祭祀に関する隠語

隠語一覧


神風

神風かんかぜは大王の再婚を意味する隠語。用例は四つ。

伊勢の神風

末を思ひて 睦まじく 業を勤むる 伊勢の道かな この道を 学ぶところは 神風かんかぜの 伊勢の国なり(13)
これ神風かんかぜの 伊勢の宮 くさは祀る 源と(36)

アマテルとセオリツ姫の再婚。
ニニキネに連なる天皇家の系譜は、セオリツ姫との再婚がなければ存在しなかった。

代々の神風

イの折れを サルタが取りて 神楽獅子 よこまを晴らす 代々の神風かんかぜフトマニ26

サルタヒコとウズメの再婚。
イフキトヌシ(イ)の婚約者だったウズメをサルタヒコが奪う形になったが、結果として海洋王タケミカツチとフツヌシを排除できた。
これを「代々の」神風とするのは、オオナムチ(6代女王タケコ)、アマテル(6代女王セオリツ姫)、アマノコヤネ(8代女王タカ姫)の女王との結婚がいずれも再婚だったためだと考える。

※ウズメ(7代女王候補)と婚約していたオシホミミも、タクハタチチ姫とすでに結婚していたため、もし結婚していれば再婚であった。

果ての神風

シホツツが 目無堅網 張るべらや 満ち干の珠は ハテの神風かんかぜ (25)

タカヒコネとアメミチ姫の再婚。
タカヒコネとオクラ姫の間には男子がなかったので、ホノアカリのもとから追放されたアメミチ姫と再婚した。
満ち干の珠(スセリ姫とミチツル姫)は、二人の子と孫である。

鴨の神風

人草を ワケイカツチの 守る故 御代は治まる 鴨の神風かんかぜ(37)

ニニキネとトヨタマ姫の再婚。
ニニキネはアシツ姫(コノハナサクヤ姫)との間にホオテミをもうけていたが、ホオテミの婚約者トヨタマ姫と再婚した。
ニニキネとトヨタマ姫の子イナイイは追放されたが、孫ミケイリはその後大王になり、その系譜はタギシミミによって二女王連合並立制の春日として継承されることになった。


ハタタ神

直前の政治的判断の是非を問うような出来事。「祟り神」

フツヌシ

  1. イフキトヌシの娘セオリツ姫(ムカツ姫・16穂=数え8歳半)を女王候補とし、住吉カナサキの娘ハヤアキツ姫とアマテルの子アマツヒコネを大王に擁立しようとして西山陰の向国に進出した。≫「ハルナハハミチ(10)」
  2. ココリ姫の忠告を無視してアマツヒコネ一行が黄波戸峠を越えてさらに東に向かい、安濃まで到ったところで宗像フツヌシと衝突した。≫「イソラミチ(10)」 ≫古事記「黄泉国神話
  3. かつて住吉カナサキによって追放されたことがある宗像のフツヌシが山陰側についた。≫「アメヱノミチ(10)」
  4. 山陰側と宗像は女王擁立を断念させるだけでなく、カナサキと孫アマツヒコネをそれぞれ対馬と壱岐に追放した。≫「オノコロと呪う・ハタタ神鳴り」 ≫古事記「大国主神話・因幡の白兎説話

ここではハタタ神は宗像が山陰側についたことであると考える。オノコロの文に「ハタタ神鳴り 止まざれば ホオコホさわぞ」とあり、ホオコホは山陰(矛)のことであるから、ハタタ神は宗像の恨みということになろう。

タケミカツチ

  1. 住吉カナサキの孫タケミカツチがアメワカヒコを暗殺した時、九州王権は海洋王を排除し、アメワカヒコの弟タカヒコネを大王に擁立した。
  2. その直後に皆既日食が起こり、それがタケミカツチへの処遇の誤りを糾すものと捉えられた。
  3. タカキネの判断により、タカヒコネの王位が取り消され、タケミカツチが大王に即位した。

ここではハタタ神は皆既日食であり、直前のタケミカツチの追放とタカヒコネの大王即位が誤った政治的判断であったことを示す天変地異と捉えられたものと考えられる。

ホツマツタヱはタカキネが投げ返した矢を「咎む返し矢」とするが、古事記は「もし汚き心があればアメワカヒコに当たるだろう」と改変する。天変地異がタカヒコネの運命を変えたことを示しているものとみる。なお、古事記はアメワカヒコの死に泣く姫を「下照姫」と書き換える。それはここで失脚したアメワカヒコが本当はタカヒコネであることを伝えるための暗号である。


ヤマサ神

「天岩戸」から「国譲り」にかけて誰がどのような役割を果たしたかを伝えるための暗号

  1. ウツロイ:タカヒコネ
  2. シナトベ:イフキトヌシ
  3. カグツチ;フツヌシ
  4. ミツハメ:タカ姫
  5. ハニヤス:タケミカツチ
  6. オオトシ:オオトシ
  7. スヘヤマスミ:サルタヒコ
  8. タツタメ:ウズメ

1. ウツロイ:タカヒコネ

ウツロイは二荒裾の宇都宮(長崎県諫早市宇都)にいたタカヒコネのこと。
ウツロは大村湾のことであると考える(諫早は大村湾への入口にあたる)。

2. シナトベ:イフキトヌシ

ムラクモに対してシナトを招き吹き払う。
日田玖珠にいたシラヒト・コクミ・モチコを討伐したイフキトヌシ。
シナは火山のこと。シナトは火山の麓、シナトベで火山の麓の辺り、という意味。
玖珠盆地にいたイフキトヌシの事績と一致する。
イフキトも、イフキが火山で、トはその入口の意味である。

3. カグツチ:フツヌシ

火の神。ソサノヲ(火山)と手を組んで台頭した。
別名がカグヤマツミであるフツヌシ。

4. ミツハメ:ウケステメ

神のタミメに矢が立たず、カグツチ(フツヌシ)が火花を吹いた時にミツハメを招く。
タミメは民の姫の意味で、タケミカツチのヒメとその娘アメミチ姫のこと。
アマノコヤネ渡来時の女王候補は、セオリツ姫に女子がなかったため擁立されたオオトシの娘ウズメ、オクラ姫の娘アシツ姫、そしてヒメの娘アメミチ姫であったが、アメミチ姫には女王位継承権が認められなかった(矢が立たず)。
代わりに海洋王連合の女王に擁立されたのは、サルタヒコの娘ウケステメであった。
なお、アマノコヤネは、タカヒコネの娘アシツ姫を傍系という理由で女王に指名せず、嫡系のアメワカヒコと国神の娘であるスガタ姫を女王に指名した。ここには、男王についても嫡系か傍系かよりも女王の子であるかどうかを重視する在来九州王権との見解の相違があり、このことがホノアカリの離縁問題の温床となったと考える。

5. ハニヤス:タケミカツチ

宗像フツヌシの台頭で(カグツチに焼かれて)アマテルが廃位に追い込まれた(焼かれて終わる)時に住吉タケミカツチが台頭した(ハニヤスが生まれた)。
宗像と住吉は対立していたが、最終的には連合を組むことになり、タケミカツチの娘ヒメがフツヌシの子タクリと結婚し、アメミチ姫を生んだ(ハニヤスはカグツチとの間にワカムスビを生んだ)。
だが、タクリとヒメには男子が生まれなかった(竜を生もうとオコロを生んだが竜にならなかった)。
 ⇒ワカムスビ=オコロ=タクリの子 ≫オコロ(原文)
兄オコロ=タクリはタケミカツチの鹿島にいて、弟オコロ(アメミチ姫の弟?)は布津にいた。

6. オオトシ:オオトシ

水の神タツタメ(ウズメ)の父。オオトシの隠語は「水」であり、おそらく渡来王であり海洋王である。

7. スヘヤマスミ:サルタヒコ

フトマニ104:妻との間に操が立たない時には、スヘヤマスミを祀れと記される。
オキツヒコ(オオトシの子):妻との間で操が立たない事態になっている。≫暗号「竈神」 ≫原文
オオヤマクイ:古事記でオオヤマクイが「山末之大主神やますゑのおほぬしのかみ」という別名を与えられている。ただし、これはホツマツタヱにおいてサルタヒコとオオトシが融合されていることを知らせる暗号とみる。
サルタヒコはオオトシの娘ウズメの夫であり、「オオトシの子」ともいえる。

8. タツタメ:ウズメ

炎(カグツチ)に対して水の神タツタ姫を招きこれを消す。
アメワカヒコ暗殺後、在来海洋王を排除した時に擁立されたのがオオトシ(水)の娘ウズメ(水の神)。
ウズメはサルタヒコと結婚し、新海洋王の妻となった。