 詔 汝ら恵み 等しくて 継ぎ知ることの 夢すべし ともに湯浴びし 夢なして トヨキ申さく 三諸ミモロに 東に向き八度 ほこゆけし イクメ申さく 三諸ミモロに 四方に縄張り 雀追ふ 君この夢を 考えて 兄が夢ただ 東向き ホツマ治めよ 弟は四方 民を治むる 嗣なり 卯十九日ツミヱ 詔 ヰソサチ立てて 嗣御子 トヨキイリヒコ ホツマ司ぞ

ツノガアラシト(678)
瑞籬の 五十八穂葉月 御幸して 気比大神に 詣でます 諸祝ふ時 角一つ ある人ここに 漂えり 言葉聞きえず 原の臣 ソロリヨシタケ よく知れば これに問はしむ その答え 我は韓国からくに 君の御子 ツノガアラシト 父が名は ウシキアリシト 伝え聞く 聖の君に 服らふと 穴戸に到る イツツヒコ 臣に曰くは この国の 君は我なり ここに居れ 人なり見れば 君ならず さらに帰りて 都路と 浦島訪ね 出雲経て ややここに着く 神祭り 君ここにあり かれツノガ 召して仕えば 忠ありて 五歳に賜ふ 名は任那 上峰錦 国苞に 帰るアラシト 任那国 これ建ち初めぞ

神の白石
これの先 黄牛あめうしもの ほせり アラシトけば 牛見えず をきなの曰く これ押すに 先に儲けて これ食わん ぬし来たりなば あたいせん すでに殺しつ もし先で 値を問はば 祀る神 得んと答えよ 尋ねれば 村君むらきみ牛の 値問ふ 答えて祀る 神得んと 神の白石しろいし 持ち帰り 寝屋に置く石 なる乙女おとめ アラシトこれと とつがんと 思ひに 姫せぬ 帰り驚き 妻に問ふ 曰く乙女は 東南きさに去る あとを訪ねて 追ひ到り 船をかめて ついにる ヤマト難波ナミハの 姫社ヒメコソの 宮よりでて 豊国トヨクニの 姫社宮ヒメコソミヤに 神となる

出雲フリネ討伐(680)
六十文月 十四詔 タケヒテル 昔捧げし 神宝 出雲にあるを 見まくほし タケモロズミを 遣わせば 神主フリネ 神祝かんほきに 筑紫に行きて 弟ヰイリネ 宮より出し 弟ウマシ カラヒサと子の ウカツクヌ 添えて捧ぐる 後フリネ 帰てヰイリネ 責め曰く 幾日も待たで など畏る 出雲は神の 道の元 八百万ふみを 隠し置く 後の栄を 思わんや たやすく出だすと 恨みしが 忍び殺すの 心あり 兄のフリネが 欺きて ヤミヤの玉藻 花かよみ 行き見んとてぞ 誘い来る 弟頷きて ともに行く 兄は木太刀を 脱ぎ置きて 水浴び呼べば 弟もまま 兄まずあがり 弟が太刀 佩けば驚き ヰイリネは やみやみ淵に 消え失せぬ 世に歌う歌 八雲たつ 出雲タケルが 佩ける太刀 葛籠さわまき あわれ錆なし カラヒサは 甥ウカツクヌ 連れ上り 君に告ぐれば キビヒコと タケヌワケとに 詔 フリネ討たれて 出雲臣 畏れて神の 祀りせず ある日ヒカトベ 若宮に 告ぐる我が子の この頃の歌 玉藻しづ 出雲祀らば まくさまじ 読みヲシフリ ネ御鏡 三十九宝の ミカラヌシ だに御くくりみ 玉しずか うましみかみは ミカラヌシやも 歌のあや 神の告げかと 君に告げ 出雲祀れと 詔

池掘らん(682)
〔崇神〕六十キナトの 天文月 キミトはツヤヱ 詔 民業はもと 頼むとこ 河内狭山は 水足らず 業怠れば 生業の ためにヨサミと カリサカと カエオリの池 掘らんとて 桑間の宮に 御幸なる

崇神崩御(689)
明くる年 ネヤヱ初二日 天日嗣 御代新玉の 葉月十一 神上がりとぞ 世に触れて 君と内臣 喪はに入り 外の臣やはり 政 神無十一日に 亡骸おもむろを 山辺に送る この君は 神を崇めて 穢病ゑやみ治し 三種宝を 改むる その言宣は 大いなるかな

35 ヒボコ来たる スマイのあや

垂仁即位(689)
時アスス 六百八十九年 ネヤヱ春 睦月ツアトは ヲミヱ御子 諱ヰソサチ 歳四十二 天津日嗣を 受け継ぎて イクメイリヒコ 天君と 飾りを民に 拝ましむ … 母今七十九 御上とし 大母今年 百八十九

ホンツワケ誕生(690)
〔垂仁〕二年如月 サホ姫を 内宮に立つ 新都 遷す纏向 珠城宮 師走生む御子 ホンツワケ あえもの言わず

サホヒコの反乱(692)
〔垂仁〕四穂長月 ツウヱはヲナヱ サホヒコが 后に問ふは 兄と夫 いづれ篤きぞ 后つひ 兄と答ふに 誂うる 汝色もて 仕ゆれど 色衰いて 恵み去る あに永からん 願はくは 我と汝と 御代踏まば 安き枕や 保たんぞ 君を誣いせよ 我がためと 紐刀持て 授く時 兄が心根 諫めをも 効かぬを知れば サホ姫の 中子わななき 紐刀 せんかたなくも 袖内に 隠し諫めの 瀬水無月 初日皇 御幸して 久米高宮に 膝枕 后思えば この時と 涙流るる 君の顔 君夢覚めて 宣ふは 今我が夢に 色大蛇おろち 首に纏えて サホ(騒)の雨 面濡らすは 何の性 后答えて 隠し得ず 臥しまろびつつ あからさま 君の恵みも 背き得ず 告ぐれば兄を 滅ぼせり 告げざる時は 傾けん 恐れ悲しみ 血の涙 兄が誂え ここなりと 君が昼寝の 膝枕 もしや狂える 者あらば たまさかに得る 功と 思えば涙 拭く袖に あふれて御顔 潤せり 夢は必ず この答え 大蛇おろちはこれと 紐刀 出せば皇 詔 近方にある ヤツナダを 召してサホヒコ 討たしむる 時にサホヒコ 稲城成し 堅く防ぎて 降り得ず 后悲しみ 我たとひ 世にあるとても シム枯れて 何おもしろと 御子抱き 稲城に入れば 詔 后と御子を 出すべしと あれど出ださず ヤツナダが 火攻めになせば 后まず 御子抱かせて 城を越え 君に申さく 兄が罪 逃れんために 我入れど ともに罪ある ことを知る たとひ罷れど 御恵みを 忘らで後の 定めには タニハチウシの 姫をもがな 君が許しの ある時に 炎起こりて 城崩る 諸人去れば サホヒコと 妃も罷る ヤツナダが 功褒めて 賜ふ名は タケヒムケヒコ

初七夕、相撲の起源(695)
〔垂仁〕七穂文月 初日コモツミの 子の筒木 タルネがカバヰ ツキ姫を 立つ妃 妹の カグヤ姫 なる内侍五日 寿ぎし 初七夕の 神祀り ある臣君に 申さくは 當麻(タエマ)クエハヤ 大力 地金を延ばし 角を割く 金弓造り (とこ)語り これを踏み張る 我が力 世に比べんと 求むれど なくて罷るや ひた嘆く 君諸に問ふ クエハヤに 比ぶる力 あらんをや 申さく野見の 宿禰なり ナガオイチして これを召す ノミの宿禰も 喜べば 明日比べんと 詔 力比ぶる 神の法 相撲(すまい)の里に 塙輪成し タエマは()より 野見は西()に 合ひ立ち踏めば 野見強く クエハヤが脇 踏みてまた 腰踏み殺す 時に君 団扇を上げて とよませば 臣も喜び クエハヤが 金弓および 當麻(タエマ)国 野見に賜り 家は妻 嗣無し野見は 弓取りぞこれ

36 ヤマト姫 神鎮むあや

ヤマト姫誕生(697)
珠城宮(垂仁) 九穂こほつき十六そむ 后夢 ヤマトオオクニ 神のシテ 賜えば孕み 月満ちて 生まずに病めて 歳後とせのち 長月十六日に 生む御子の 名はヤマト姫 あと病みて 神無かな月二日に 母まかる 筒木カバヰの 月の神 嘆き祀りて

「丹波の四女王」(703)
〔垂仁〕十五そゐとしの 如月きさらぎもちに 召す丹波 道のウシの ヒハス姫 ヌハタニイリ姫 マトノ姫 アサミニイリ姫 タケノ姫 葉月初日に ヒハス姫 妃に立てて 妹弟いと三人 典侍と内侍に タケノ姫 一人返せば 恥ずかしく 輿こしよりまかる 堕国おちくに

ホンツワケ(711)
〔垂仁〕二十三穂長月 ツミヱ初の 二日詔 ホンツワケ ひげ生ひいさち もの言わず これ何故ぞ 諸諮り ヤマト姫して 祈らしむ 神無八日君 殿に立つ 時ホンツワケ 飛ぶくぐい 見て曰くこれ 何者や 君喜びて 誰かこの 鳥捕り得んや ユカワタナ 臣これ捕らん 君曰く 捕り得ば褒めん ユカワタナ 鵠飛ぶ方 追ひ尋ね 但馬路出雲 ウヤヱにて ついに捕り得て 根月二日 ホンツの御子に 奉る 御子もて遊び もの言えば ユカワを褒めて 鳥取部 姓賜る

「垂仁五大夫」(713)
〔垂仁〕二十五穂の 如月八日に 詔 タケヌガワケと クニフクと 御笠カシマと トイチネと タケヒ等諸に 我が御祖 ミマキは聡く ホツマ知る 誤り正し 遜り 神を崇めて 身を懲らす かれそろ篤く 民豊か 今我が代にも 怠らず 神祀らんと

昔トヨスキ
弥生八日やか アマテル神を トヨスキは 放ちてつける ヤマト姫
昔トヨスキ 神の告げ ()(たま)()(かづ)与謝(ヨザ)に行く この橋立ては 笠縫の ()より宮津の 松に雲 棚引き渡す 

崇神政治体制(659)←ヒボコ渡来
瑞籬みづかき(崇神)の 三十九弥生やよ三日 詔 くに大臣おとど タケミクラ 斎主とし イマスの子 タニハミチウシ 御食みけもり アメノヒオキは 神主に フリタマは禰宜 トヨケ神 アマテル神を 祀らしむ ミチウシ御食みけの 神恵かんめぐみ よき御子得たり

トヨスキ帰る
トヨスキは 筏幡宮に 帰ります また神の告げ 大神の 形見いただき 近江より 美濃を巡りて 伊勢飯野 (タカ)()()(ガワ)(すず)(とど)む 高宮造り 鎮めます 

ヤマト姫御杖代に(710)
〔垂仁〕二十二穂師走 二十八日に ヤマト姫ヨシコ 今年十一 神に貢ぎの 御杖代 … 年越えて 出で立つ初日 明野原 伊勢高宮に 入りませば 叔母と仕えて 長月姫 かゐもて兄の こと祈る かれ飯の宮 

伊勢遷都(飯野から磯辺へ、さらにサコクシロへ)(713)
三歳後 トヨスキ(よはひ) 百三(ももみつ)で 御杖ならずと 見習わせ かねて願えば このたびは ヨシコを内の 大御子(をみこ)とし ()(たま)()(かつ)ぎ 飯野より 磯辺に遷し 鎮めます よ良き宮処 ()にありと ワカゴを遣れば 五十(ヰス)()(ガワ) 二百八(ふもや)(よろ)()の サルタヒコ ワカゴに曰く 我昔 神の賜物 サコクシロ 宇治宮に入れ 荒魂 八万穂待ちし 神宝 天つ日嗣の 逆矛木 美しき鈴 ワイキタチ カカンノンテン 時待ちて 道顕せと 朧げに 物ならずかれ 子にも得ず その主を待つ これ授け 永田生まれの ツチギミは 元に帰らん 持ち帰り 告げよとて去る オオワカコ 帰り申せば ヤマト姫  宇治(ウヂ)に到りて 見て曰く これ神風(かんかぜ)の 伊勢の宮 ()(くさ)は祀る 源と (いやま)ひ返す あぐら石 オオハタヌシと 八十供に 五十鈴原の 草刈らせ 遠近山の 木を伐らせ 元末戻し 真中もて 大宮柱 敷きたてて 千木高知りて 宮なれば 帝に申し 

サコクシロの祭祀(714)
詔 御笠の大臣おとど 斎主いわいぬし ワタラヒとみは 神主かんぬしに 阿倍タケヌカを 身代わりと 和邇クニフクを 内代わり 物部トチネを 御上から タケヒ朝臣あさとを 御子代わり 各々詣で 二十六穂の 長月十六の日 ()御神(おんかみ) 五十(ヰソ)(スス)(ガワ)の サコクシロ 宇治に渡まし 十七日(そなか)() 身丈柱を 納めしむ これ皇の 自らの タケの都に ソロ祈り … 神も喜び 告げ曰く 昔我が住む サコクシロ 敷浪寄する 伊勢の宮 永く鎮まり 守るべし トヨケの神と 諸共ぞ ヤマト姫より これを告ぐ 君喜びて 和幣にきてなし トヨケの神へ をし鹿は 三輪のミケモチ 斎人いわひとは タニハミチウシ

37 鶏合せ 橘のあや

神部定めて(715)
珠城宮(垂仁) 二十七穂葉月 七日ヲミト 兵器を 見手倉に 占問えば良し 弓矢太刀 諸の社に 納めしむ 神部定めて よりよりに 器に祀る 初めなり

ヤマトヒコ崩御(716)
〔垂仁〕二十八穂神無 五日罷る 兄ヤマトヒコ 根月二日 亡骸おもむろ 送る 月坂に 侍る人らを 生きながら 埋めば叫び つひに枯る 犬鳥食むを 聞し召し 哀れに思す 詔 息をめくまで 枯らするは 痛ましいかな 古法も 良からぬ道は 止むべしぞ

後継者兄弟(718)
〔垂仁〕三十穂みそほはつ六日むか 詔 御子ヰソキネと タリヒコと 望むところを 申すべし ヰソキネ曰く 弓矢得ん タリヒコ曰く くらい得ん きみふた御子みこの 望むまま 弓矢賜る 兄の宮 おとは位を 継ぐべしと

ヒハス姫と埴輪(720)
〔垂仁〕三十二穂文月 六日罷る 后ヒハスの 見送りは 諸臣召して 詔 先の追ひ枯れ 良からねば この行ひは 如何にせん 野見の宿禰が 申さくは 生けるを埋む ためしとは あに良からんや 諮らんと 出雲の土師部 百召して 埴偶はにてこおよび 種々の 形造りて 奉る 今より後は 土師物を 生けるに代えて 陵に 埋えてためしと なすべしや 君喜びて 詔 汝が図り 我が心 良しと埴輪の 奉物を 後のためしと 定まりて 野見宿禰を 篤く褒め 形し所を 賜りて 土師の司ぞ

誰に遣りても二は恨む(721)
〔垂仁〕三十三みそみとし 三輪のタタネコ 山背ヤマシロが たちに到れば サラス問ふ 娘一人ひとりを 三家みやが乞ふ 誰に遣りても は恨む めさしたまへ 答え言ふ 明日あす賀茂神の まえにて め定めんと ともに行く おやの神に 和幣にきてなし 奉る和歌 天地の 御代の栄を 祝はるる 女男の御祖の 神ぞ尊き 時に神 告げの御歌に 世の中に 物思ふ人の ありと言ふは 我を頼まぬ 人ぞありける 神歌を 聞きてタタネコ 曰くこれ 迷う故なり 今よりぞ 百日詣でて 来たりませ 我計らんと 行く貴船 タタネコが歌 淡海アワウミの ヅミの神と スミ之江ノヱも ともに貴船の 守り神かな 賀茂に行き ワケイカツチの 神もまた 和幣にきてと和歌と 人草を ワケイカツチの 守る故 御代は治まる 鴨の神風 タタネコは 帰り申さく 賀茂の宮 荒るるをふして おもみれば 賀茂と伊勢とは 御祖なり すでに破れて 稜威いつ細し 守り細きは おとろひか 君聞し召し タタネコが 孫クラマロを いわひぬし 名もオオカモと 賀茂やしろ さらに造らせ 根月望 御祖渡し 明日十六日 ワケイカツチの 宮遷し オオタタネコを 小男鹿さをしか和幣にきて納むる 次の年 賀茂に御幸の 道造り さらに打橋 造り木の 木津は仮橋 弥生初日 八十供揃え 都出て 玉水宿り 二日河合 みてぐら納む 御祖神 山背フチが 御饗なす 三日貴船より 賀茂に行き ワケイカツチの 大神に みてぐら納め

鶏合わせ
カモツミが 新殿前に 鶏蹴合ふ 君楽しめば (わらんべ)が 色良き鶏を 褒め曰く いよカマハダよ 君解けず 右左(まて)に問ふ今 童が カマハダは何 曰くこれ 流行り歌なり オホクニが 娘カマハダ 美しく 天に輝く かれ名付く 四日宇治に行く 道すがら 良き人得んは 徴あれ 矛取り祈り 大亀を 突けば成る石 これ徴 宇治の亀石 帰る後 サラズが娘 呼び上せ カマハダトベを 后とし イワツクワケの 御子を生む (いみな)トリヒコ フチが()の カリハタトベも ミヲヤワケ ヰイシタリヒコ ヰタケワケ 三人(みたり)生むなり

千剣(727)
〔垂仁〕三十九穂()月(十月) ヰソキネは 打身で造る 千剣を アカハダカとも 名を付けて オシサカに置く この時に しとりへたてへ 大穴師 弓矢はつかし たまへかみ 天の刑部 地の僻部 太刀佩かせ部の 十品部を 合わせ賜る ニシキ御子 千剣移す イソノカミ

ヲナカ姫(775)
〔垂仁〕八十七穂やそなほの 如月きさらぎ五日いかに ニシキ御子 いもとに曰く 我老いぬ 御宝れよ ヲナカ姫 いなみて曰く 手弱女たおやめの ほこら高くて また曰く 高ければこそ ワカ造る 神の祠も 懸橋の ままと歌えば ヲナカ姫 物部トチネに またさづ

丹波ミカソ
丹波ミカソが 家の犬 名はアシユキが 食ひ殺す 狢の腹に 八尺瓊の 玉あり納む イソノカミ

イヅシ小刀(776)
〔垂仁〕八十八文十日 詔 我聞く昔 新羅御子 ヒボコが苞の 宝物 但馬にあるを 今見んと ヒボコが曾孫 キヨヒコに 小男鹿さおしかやれば 奉る ハボソアシタカ ウカガ玉 イヅシ小刀 イヅシ矛 日鏡熊野 ヒモロゲズ イテアサの太刀 八つのうち イヅシ小刀 残し置き 袖に隠して 佩き出づる 皇これを 知ろさすて 神酒賜れば 飲む時に 肌より落ちて 露わるる 君見て曰く それなんぞ 捧ぐ宝の 類なり 君また曰く その宝 あに離ざる 類かと よって捧げて 納め置く 後に開けば これ失せぬ キヨヒコ召して もし行くや 答え申さく 先の暮れ 小太刀みづから 来たれども その明日の日に また失せぬ 君畏みて また問わず 自ずと到る 淡路島 神と祀りて 社建つ

タジマモリ(778)
〔垂仁〕九十穂如月初日 詔 かぐを求めに タジマモリ 常世に行けよ 我が思う クニトコタチの 御代の花 九十九穂サシヱ あ文初日 君罷る歳 百三十七 御子の裳入り 四十八夜 埴奉物し 師走十日 菅原伏見に 見送りの 手灯たひも輝く 神の御幸ぞ 明くる春 弥生に帰る タジマモリ 研ぎしく橘つ 二十四籠 橘の木四竿 株四竿 持ち来たる間に 君罷る 土産半ばを 若宮へ 半ばを君の 陵に 捧げ申さく これ得んと 遥かに行きし 常世とは 神の隠れの 及びなき ふりを馴染むの 十歳ふり あに思ひきや 凌ぎ得て さら帰るとは 皇の クシヒによりて 帰る今 すでに去ります 臣生きて 何かせんとて 追ひ罷る 諸も涙で 橘四本 菅原に植ゆ 遺しふみ 御子見たまいて 橘君が ハナタチバナは 彼が妻 オシヤマ遣りて 呼ばしむる 父モトヒコと 上り来る 御子喜びて モトヒコに 許し衣賜ひ 喪を務む ハナタチバナが 皐月末 夜半に生む子に 詔 昔の人の 緒を留む ヲトタチバナと 名を賜ひ 似たる姿の オシヤマに 嫁ぐ母子も 御恵み 深き縁の ためしなるかな

38 日代の代 熊襲討つあや

双子生む(789)
〔景行〕二穂弥生 キビツヒコが姫 立つ后 針間のイナヒ ヲイラツ姫 内侍の時に 去年卯月 孕みて生まず 二十一月 経て師走望 ウスハタに 餅花成して 双子生む 兄の名モチヒト ヲウス御子 弟の名ハナヒコ オウス御子 ともに勇みて 人なりは 身の丈一背 兄は弱く 弟は二十力

ウマシタケヰココロ(790)
三穂の春 如月初日 紀の国に 神祀らんと 占えば 行くはよからず 御幸止め オシマコとの子 ウマシタケ ヰココロ遣りて 祀らしむ 天日橿原に 九歳住む 紀のウチマロが ヤマトカゲ 娶りて生む子 タケウチぞ

オト姫とヤサカイリ姫(791)
四穂如月望 美濃に行く 臣ら申さく よき姫あり ヤサカタカヨリ 菊な桐 植えて楽しむ ココリ宮 かれこれ得んと 御幸して 美濃高北の タカヨリの ココリの宮に 仮りいます 生簀望めば 差し覗く オト姫留めて 君召しつ 姫思えらく 伊勢の道 通える法も 艶ならず 君に申さく 僕は 嫁ぎ好まず 御殿みあらかに 召すもよからず 姉が名を ヤサカイリ姫 姿よく 后の宮に 召さるとも 操ならんか 君許し 姉姫を召す

成務天皇とタケウチ(792)
根霜初日 纏向日代 新宮に 帰り入ります ヤサカ姫 なる美濃内侍 五穂根霜 十五日日の出に 生む子の名 ワカタリヒコぞ タカヨリは 日の前詣で ウチマロが 館で孫生む ヰココロが 諱を乞えば タカヨリが 諱タカヨシ 名はウチと タケウチマロぞ 雉飛べば タカヨリ上る ウチマロも 内宮に行き 寿ぎす 君喜びて 諱乞う ウチマロ捧ぐ ウチヒトは 嗣御子なり

六人大御子
皇の御子 男は五十五 女は二十六総べ 八十一なり ヲヲウスおよび ヤマトダケ ヰモキイリヒコ ヰモノ姫 ワカタラシヒコ トヨクワケ 六人大御子の 名を帯ぶる 余り七十五子 国県 分け治むその 末多し

美濃の姉妹(799)
十二穂初春 美濃の国 カンホネが姫の 姉妹トオコ 国の色あり ヲヲウスを 遣りて呼ばしむ ヲウス御子 美濃に到りて 姿見て 密かに召しつ 留まりて 返事かえことなさず 今年十一 丈は八咫なり 君咎め 都に入れず

周防佐波(799)
()文月(ふみづき) 熊襲背きて 貢ぎせず (をして)捧げて 御狩り乞ふ 葉月望より 御幸なる ()の五日到る 周防佐波 時に皇 ()を望み 逆息(ざがいき)立つは 恙かや

この三人遣りて形を見せしむる
(オホノ)タケモロ (キノ)ウナデ 物部(モノベ)ナツハナ この三人 遣りて形を 見せしむる

カンカシ姫
カンカシ姫は 人の(かみ) 御使ひ聞きて シヅ山の 榊を抜きて 上枝(かんつゑ)に 八握剣 八咫鏡 下勾玉や 白幡を (とも)()に掛けて 我が類 違わず天の 恵み得ん

友集む(799)
ただ損なうは ハナダレが みだり跨り 名を借りて 宇佐に屯し 鳴り響く またミミダレも 貪りて 民を掠むる ミケ川() またアサハギも 友集む タカハ川また ツチオリと ヰオリも隠れ 緑野の 川坂頼み 掠め取る みな(かなめ)()に 集まりて (おさ)と名乗るを 討ち給え 時にタケモロ 計らいて 赤衣袴 引き出物 引きてアサハギ 召し寄せて これに引かせて 諸来れば ふつく殺しつ 御幸して 豊の長狭に 仮都 陰月に至る 速見邑 長ハヤミツメ 御幸聞き 自ら迎え 申さくは ヅガ(イワ)()に 二土蜘蛛 名はアオクモと シラクモと ナオリネギノに 三土蜘蛛 ウチサルとヤタ クニマロと この五土蜘蛛 (ともがら)の 力強きを 集め置く あながち召さば (いくさ)せん ここに皇 進み得ず クタミの邑の 仮宮に 諮りて曰く 諸討たば 蜘蛛等恐れて 隠れんと 椿を採りて 槌となし 猛きを選み 槌以て 山を穿ちて 草を分け (いわ)()の蜘蛛を 討ち殺す イナバ川辺は チタとなる またウチサルを 討たんとて 椿市より ネギ山を 越す時仇が 横矢射る 天より繁く 進み得ず キワラに帰り 太占見 ヤタをネギノに 討ち破り ここにウチサル 降り乞ふ 許さず故に クニマロも 滝へ身を投げ 悉く 滅び治まる

住吉と直り神(中臣・物主)
その初め 柏尾の石 長さ()() 幅三咫厚さ 一咫五() 皇祈り 跳び上がる かれスミヨロシ 直り神 両羽の社 さらに建て これ祀らしむ 返詣で 根月に至る 仮宮は 日向高屋ぞ

熊襲アツカヤ(799)
師走五日 熊襲を諮り 詔 我聞く熊襲 兄アツカヤ 弟セカヤとて 人の守 諸を集めて タケルとす 矛先当たる 者あらず ささ人と数 多なれば 民の痛みぞ 矛枯らす 向けんとあれば 臣一人 進みて曰く 熊襲には フカヤとヘカヤ 二娘 きらきらしくも 勇めるを 重き引き手に 召し入れて 暇を窺ひ 虜にす 時に皇 良からんと 衣に欺く 二娘 召して御許に 恵みなす 姉のフカヤが 申さくは 君な憂ひそ 計らんと 兵連れて 屋に帰り 酒をあたたに 飲ましむる 父飲み()ひて 臥す時に 父が弓弦 切り置きて 父アツカヤを 殺さしむ 皇姉が シム断つを 憎み殺して ()()ヘカヤ その国造(くにづこ)と 叔父の子の トリイシカヤと 因ませて 筑紫向けんと 六歳まで 高屋の宮に おわします

ミハカセ姫
ミハカセ姫を 内様に トヨクニワケの 御皇子生む 母子留まり 国造くにづこ

日向高屋(804)
筑紫向けんと 六歳まで 高屋の宮に おわします 十七弥生十二 子湯(コユ)(ガタ)()()()に御幸 ()を望み 昔思して 宣ふは 御祖天君 高千穂の 峰に登りて 火の山の 朝日を辞み 妻向かひ 上下恵む 神となる … 功は カモワケツチの 神心 かくぞおほして 神祀り 都の空を 眺む御歌に はしきよし わきへのかたゆ 雲出立ち 雲はヤマトの 国のまほ また棚引くは 青垣の 山も籠れる 山背は 命のまそよ (けむ)()せば ただ御子思え くの山の 白橿が枝を ウスに挿せこのこ

岩瀬川(805)
十八弥生 都帰りの 御幸狩り 到る夷守 岩瀬川 遥かに望み 人群れを 弟夷守に 見せしむる 帰り申さく 諸県 主ら大御食 捧げんと イヅミ姫が屋に その集え

不知火
皐月初日に 船馳せて 行く八代へ 日の暮れて 着く岸知れず 火の光る 所へ差せとの 詔 岸に上がりて 何村と 問えば八代 豊村の 焚く火を問えば 主を得ず 人の火ならず 不知火の 国と名付くる

玉杵名邑
セ水無三日 高来県の 船渡し 玉杵名邑の 土蜘蛛の ツヅラを殺し

阿蘇
十六日には 到る阿蘇国 四方広く 家居見えねば 人ありや 君宣えば たちまちに 二神なりて アソツヒコ アソツ姫あり 君なんぞ 人なきやとは 君曰く 誰ぞ答えて 国神くにつかみ 社破れり 時に君 詔して 社建つ 神喜びて 守るゆえ 家居繁れり

八女
ア文四日 筑紫路後の 高田宮 大御木おほみけ倒れ 木の長さ 九百七十たけぞ 百踏みて 行き来に歌ふ 朝霜の 御木の竿橋 前つ君 いや渡らすも 御木の竿橋 君問えば をきなの曰く くぬぎなり 倒れぬ前は 朝日影 杵島根にあり 夕日影 阿蘇山覆ふ 神の御木みけ 国も御木とぞ 名づけます 八女ヤツメを越えて 前山マエヤマ淡岬アワミサキ見て 君曰く たたみ麗し 神ありや ミヌサルヲウミ 申さくは 八女姫神ヤツメヒメカミ 峰にあり

生葉
穂積(八月)に到る イクハ邑 御食勧む日に 膳夫かしわでは 御皿忘れる 長曰く 昔天御子 御狩りの日 ここに御食なし 膳夫が ウクハ忘れり 国言葉 御皿をウクハ ヰハもこれ かかるめでたき ためしなり

ヤマト姫譲位(807)
二十サミヱ 如月(きさらぎ)四日(よか)に ヰモノ姫 クスコ内御子 伊勢の神 祀る祝ひは 筑紫向け 姫今年十四 ヤマト姫 今年百八 喜びて 齢至れば 我足りぬ 我が八十物部 十二司 ヰモノに移し 仕えしむ クスコを神の 御杖代 竹の宮居に 慎みて 仕え侍る ヤマト姫 宇治(ウヂ)(ハタ)殿(ドノ)の 磯宮に ひらき静かに 日の神を 祀れば永く 倦まなくぞ

タケウチホツマ知る侍(812)
二十五穂文初 タケウチに ホツマ知る侍の 詔 北より津軽 日高見や 橘の館に 道を聞く モトヒコ曰く 国知るの 道はいにしえ 根国ネノクニの 多きの祀る 神の御食 … 身を知る業の 幾さわに 歳永らえて 万人の 道の標と あるふみを 代々に伝ふる タケウチは ついに永らふ 道となるかな 根心を明かし 帰りて

すべて蝦夷の国肥えて(814)
二十七如の 十三日申さく 日高見は 女男の子髪を 総角あげまきに 身を綾とりて 勇み立つ すべて蝦夷の 国肥えて 服わざれば 取るもよし

熊襲タケル(814-815)
熊襲背きて また侵す 神無月十三日 詔 オウス御子して 討たしむる オウス申さく よき射手を あらば連れんと 皆申す 美濃のオトヒコ 秀でたり 葛城ミヤト 遣わして 召せばオトヒコ イシウラの ヨコタテおよび タコヰナキ チチカイナキを 引き連れて 従ひ行けば コウス御子 師走に行きて 熊襲らが 国のさかしら 窺えば トリイシカヤが 川上に タケルの輩 群れ寄りて 安倉なせば コウス君 乙女姿の 御衣のうち 剣隠して 休みせし 乙女の見目に 交われば 携え入るる 花蓆 身を上げ酒の 戯れや 夜更けゑゑれば コウス君 肌の剣を 抜き持ちて タケルが胸を 刺し通す タケルが曰く 今しばし 剣留めよ 言ありと 待てば汝は 誰人ぞ 皇の子の コウスなり タケルまた言ふ 我はこれ 国の強者 諸人も 我には過ぎず 従えり 君の如くの 者あらず 奴が捧ぐ 名を召すや 君聞きませば 今よりは ヤマトタケとぞ 名乗らせと 言いつ終われば ヤマトダケ オトヒコ遣りて 朋輩を 皆討ち治め 筑紫より 船路を帰る 穴門吉備 渡荒ぶる 者殺し 難波ナミハ香椎端カシハの 者輩 皆殺し得て 二十八穂の 如月初日 纏向の 都に帰る

海と陸との道開く
ヤマトタケ 申す形は 皇の 御霊によりて クマソらを ひたに殺して ふつくむけ 西は事無く ただ吉備の 穴戸難波ナミハ香椎かしはたり 悪しき息吹き 道行くも 災い求む あぶれ者 海と陸との 道開く

39 ホツマ討ち 連歌つすうたあや

ホツマの蝦夷(827)
纏向の 日代の四十穂 せ水無月 ホツマ騒げば 酒折の タケヒ上りて 御狩乞う 君諸集め 宣わく ホツマの蝦夷 掠めると 誰人遣りて 向けなんや 諸人言わず ヤマトタケ 先には臣ら 西を討つ 東を討つは モチヒトぞ 時にオホウス 戦慄きて 野に隠るるを 呼び召して 君責め曰く いましあに 強いて遣らんや 恐るるの あまりと美濃を 守らしむ 時ヤマトダケ 雄叫びて 西向け間無く また東 いつか及ばん たとえ臣 労わるとても 向けざらん 時に皇 矛を持ち 我聞く蝦夷 旨凌ぎ 粗長もなく 村君ら 相侵しえる 山荒らし かたまし者や 道又ちまた神 中に蝦夷ら 女を混ぜて シム道欠けて 穴に住み 毛猪を食みて 毛衣着 恵み忘れて 仇をなし 弓もよく射る 立ち舞いも 類集めて かくれんぼ 野山を走る 技を得て 天なる道に 服わず

ヤマト姫にも暇乞い
神無月二日に 門出して 道を横切り 七日伊勢の 神に祈りて 磯の宮 ヤマト姫にも 暇乞い 君の仰せに アタ討ちに 罷るとあれば ヤマト姫 錦袋と 剣持ち 御皇子に曰く 天御孫 染めし火水の 御祓い 火水の障り 祓ふべし 昔出雲の 国開く ムラクモ剣 これなるぞ 慎み受けて 仇向けよ な怠りそと 授けます

先にタジマが
先にタジマが 遺しふみ 国染まざれば かぐの木を 得んと思えば タチバナの モトヒコが屋に 年経りて 馴染みて巡る 日高見と シマツの君に 会ひ知りて やや得て橘を 引かぬ間に 君神となる 散々悔み 今若宮に 奉る 君僕が モトヒコに 結ぶ雫の 源を 思してホツマ 知ろしめせ

語り合わせて
ここに皇 タケウチと 語り合わせて ホツマ国 橘モトヒコを 身に成して タチバナ姫と ホツミテシ サクラネマシを 先に遣り 軍下れば 日高見が 招くモトヒコ 頷かず

相模小野サガムノオノ
相模小野サガムノオノに 城構え テシとマシ等と ()り堅む 蝦夷の輩 攻め上る 裾野に出会う ヤマトダケ 蝦夷ら欺き 野の鹿が 息切り立ちて 踏みしだく しもと結いして 道を知る 望み巡りて 狩りたまえ 君はげにとや 行き求む 仇野を焼きて 欺けば 知りて鑽火きりひの 向かひ火に 火水の祓ひ 三度宣る 東風(こち)吹き変わり 西煙 仇に覆せば 草を薙ぐ 燃え草飛びて アタ(いくさ) 焼き滅ぼせば (ヤケ)津野(ヅノ)や 剣の名をも 草薙と 足柄山に 攻め到る 相模小野の 城攻めを 堅く守れば 仇輩 四方に薪を 積み上げて 七十日日照りに 火攻めなす 乾き燃ゆれば ヤマトダケ 矢倉の岳に 登り見て 吉備タケヒコを 大磯へ 大伴タケヒ 大山の 北に回りて 城に入れ 南北に分かちて ヤマトダケ 髪梳き清め 白樫の 太刀を原見の 御柱と 祈る火水の 清祓ひ タツタの神の 現れて コノシロ池の 竜の雨 降り火を消せば 宮軍 勇みて仇を 半ば討つ みな逃げ散れば 鬨を上げ 迎ひ入る時 オト姫は 君の手を取り 安んぜて 僕はじめ 各々が まさに焼けんを 祈りまし 今幸ひに 拝むとて 喜び涙 袖浸す ここにモトヒコ 諸に触れ 服ろはざれば 殺す故 大御宝が 御狩り乞ふ 事始めとて 師走八日 橘籠立てて 印とす

オトタチバナ姫崩御
時ヤマトダケ 大磯を 上総へ渡す 軍船 漂ふ風を 鎮めんと オトタチバナは 舳に登り 天地祈り 我が君の 稜威いつをヤマトに 立てんとす 我君のため 竜となり 船守らんと 海に入る 諸驚きて 求むれど ついに得ざれば 波凪ぎて 御船着きけり 

答えて伊勢と
ヤマトダケ 上総に入れば 榊枝に 鏡を掛けて 向かひます 香取トキヒコ ヒデヒコと 息栖オトヒコ 予て待つ 大鹿島より 御饗なす 葦浦越えて 勿来浜 仮宮にす 日高見の ミチノク島津 ミチヒコと 国造五人 県主 百七十四人 万輩 タケの港に 拒む時 タケヒを遣りて これを召す シマツの守は あらかじめ 巌さに畏れ 弓矢棄て 御前に伏して 服ひぬ タケヒまた行く 日高見の ミチノクに告ぐ 小男鹿さをしか人 ミチノク門に 出で迎え ミチノク曰く 今汝 人の皇 君として 仕える汝 衰えり 今来て国を 奪わんや タケヒの曰く 神の御子 汝を召せど 服わず 故に討つなり 答え言う これ何のこと 何の言い それ我が国は 大御祖 タカミムスビの この国を 開きて七代 これを継ぐ 日の神ここに 道学ぶ 故日高見ぞ 天の皇子 チチ姫と生む 皇子二人 兄は飛鳥宮 弟は原見 その時国を 賜りて 十四のはつこの 我までは よその治受けず それの君 飛鳥を討ちて 国を盗る 上に違えり 故慣れず 今また来たり 盗らんとす これも神かや 皇君よ タケヒ微笑み これ汝 井中に住んで 沢を見ず 言良きに似て 当たらずぞ しかと聞くべし これ説かん 昔飛鳥の ナガスネが ふみ盗めども 飛鳥君 正さぬ故に 乗り下せ ホツマ道平む 天も磐船 世に歌ふ シホツ翁が これ行きて 向けざらんやと 奨む故 ヤマト正せば 大御神 鹿島の守に 詔 行きて討つべし その答え 我行かずとも 国向けの 剣下して タカクラに これ捧げしむ タケヒトは 君たるいとの ある故に 天より続く 神の皇子 代々に天照る 汝代々 君なく暦 いづれぞや 答えて伊勢と また曰く 天照らす神 暦成し そろ植えさせて 糧増やし 身を保たしむ 百七十九 万三千続く この世見て 今日輪内に おわします 御孫の代々の 民治む 日に擬えて 天君ぞ 汝は代々に 実り受け 命つなぎて 未だその 君に返事かえこと 申さぬは その罪積り いくらぞや 抜け道ありや 我が君は 神ならずやと この時に ミチノク及び 皆伏して 服ひ来れば ヤマトダケ ミチノク許し 国の守 百県の初穂 捧げしむ 津軽蝦夷は ミチヒコに 七十県初穂 捧げしむ 南は常陸 上総安房 御笠カシマに 賜りて カシマヒデヒコ トキヒコも オトヒコ三人 御衣賜う 国造五人 神の道 強いて申せば 召し連れて 到る新治へ … 筑波に上り 君臣も 西南経て到る 坂下の 宮に日暮れて … ヤマトダケ 火灯し褒めて タケタ村 ほかはハナフリ タケヒをば 靫侍ゆきへをかねて 甲斐駿河 二国守と 殊を褒む

玉川淡海・武蔵・氷川大宮(828)
去年より続き 天晴れて 一月二十八日 御幸振り(御雪降り) 君橇に召し 行き到る 相模の館に 入りませば 野に片鐙 トラガシハ 拾い考え 鐙挿し 今奉る 玉飾り 褒めて賜る 村の名も 玉川淡海あふみ 武蔵みさし国 相模の国と モトヒコに 名づけ賜る 国津守 マチカテチカの 臣二人 ヲトタチバナの 櫛と帯 得れば嘆きて 姫のため ツカリアヒキの 祀りなす これソサノヲの 大蛇おろちをば ツカリヤスカタ 神となし ハヤスヒ姫も アシナツチ 七姫祀る ためし以て 形見をここに 塚となし 名も吾妻守 大磯に 社を建てて 神祀り ここに留まる ハナヒコは 我が先御霊 知ろ示し 河合の野に 大宮を 建てて祀らす 氷川守 軍器は 秩父山 如月八日に 国巡り 服らふ印 橘籠を 屋棟に捧げ 事納め ホツマの代々の 慣わせや 碓氷の坂に ヤマトダケ 別れし姫を 思ひつつ 東南を望みて 思ひやり 形見の歌見 取り出だし見て さねさねし 相模の小野に 燃ゆる火の 火中に立ちて 訪ひし君はも これ三度 吾妻あわやと 嘆きます 吾妻のもとや 追分に 吉備タケヒコは 越路行く 国さかしらを 見せしむる タケヒは先に 相模より 蝦夷の土産 持ち上り 帝に捧げ ことごとく 服らふ形 申さしむ

信濃木曾路
一人御幸の ヤマトダケ 信濃木曾路は 山高く 谷かすかにて 九十九折り 懸橋伝ひ 馬行かず 雲分け歩み 飢え疲れ 峰の御饗に なる白鹿しらか 前に息吐き 苦しむる 君は知ろして 蒜一つ 弾けば眼 打ち殺す なお雲覆ひ 道立つを 火水の祓い 三度宣る シナトの風に 吹き払ふ 神の白犬 導きて 美濃に出ずれば タケヒコも 越より帰り ここに会う 先に木曾路の おえ伏すも 祓い免かる 鹿の路は 蒜を噛みぬり サカ息に 当たらじものを 語り給ひき 

40 熱田神 世をいなあや

酒折宮をミヤズ姫のもとに写す(828)
纏向の 日代の暦 (景行)四十一春 ヤマトタケ君 木曾路より 到る尾張の タケトメが 孫の連の 家に入る 妻ミヤズ姫 都より 送りて父が 家に待つ 今君ここに 月を越す 君宣わく 酒折の 宮は昔の 原の宮 なお永らえり 我が願ひ 写して姫と 楽しまん 連申さく 臣行きて 絵描き写さん 君ゑゑす 連下りて 酒折の 宮を詳しく 絵に写し 返事かえことすれば

伊吹神
ヤマトダケ 荒ぶる神の あるを聞き 剣解き置き 軽んじて 到る神道に 幣無く 行き過ぐ道に イフキ神 おろちなして 横たわる 神とは知らず ヤマトタケ 蛇に曰く これ汝 あれかた神の 使ひなり あに求むるに 足らんやと 踏み越え行けば イフキ神 氷柱つらら降らして を奪う 強いて凌ぎて 押し歩み 僅か出で行く 心酔ひ 燃ゆる如くに 熱ければ 泉に冷ます サメガ井や 御足痛むを やや悟り 尾張に帰り ミヤヅ姫の 家に入らずて 伊勢の道 尾津の一松 これ昔 ホツマ下りの 御饗時 解き置く剣 松の根に 置き忘れしが 永らえり かれに上げ歌 負忘れど ただに迎える 一つ松 あわれ一松 人にせば 衣着せましを 太刀佩けましを いささかに 慰み行けど 足痛み 三重に曲がれば 三重村ぞ 杖突坂も やや越えて ノホノに痛み 重ければ 虜五人を 宇治に遣り 鹿島尊の 添え人ぞ

ヤマトタケ崩御
キビタケヒコは 都路へ 上せ申さく そのふみに ハナヒコ申す 臣昔 御言を受けて ホツマ討ち 天の恵みと 稜威いつにより 荒ぶる神も 服えば ふつく治めて 今ここに 帰れば命 ゆふつく日 乞ひ願わくは いつの日か 御言返さん 野に臥して 誰と語らん 惜しむらく 見えぬことよ 天の法かな ふみ留めて 君曰く我 東西を向け 事なれば身を 滅ぼせる 彼ら休ます 日もなきと ナツカハギして ハナフリを みな分け賜ひ 歌詠めば 熱田の神と 早なると 湯浴み衣を替え 南に向かひ 人身辞むの 歌はこれぞと 熱田宣 辞む時 東西のシカチと 父母に 仕え満てねど サコクシロ 神の八手より 道受けて 生まれ楽しむ かえさにも 誘ひちどる 懸橋を 登り霞の 楽しみを 雲居に待つと 人に答えん 百歌ひ ながら目を閉ぢ 神となる なすことなくて 営みす 歌は尾張へ 吉備上り ふみ捧ぐれば 皇は 気も安からず 味あらず ひめもす嘆き 宣わく 昔熊襲が 背きしも まだ総角あげまきに 向け得たり 右左まてに侍りて 助けしに ホツマを討たす 人なきを 忍びて仇に 入らしめば 明け暮れ帰る 日を待つに 此はそも何の 災ひぞ 縁もなくて 天から召す 誰と御業を 治めんや 諸に宣して 神送り 時に亡骸おもむろ なる斎鳥 出れば諸と 御陵の 御棺を見れば 冠と サクと御衣裳と 留まりて 空しきからの 白斎鳥 追ひ尋ぬれば ヤマト国 琴弾原に 尾羽四枝 置きて河内の 古市に また四羽落つる そこここに なす御陵の 白鳥も つひに雲居に 飛び上がる 尾羽はあたかも 神の代の 世佩きしぞこれ 東西もみな 治せば罷れる 天法ぞ

ヤマトタケの来歴
この君日代 皇の 二の御子母は イナヒ姫 師走の望に 餅つきて 餅花なして 双子生む ヲウスモチヒト 弟はコウス ハナヒコもこれ 天の名ぞ 人成る後に 熊襲また 背けばコウス 一人行き 乙女姿と なり入りて 肌の剣で 胸を刺す タケルしばしと 留め言ふ 汝は誰ぞ 我はこれ いざ皇の 子のコウス タケルが曰く ヤマトには 我に長けたは 御子ばかり かれ御名つけん 聞きますや 許せば捧ぐ ヤマトダケ 御子名を替えて 討ち治む 天の誉や ヤマトタケ … オシヤマが オトタチバナを 典侍妻に ワカタケヒコと … 尾張が姫 ミヤヅ姫また 後の妻 竹田と佐伯 二人生む 十四男一女あり 先の妻 みな枯れ今は ミヤヅ姫 一人会わんと 原見より 心細くも 懸橋を 凌ぎ上れば ミヤヅ姫 寝巻のままに 出で迎ふ 姫の裳裾に 月ヲケの 染みたるを見て ヤマトタケ 短歌して 久方の 天の香具山 遠賀茂より さ渡り来る日 細嫋ほそたはや かひなを巻かん とはすれど さねんとあれは 思えども 汝が着ける裾の 月立ちにけり 姫返し歌 高光る 天の日の御子 やすみせし 我が大君の 新玉の 年が来ふれば うへなうへな 君待ちかたに 我が着ける おすひの裾に 月立たなんよ ヤマトタケ 叔母より賜ふ ムラクモを 姫が屋に置き 伊吹山 帰さの伊勢路 いたわれば 都思ひて(/館を歌ひ) はしきやし わきべの方ゆ 雲居立ち来も … ノホノにて 神なる時に 遺し歌 ミヤヅ姫へと 愛知田の 乙女が床に 我が置きし 伊勢の剣の 断ち分かるやわ ミヤヅ姫 悶え絶え入り やや生けり 父は原見の 絵を写し 都に上り 若宮の 願ひのままを 申し上げ 愛知田に建つ 宮成りて わたまし乞えば 詔 タタネコ斎ふ 差御使人 連代殿 御子たちを 御幸の供え

ヤマトタケ葬儀(831)
厳かに 琴弾原の 陵に 落ちし尾羽四つ 古市の 尾羽四つともに 持ち来たり ノホノの冠 さく御衣裳 御霊笥に入れ 白神輿 日代(景行)四十四穂 弥生十一 たそがれよりぞ 神輿行き ノホノを東 諸司 かたむ松明 先駆りは 榊に二十人 副代人 サルタヒコ神 御顔あて 代人八人は 八元幡 大代殿は 冠御衣 御柱持ちて 臣八人 オシヤマ宿禰 冠御衣 世はきし持ちて 臣六人 キビタケヒコも 同じ前 オオタンヤワケ 冠御衣 剣捧げて 臣十人 … 皆送り行く 夜中まで かく六夜到り 原宮の 大間の殿に 神輿ます 世にす如く ミヤズ姫 キリヒの粥を 盛る平瓮 戴き先に 入り待ちて 御前に供え 申さくは この御食むかし 伊吹より 帰さに捧ぐ 昼飯を 自ら炊ぎ 待ちおれど 寄らで行きます 散々悔み 今また来ます 君の神 むべ受けたまえ ありつ代の 愛知田に待つ 君が昼飯

佐伯部
伊勢に添え入る 蝦夷五人 敬いあらず ヤマト姫 咎め帝へ 勧め遣る 三諸に置けば ほどもなく 木を伐り民を 妨げる 君宣わく 蝦夷らは 人心無く 置き難し ままに分け置く 播磨安芸 阿波伊予讃岐 佐伯部ぞ

成務と武内の立太子(833)
四十六穂の春 … 葉月四日 ワカタリヒコを 嗣御子 武内宿禰 棟の臣 御子とタケウチ 同ひ年

イラツ姫崩御(839)
五十二穂皐月 末八日に 后イラツ姫 神となる 神送り法は 熱田法 オホタンヤワケ 御食炊ぎ … ヌノオシ姫に 戴かせ 添ふタンヤワケ 先駆りに 次は姫御子 … 吉備の家臣 持ち並ぶ 奉物雲に 懸橋と 霞に千鳥 吉備播磨 兄弟のタケヒコ 世佩きしを 左右に並びて 御柱は 内宮の臣 神輿前 御子は身を据え 御使人は 写し日の臣 輿に乗る 諸送りけり 天文七日 ヤサカイリ姫 内つ宮

熱田神(840)
五十三穂積(八月) 詔 返り思えば やむ日なし コウスが向けし 国巡り なさんと伊勢に 御幸なり 尾張津島に 到る時 連迎えば 子の如く 共に大間の 宮に入り 自ら作る 幣立て 曰く親子の ゆくりなふ 別れ会わねば 忘られず 自ら来たり 幣すと やや久しくぞ 悼ましむ その夜の夢に 津島杜 白斎鳥なる ヤマトタケ 曰く大神 ソサノヲに 曰く如何ぞ 国望む 天法なせば 国の守 教えの歌に 天が下 やわして巡る 日月こそ 晴れて明るき 民の父母 これ解けず 罪に堕つるを イフキ守 引きて守とす ニニキネは この心以て ホツマ得て 天君となる 羨みて 仮の親子ぞ 御言受け 東西向け帰る カミシツが まみえてほそち 熱さす 親の恵み 倦まざるや 折り数え歌 我が光る はらみつ錦 熱田神 元つしま衣に 折れるか氷川 三度述べ しつの姿に 雲隠れ 君覚め曰く 神の告げ 我は賤しき 氷川神 元に返ると 恵み凝る 迷いを諭す 示しなり 昔曰くは 人は神 神は人なり 名も誉 道立つ法の 神は人 人素直にて ホツマ行く まこと神なり 告げにより 名も熱田神 ミヤス姫 いつきに比べ 神主も 宮司並み

相模へ
東路へ 行けば相模に 御饗成す マシテシ拝み 泣き曰く 姫滅ぼして 見え得ず 君も涙に トラガシハ 榊御姿 奉る 君見たまえば ヤマトタケ 生ける姿に 会ふ如く 一度会いて よく似たる かれハメクロと その里を 名づけ賜る 神姿 大山峰に 社成す

上総へ(蛤)
御船上総へ アホの浜 … あれはうむきと … 膳伴部と 名を賜ふ オオヒコの孫 イワカなり

伊勢から日代の宮(840-841)
師走に上り 伊勢の国 イロトの宮に おわします 五十四穂長月 三十日には 日代の宮に 帰りますかな この時に 三輪のタタネコ 御代の書 編みて神代の ホツマ路と 四十文成して